美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第15巻。
海外雄飛による貿易で経済政策を活性化しようと考えていたのだが、造船技術の未熟さで断念した秀吉が、帳尻を合わすための策が「北条攻め」であったのだが、その「後北条家」の二代目・氏綱から四代目・氏政までの「後北条史」そしてそれを受け、五代目・氏直は、秀吉に北条攻めに対し、どんな戦術を選択したのかが描かれるのが本巻。
【構成と注目ポイント】
構成は
VOL.118 後北条氏初代
VOL.119 不可思議なる御仁
VOL.120 三国同盟
VOL.121 若殿様
VOL.122 城前
VOL.123 立派な国
VOL.124 北条のために
VOL.125 合戦仕度
VOL.126 馴染み
となっていて、後北条氏の初代・伊勢宗瑞から二代目・北条氏綱へ代替わりしての本巻のスタート。名字のところを見ての通り、「伊勢家」を断絶し、「北条」と名乗り始めたのは二代目・氏綱からで、地味ながら版図を拡大し、関東管領の職を獲得しています。
そして、さらに三代目・氏康のときには「河越の戦」で扇谷上杉、山内上杉を圧倒し、最大版図をつくりあげるのですが、これが、軍神・上杉謙信が北条家を宿敵と見定め、挑んでくるキッカケともなりますね。
そして、上杉謙信(当時は長尾景虎ですかね)の台頭を予測した、今川義元の提案で、武田信玄、北条氏康の間で、駿河・甲斐・相模の三国同盟が成立します。
今川義元は、桶狭間で織田信長に奇襲で敗れ、その後今川氏が急速に衰えたので、油断の多いお歯黒武者のようにTVドラマでは扱われることが多いのですが、一族同志に争いに勝って家督を相続し、領国の軍事改革と領国経営を刷新し、領土も、駿河・遠江に加えて三河・尾張まで拡大するなど、かなりの傑物であるので誤解なきように。(このへんは同じ筆者の「センゴク外伝 桶狭間戦記」あたりがオススメかもしれんですね。
この三人から見て、戦に勝つことだけを考えて領土の拡大をしない上杉謙信はまさに「異星人」のようなものなのですが、
国を経営し
家中をまとめ
民を慰撫し
外交に腐心したとて
天災ばかりはままならぬ
「飢餓を如何せん」
その解決策
といったように、謙信の外征は、農閑期・厳冬期の農村の「口減らし」の意図が強かったためでありましょう。
そして、この謙信が永禄三年に、準備万端で関東に攻め込んでくるのですが、その時の北条の戦術は
長尾景虎なる大敵は
三国同盟の加勢を待ちつつ
籠城にてやり過ごす
ということで、これ以降、「籠城戦」による徹底抗戦が北条氏の戦の十八番のようになってきます。この北条氏の戦い方を方向づけた上杉謙信との戦の詳細は原書のほうでどうぞ。
そして、秀吉の攻めに対し、四代目氏政が五代目氏直に進言する戦術は「籠城」なのですが、氏直は民衆に過大な負担をかけることになると、臣従と抗戦への間で悩みます。そして、そんな氏直に対して、氏政は民衆の声を聞けとアドバイスします。身分を隠して城の外に出て、聞いたのは
御国の、北条のために戦う
正しい国を護ること
これ以上の生き甲斐がありましょうや
民衆ぁ、寧ろ合戦を望んでおり申す
ということで、氏直の予想外のもの。小田原の民衆が「戦やむなし」というその理由のところは、原書のほうで読んでいただきたいのですが、明智光秀がつくろうとした「民衆の国」が象徴する「国民国家」が、この小田原では実現していたのかもしれません。
【レビュアーから一言】
秀吉の戦略と、それを受ける北条家の思惑は複雑に交差するのですが、変わらないのはセンゴクとその部下たちで、北条攻めが始まるということで
一緒に合戦するぐらいしかねぇじゃろ
ワシが報いるこたぁ
と集まってきます。ここらがセンゴクの人徳というか、人気のあるところなのでしょうが、その根源は「戦国時代」のもつなにやらキラキラした魅力なのかもしれません。
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