道真は、学問へのスタンスの”甘さ”を痛感する ー 灰原薬「応天の門 8」(バンチコミックス)

2019年7月29日月曜日

応天の門

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 都で起きる様々な怪異の謎を解いたり、打倒・藤原の旗手・伴善雄の生命を救ったり、さらには、藤原北家の一員・藤原良相の娘の入内を助けたり、と本人が望まなくても、その鬼才ぶりがだんだんと世に出てきている道真。

 今巻は、そんな道真の鼻をへし折るように、彼の学問に対するスタンスや世の中への処し方が揺さぶられ始める筋立てである。


【構成と注目ポイント】


構成は


第四十話 都で流行りたりける暦の事 一

第四十一話 都で流行りたりける暦の事 二

第四十二話 大学寮にて騒ぎが起こる事 一 

第四十三話 大学寮にて騒ぎが起こる事 二

第四十四話 大学寮にて騒ぎが起こる事 三

第四十五話 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事 一

番外編 白梅、菅原門前にて仔犬を拾う事


となっていて、第四十話・第四十一話の「都で流行りたりける暦の事」は、都で「暦」が大流行する陰で巻き起こる、連続窃盗事件の謎を解く話。


この「暦」というのは、単なるカレンダーというものではなく、「こんなことをすると運気があがる」といったことが日にちごとに書いてある、平安版「星占い」のようなものですね。


この連続窃盗の被害者が同じところから「暦」を買っていて、そのアドバイスに従って外出させたりすることで、盗みをしやすくさせていた、という高等なワザである。


もちろん、暦自体はそんなにいい加減なものではなく、陰陽寮の元下級役人が関わっていたのだが、彼の犯行の動機についての

  才のある者が皆、日の目をみるとは限らん

  星の瞬きや天の動きも人の力は及ばぬもの

  才とは機に恵まれたもの、そしてそれを活かすことができたもの

といった陰陽頭の発言や

  俺は、俺の才を食うために使っただけだ

といった犯人の発言に、道真の学問に対するスタンスがグラグラし始めます。


第四十二話から第四十四話の「大学寮にて騒ぎが起こる事」は、彼の学問観をさらにグラグラ揺さぶる話。

 前話までで、「お前はいいなあ。なんでも出来るし、何にでもなれるんだよな。明日食い詰める心配がないからな」と連続窃盗犯に言われ、道真は、得業生の大学寮内の模擬テストを受けることを志願する。これは、彼のぐらつき出した学問へのスタンス確認のためなのだが、同じ模試を、苦学して通っている年上の文章生・安野有兼と一緒に受けることになるあたりから、道真に不満を抱くメンバーが安兼に接近しはじめ、何やら不穏な気配と漂っていく。

 そして、試験当日、安兼の不可解な動きに、道真が気づき・・・、といった展開。


 試験の結果は、二人とも落第なのだが、道真の学問に対する「置きにいく」考えがここで大きく揺らいで、「では、学問とは誰のためにあるのか」と、部屋に閉じこもって悶々と悩むこととなっていきます。


ここらは第四十五話の「菅原道真、遊行する比丘尼と会う事」で、色っぽい妓女をしながら、実は「比丘尼」らしい人物と出会うことで、再び次のレベルアップの段階にきているようですね。


【レビュアーから一言】


前巻といい、今巻といい、元「玉虫の姫」の侍女で、今は菅家のし書庫番をしている。漢学娘「白梅」がなんともいい味を出してきてます。なにかというと「キョドる」姿が可愛いですね。

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