吉原の遊女「あお」が、遊女の怨霊を浄化するー安達智「あおのたつき 2・3」(マンガボックス)

2020年8月9日日曜日

あおのたつき

t f B! P L

 江戸を代表する遊郭「新吉原」の羅生門河岸の角にある「九郎助稲荷」の奥の浮世と冥土の境にある「鎮守の社」を舞台に、、売れっ子の時に死んだ花魁の霊「あお」と宮司の「楽丸」と社の主神・薄神の三人が、思いを遺して死んだ遊女の霊を浄化させていく、少しコミカルなオカルト時代劇本『安達智「あおのたつき」(マンガボックス)』の第2弾と第3弾です。


【構成と注目ポイント】


第2巻の構成は


其ノ伍 指人形②

其ノ陸 指人形③

其ノ漆 六角箱①

其ノ捌 六角箱②

其ノ玖 廓歩き①


となっていて第5話と第6話は前巻からの続き。鎮守の杜の社へ逃げ込んできた、孔雀の打ち掛けを被った悪霊を追ってきた男によって、「あお」がいすくめられてしまいます。彼は「恐丸」という名で、榎本稲荷の奥の鎮守社の宮司です。榎本稲荷というのは「新吉原」にあった5つの稲荷神社の一つで、「鎮守の杜」の親社である「九郎助稲荷」の対角線上にある神社ですね。


彼は、悪霊の浄化して消してしまう役目らしく、追ってきた悪霊と一緒に第1巻の第3話で悪霊となりかけた「あお」の浄化もしてしまうつもりですね。

そして、悪霊を救うため「あお」は自分の顔を掻きむしろうとする悪霊に対し

顔を傷つけるんじゃないよ

商売道具だろ

と彼女を正気づかせ、話を聞き出すことに成功します。

彼女はもとは江戸町孔雀屋の「七里」という遊女で店のNo.1である「お職」を張る売れっ娘です。そのため、彼女は遊郭の楼主のいいつけを従順に守って仕事をしていたのですが、彼女を妬む「綾乃井」という同輩に、孔雀屋のNo.1は自分だと自慢し、逆上した綾乃井によって突き飛ばされ2階から落下してしまいます。怪我をした「七里」に対して、楼主の仕打は・・・、という展開です。

「遊郭」の楼主のことを「忘八」というらしいですが、楼主の真の姿を知ってさっぱりした七里の姿が清々しいですね。


第7話と第8話は、幕府のお試し御用をしていた有名な「首斬り朝」に関する話です。本書では「山田浅右衛門吉睦」とあるので、五代目の「首斬り朝」ですね。この人は文政6年(1823年)に亡くなっているので、このシリーズの時代もこの頃、将軍・家斉の頃でしょうか。

で、吉睦はかつて馴染みの遊女「そめき」を役目により斬首したことがあるのですが、死にたがりの彼女の思いを残させるために、小指を六角箱に詰めて残させます。この小指はそれから遊女の心中立てに使うために手放すのですが、何度手放しても吉睦のもとへ帰ってくるのですが、その理由は・・・、という筋立てです。


遊郭に居残りを繰り返す遊び癖のひどい亭主の借金のかたに売り飛ばされ、その後も亭主に裏切られた「そめき」の「想い」が哀しいです。もっとも、浄化された後は、かなり浮気性が見えるようですが。


第3巻の構成は


其ノ拾 廓歩き②

其ノ拾壱 芥子坊主①

其ノ拾弐 芥子坊主②

其ノ拾参 女郎蜘蛛①

其ノ拾肆 女郎蜘蛛②

其ノ拾伍 女郎蜘蛛③

番外編 洗濯日和

単行本特典 廓番うすいのかみ


となっていて、第2巻の第9話と第3巻の第10話の「廓歩き」は、首斬り朝の弟子の「鬼助」が「あお」を冥土の吉原に連れ出してのお話です、ここで第2話で出会った三人姉妹と再会します。鬼助が三姉妹を怯えさせたお詫びに「焼き芋」をおごることになるのですが、姉妹の一人から「一緒に食おう」と声をかけられるあたりは、貧しかった時代の日本の「人のつながりの濃さ」を思い出させるシーンですね。


第11話と第12話では、神社に子供の人形である「芥子坊主」が訪ねてきます。廓で子供をもつのは多くの遊女にはご法度で、トップクラスの花魁以外は子供が産めないしきたりです。この芥子坊主の望みは「おっかあ」に会いたいとうことで「あお」は、彼を廓に連れていくのですが、なぜか「花魁」の暮らす部屋を素通りし・・・、という展開です。

子供は産めないクラスの遊女とその禿が、我が児の代わりにしたものは・・・というところですね。


第13話と第15話は、廓の遊女・八葉と「若い衆」と呼ばれる男性従業員・兵次との禁断の恋にまつわる話です、廓でこういう恋愛がバレると、男女両方が厳しく痛めつけられ、場合によっては男はあの世行きということもありえます。若い二人の行く末を心配して、遣り手婆の「おかね」は二人の仲をあえて裂こうとし、宮司の楽丸と薄神の呪力で「八葉」そっくりに変身し、兵次との別れ話をするため部屋で待ち構えるのですが、実は「おかね」には別の企みが・・・といった展開です


この話は、「おかね」が生霊に転じたことで次巻へ続いていきますね。


【レビュアーから一言】


最終話で出てくる「遣り手婆」というのは遊郭の遊女たちを統括する役目の女性で、客の品定めをしたり、便宜を図ったりと、廓内の陰の実力者ですね。たいていは、その廓の遊女が年をとってからなるのが通例で「おかね」のような生臭さをもっている場合もあったかもしれません。



このブログを検索

ブログ アーカイブ

ラベル

3月のライオン (7) 7人のシェイクスピア (17) etc (29) アウトドア (6) あおのたつき (9) あかね噺 (4) アサギロ (13) アド・アストラ (6) アルキメデスの大戦 (20) アルテ (9) イサック (9) イノサン (9) ヴィンランド・サガ (10) ヴラド・ドラクラ (4) グルメ (12) こざき亜衣 (2) スポーツもの (1) つぐもも (9) ハコヅメ (8) パパと親父のウチご飯 (14) ハンティング (3) ヒストリエ (11) フィッシング (7) ふしぎの国のバード (9) フラジャイル (14) プリニウス (12) ブルーピリオド (5) へうげもの (20) ベルセルク (13) ミステリと言う勿れ (8) ゆるキャン△ (12) リアル (4) ローズ・ベルタン (9) 阿・吽 (3) 医療コミック (8) 応天の門 (18) 乙嫁語り (12) 怪獣8号 (4) 鬼滅の刃 (1) 宮下英樹 (3) 極東事変 (2) 軍靴のバルツァー (9) 高橋葉介 (3) 高橋留美子 (2) 山と食欲と私 (11) 重版出来 (7) 諸星大二郎 (2) 信長を殺した男 (1) 信長協奏曲 (6) 新九郎奔る! (5) 推しの子 (5) 星野之宣 (22) 戦記もの (5) 惣領冬実 (1) 葬送のフリーレン (6) 達人伝 (7) 断頭のアルカンジュ (4) 賭ケグルイ (28) 土山しげる (4) 東村アキコ (10) 卑弥呼 (8) 舞妓さんちのまかないさん (7) 紛争でしたら八田まで (7) 碧いホルスの瞳 (1) 亡国のマルグリッド (4) 忘却のサチコ (7) 幕末 (11) 満州アヘンスクワッド (9) 矢口高雄 (2) 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (10) 憂国のモリアーティ (10) 歴史コミック (37)

自己紹介

自分の写真
日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

QooQ