アルテは籠城中のフィレンツェへ接近、かつての旧友に出会う=大久保圭「アルテ」17(ゼノンコミックス)

2022年12月16日金曜日

アルテ

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芸術・文化が花開き、多くの優れた画家が生まれてはいるが、まだまだ女性が自らの才能を思う存分発揮して活躍することが難しかった「ルネサンス」の時代に、貧しい貴族の家を出て、自分の才能を信じ、王宮の宮廷画家を出発点に一流の画家となっていく女性・アルテの奮闘を描く『大久保圭「アルテ」(ゼノンコミックス)』シリーズの第17弾。


前巻で皇帝軍に包囲されているフィレンツェに残っている師匠・レオに会うため、カスティーリャ女王のイレーネの元を離れ、傭兵隊のグイドたちとともにフィレンツェ帰還の旅に出たアルテなのですが、途中の海路で海賊に襲われ、傭兵隊のパコが戦死したため、動揺しつつも、フィレンツェを目指すアルテの姿が描かれます。


あらすじと注目ポイント


構成は


第80話 覚悟と仕事と

第81話 野盗

第82話 もしも不幸なら

第83話 頑張ったんだね

第84話 必ずだ


となっていて、傭兵隊のパコが自分をかばって死んだことにショックを受けたアルテは、傭兵隊長のグイドに、ここからは単独でフィレンツェを目指したい、と告げます。

しかし、グイドの答えは当然「No」。王族や貴族からの依頼を受けて、高額な報酬を受け取るかわりに、命がけで命令を遂行する「傭兵の意地」

俺達を金で買うってことは”命を買う”ってことだ

いつ死ぬかわからない

パコが死んだのだって、あいつの仕事だ

とアルテに言い返します。


グイドに傭兵を雇ったということの厳しさを示されたアルテは彼らの護衛のもとでフィレンツェを目指すことになるのですが、途中の村で、住民の家を襲う傭兵たちと遭遇し、そこで初めて戦闘行為に参加し、相手を斃してしまうことになります。その動揺をグイドに伝え、自分はフィレンツェでは陰謀にはめられて窃盗の犯罪者として追われているのだということを告白し、そこでようやく、グイドたち傭兵たちの「仲間」として受けいられることとなります。


アルテにしてみれがこの告白は「清水の舞台から飛び降りる」ぐらいの覚悟がいったと思うのですが、よく考えてみればグイドたち傭兵たちは、どこかの国の依頼を受けて仕事を遂行することは、すなわち相手方の国の恨みと追及を受けることと同じなので、さほど驚くようなことではなかったのかもしれません。

そして、フィレンツェ近くの町の宿に宿泊したアルテはそこで、フィレンツェでの画家修業時代につるんでいた二人の人物に出会うこととなります。二人は、アルテが濡れ衣を着せられ、フィランツェを脱出した後、人生を共にする関係になっていたのですが、彼らから聞いた恩師・レオの近況は・・という展開です。

前巻の中盤からこの巻にかけては、アルテのレオに対する恋愛感情が炸裂するシチュエーションが多いので、ここらはフィレンツェ篇の中盤のあたりと同様、好みのわかれるところでしょうね。


レビュアーの一言


アルテが目指しているフィレンツェは当時、神聖ローマ帝国のカール五世軍に包囲されている状態で、城内に籠城する市民軍は、10ヶ月間の間、包囲され続けで、皇帝軍の攻撃と飢えに苦しむことになります。そして結局投降することになるのですが、それまでに3万人もの市民の死者がでていたとも言われます。


そして、フィレンツェ市民や政府が一枚岩だったかというとそうでもなくて、フィレンツェ政府の軍の総司令官だった「マラテスタ」は、皇帝・教皇軍と内通していたともいわれています。


少し歴史的なことをネタバレしておくと、フィレンツェは皇帝軍に降伏した後、アルテを追放した原因ともなるパッセリーニ枢機卿が後見していたメディチ家のアレッサンドロが帰還し、フィレンツェ公としてフィレンツェを統治することになるので、市民派に属すると思われるレオやパッセリーニ枢機卿に罠にはめられたアルテに、さらに暗雲が漂ってきそうな気がします。


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