「ヴェニスの商人」封印。「リチャード三世」で勝負をかけろ ー 「七人のシェイクスピア(Part2) 3」(ヤングマガジンコミックス)

2020年5月26日火曜日

7人のシェイクスピア

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 大英帝国が絶頂を迎えたエリザベス一世の時代に、イギリス・ルネッサンスの本場ロンドンで、劇作家として世に出現。以後、演劇の世界に大きな影響を及ぼし続けている「シェイクスピア」の半生記と彼の創作の秘密を描く「七人のシェイクスピア」Part2の第3巻。


前巻でミルの命をかけた行為で、ようやく世にでるチャンスをつかんだ「ヴェニスの商人」を、マーロウに勝つためにあえてお蔵入りさせた「リチャード三世」の脚本がようやく仕上がります。さて目論見通り、これがシェイクスピア・チームを成功へと導く起死回生の一手となるかが試されるのが本巻です。


【構成と注目ポイント】


構成は


第19話 リチャード・バーベッジ

第20話 クレイ・パイプの女

第21話 クロス・キーズ亭①

第22話 クロス・キーズ亭②

第23話 テムズ河の船

第24話 最後の顧客

第25話 新たなる作品①

第26話 新たなる作品②

第27話 ロビン・ウィリアムズ

第28話 人形芝居


となっていて、リチャード三世の脚本を、シェイクスピア・チームで仕上げたシェイクスピアは、出来上がったものをストレンジ卿に読んでもらいます。

卿はいたく、「リチャード三世」がお気に召すのですが、それは卿のご先祖様が暴虐なリチャード三世を敗北させた「リッチモンドの戦」で

リチャードの死体から王冠をもぎとり、リッチモンドに手渡す

こんな史実はないのだが、子孫としては嬉しいものだ

他にも全編にわたって、我が先祖が

史実にはない大活躍

という設定となっているからのようです。


このあたりは、庇護者の貴族のご機嫌をとりもつのがうまいシェイクスピアならではの「ワザ」なのでしょうが、純粋に大衆に受ける演劇としては、かえって足かせになったのかもしれません。


そして、この時に、シェイクスピアたちは、ストレンジ卿夫人のアリスと知り合いになることができるのですが、これはファイン・プレイ。彼女の的確な演劇観と行動力が今後、大きな力となってきますね。


そして、ストレンジ卿のお墨付きを得た「リチャード三世」は、座長・バーベッジの了解も簡単に得て、上演の運びとなります。演じるのは「クロス・キーズ亭」という宿屋の中庭の舞台なのですが、詰めれば700人は入るという結構大規模な劇場で、ここで大入りをとれば、さらに大劇場への道が開けることになる正念場です。


しかし、自信満々で臨んだ「リチャード三世」は、時代を先んじすぎていたせいか、大ゴケ。シェイクスピアが名優になると見込んで抜擢した、バベッジ座長の次男坊のリチャードには苦いデビュー戦となりました。


さて、次の仕込んだ「リチャード二世」も宗教上の理由から上演を差し控えざるを得なかったシェイクスピアは、「大定番」の「ヨーク家」と「ランカスター家」の王位をめぐっての国内戦争である「薔薇戦争」で新たな脚本を書くことにします。しかし、このネタは他にもたくさん演じられている、いわば手垢のついたネタで、宿敵マーロウに「素晴らしく凡庸だ」と再び酷評されることになりますね。


シェイクスピアには、ヘンリー六世の即位から、彼の治世に不満を抱いたプランタジネット公が反旗を翻した、地味な部分を第一部としてきっちり描いて、その後に戦闘シーンの多い第二部をもってくれば行けること間違いなし、と妙な確信があるのですが、さてそんなにうまくいきますかどうか・・・。結果については、本書のほうでご確認くださいね。


【レビュアーからひと言】


シェイクスピアとワースが、ストレンジ卿の奥方アリスに出会う最初のシーンから、彼女はいつも「パイプ」を手にしていて、かなりの愛煙家であるようです。


もともとタバコはアメリカ大陸のインディアンたちの風習であったようですがスペイン人によってヨーロッパにももたらされたようです(日本にはポルトガル人が持ち込んだとの説が有力です)。そしてイギリスに喫煙の習慣を持ち込んだのは、その長身と美貌で、エリザベス一世の愛人かつ寵臣となった、ウォルター・ローリーだったという説があります。


女王の第一の寵臣が推奨したものなので、最先端の流行として貴族たちがこぞって飛びついたのかもしれませんね。

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