蝦夷共和国の最後の「戦」終結。土方歳三、箱館に散る=「ちるらん 新撰組鎮魂歌」35〜36

2023年8月6日日曜日

ちるらん

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 薩長勢力に抗って、幕末京都の治安を守った「新選組」の副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・箱館戦争へと続く内戦と激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」シリーズの第35弾〜第36弾。


前巻で蝦夷共和国軍の起死回生策として、新政府がアメリカから買い取った最新鋭艦「甲鉄」を奪うため、土方たち精鋭部隊が艦に乗り込んだところで、今回はそれを待ち構えていた伝説の剣士「高柳又四郎」とのバトルの決着がつき、さらには箱館戦争の集結に向けて物語が動いていきます。


あらすじと注目ポイント


第35巻 土方vs高柳又四郎の勝負決着。土方は立会に勝つも甲鉄の奪取ならず


第35巻の構成は


第百四十三話 同種

第百四十四話 剣客人生

第百四十五話 海の漢

第百四十六話 最後の武士たち


となっていて、冒頭では千葉周作と高柳又四郎ととの出会いと最後の果たし合いからスタートします。千葉周作は若い頃、高柳と立ち会って引き分け、この時、勢いが余って床を踏み抜いたというエピソードが残っているのですが、本書ではその後晩年になってから再び立ち会ったことになっています。


「甲鉄」艦上で始まった土方と高柳に立会の間に、市村鉄之助によって手負いとなった、薩摩示現流の遣い手で幕末四大人斬りの「田中新兵衛」の弟「田中凛之助」が割って入るのですが、邪魔をされるのを嫌った高柳によってあっさりと切り捨てられます。

ここから殺気や気配を全く感じさせない剣「音無しの剣」を遣う高柳と土方との立会が始まるのですが、土方は捨て身の戦法をとり・・という展開です。


高柳を土方が斃し、星たち他のメンバーが艦を制圧し、「甲鉄」奪取は成功するかと見えたのですが、後にロシアのバルチック艦隊を打ち破る「東郷平八郎」の進言でボイラーの火を落とさなかった新政府海軍が急遽、救援へかけつけ、蝦夷共和国軍の「回天」はやむなく撤退を余儀なくされます。


そして、それから2週間後、黒田清隆が2800人、山田顕義が1500人の最新鋭の武器を装備した軍勢を率いて上陸し、五稜郭へ攻撃を始めます。

これに対し蝦夷共和国勢は、五稜郭に榎本武揚の本隊1500人を残し、木古内で大鳥圭介が700の兵、土方歳三が新撰組や彰義隊の行き残りを集めた300の兵で迎え撃ちます。圧倒的な劣勢の中で、土方の采配は神域に達していて・・という展開です。


第36巻 箱館戦争終結。「最強を求めた男・土方歳三」散る


第36巻の構成は


第百四十七話 日本一の大馬鹿ヤロウ

第百四十八話 最後の戦い

第百四十九話 最後の新撰組

最終話    再会の地


となっていて、最新鋭の兵器で装備した明治政府軍だったのですが、土方率いる300人の蝦夷共和国軍によって10日間、足止めを食らっている状態です。焦りを隠せない明治政府軍の指揮官に対し、総参謀長の黒田は3日ほど正面攻撃を続けるからこそ奇策が生きる、と告げます。黒田の作戦は、正面から圧倒的に優位な火力を使って集中砲火を浴びせ、そちらに蝦夷共和国軍の注意をひきつけ、側面の崖側から挟撃をしかけるというものなのですが、土方はこの作戦を見抜き、相手方の本隊が奇襲と同時に前面にでてきたところを側面から奇襲するという、奇襲に奇襲で立ち向かう作戦を立案します。


この作戦を遂行するには白兵戦の強力な戦力が必要なのですが、ちょうど土方たちが鳥羽伏見の敗戦の後、京から江戸へ向かう船中で襲撃してきた「亡霊の騎士団」の生き残りたちが土方たちに加わっていて・・という展開です。


明治政府軍2000人vs土方軍300人という圧倒的な優勢な中で、不意打ちを受けた明治政府軍は敵軍の兵力を見誤り恐慌状態に陥って瓦解してしまいます。この戦いで大敗北を喫した経験から、後年、黒田清隆は、土方を「不世出の軍才」として称賛したそうです。


しかし、蝦夷共和国軍の優勢もここまで。

圧倒的な兵力差、軍備差を使って、明治政府軍は大鳥圭介軍を攻撃します。この戦いで、伊庭道場の御曹司で、十四代将軍・家茂の奥詰衆で、遊撃隊隊長の伊庭八郎が被弾して、大鳥圭介軍は退却し、この結果、土方軍も二股口を放棄し、五稜郭へ撤退します。


そして、後詰めとして西郷隆盛が大軍を擁して北進してくる中、明治二年五月十一日、北海道の明治新政府軍は、蝦夷共和国軍の最後の砦となる「五稜郭」と「箱館」へ総攻撃をしかけてきて・・という展開です。

土方歳三と蝦夷共和国の最後の戦いの様子は原書のほうでお確かめを。


レビュアーの一言


多摩を出発し、京都、江戸、宇都宮、会津、仙台、蝦夷と転戦してきた土方の「最強を目指した」生涯もこの巻で完結するのですが、こういう人物にはお決まりのように「生存説」ってのが伝えられています。

土方は箱館戦争の最終日、箱館台場に立てこもる、元新撰組隊士・島田魁の救援に向かい、一本木関門での乱戦の中で被弾して死亡した、と言われているのですが、実は仮死状態で救出。その後、懇意にしていた豪商・佐野専左衛門によってロシアに亡命した、あるいは、幕府の元軍事顧問・ブリュネの計らいでフランスに渡った、といったものですね。

まあ、「義経=ジンギスカン説」ぐらいの信ぴょう性かと思うのですが、歴史のロマンとしては面白いですね。


ちなみに、「ゴールデン・カムイ」でも、この箱館戦争で生き延びたものの、彼の存在を警戒した明治新政府によって素性を隠された上で網走監獄に収監されていたことになってます。

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