古代ローマ時代の政治家で、天文、塵、動植物、鉱物、地理などなど当時の世界の情報を集めた「博物誌」をまとめた「プリニウス」とローマに放火して焼き尽くし、「暗君」の見本のように扱われている「ネロ」をメインキャストにした、古代ローマの「叙事詩的」物語である「プリニウス」シリーズの第9巻(バンチコミックス)。
今巻では、ローマを脱出し、ネロから逃れて旅を続けていたプリニウス一行がグラエキアの地でネロと再会するあたりや、その前後の、ローマのネロ暗殺未遂事件と当時のローマの英雄・コルブロ将軍の処刑といったところが描かれる。
【構成と注目ポイント】
構成は
57.シトラス
58.コルブリ
59.コリントス
60.アポロン
61.ギムナジウム
62.イルカ
63.ティルス
となっていて、前巻でグラエキアに着いたプリニウスを待っていたのは、ネロからの召喚状です。ネロがオリンピアの大祭に出席するので、そこへ「来い」というものですね。はじめは、この命令を従者のフェリクスが熱病に罹ったふりをして逃れようとするのですが、官吏によって
その男に近寄るな
伝染病を発症しているぞ
と、洞窟の中に隔離されてしまいます。ここで、古の太陽神の彫刻をみつけたりといった博物学的な収穫はあるのですが、いつまでも逃げ回れないと観念したプリニウス一行はネロの命令を受け入れることにします。
一方、アルメニア国王から太陽神の盾を贈られて悦に入るネロなのですが、 その陰で、ネロを廃して、パルティアの戦で戦功をたてたコルブロ将軍を皇帝にしようという陰謀が淫行しています。どうやら、貴族に陰謀の罪を着せて、没収した財産を使って祭りを開いていることや、ネロの側近・ティゲリヌスへの反感が積もり積もっているようですね。
ただ、この陰謀事件を自勢力の拡大に逆利用しようとするのが、ネロの側近・ティゲリヌスの悪くどいところで、民衆やローマ貴族に人気の高いコルブロを、ネロの手で処刑させ、民衆を怒りを彼に向けようという魂胆ですね。この根底には、彼自身がいずれは皇帝に、という思惑があるように思います。
そして、コリントスに就いたところでネロは、この陰謀の報告を受けるのですが、ティゲリヌスの企みをしっかり見抜くあたりは、まだ彼も遊蕩ボケしていないようです。
しかし、ティゲリヌスの差配したコルブトの部下の発言などで、コルブト将軍を処刑せざるをえなくなります。このへんは、完全に「傀儡」皇帝となっている証拠でもあるのですが、ネロと再会したプリニウスが目撃したように、ケシ(アヘン)中毒にされているせいかもしれません。ネロが暴君化した原因に「鉛中毒」になったからという説もあるので、あながちこの「アヘン中毒」も筆者のフィクションとも言えないような気がします。この後、ローマの民衆の間でもネロの評判がどんどん落ちている様子が描かれているのが、これから支持を失い、自殺に追い込まれるネロの運命を暗示しているようですね。
ネロと面会した後、プリニウス一行は、グラエキアを離れフェニキアに向かいます。旅の途中で一緒になった子供を家族のもとへ送り届けるためですね。ところがフェニキアに着くと「家族はきっと、ぼくのこと忘れてるよ」と「家族に会いたくない」と言い始めます。その真相については、原書のほうで確認してくださいね。
【レビュアーからひと言】
ローマのプリニウスの家のほうでは、ネロとエウレクスが愛したブリタニアの女奴隷のプラウティナが偶然雇い入れられます。オクティアの海岸で野垂れ死にしそうになっているところを奴隷商人に拾われて売りに出されていた、という設定ですね。
彼女はその当時妊娠していて、プルニスス家で子供を産み落とすのですが、この子がどういう役回りを果たしていくのか、は次巻以降の展開ですね。
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