ゼッタへ魔女の疑惑、さらにカトリックの大傭兵団が迫るー真刈信二・DOUBLEーS「イサック」6・7(アフタヌーンKC)

2020年10月17日土曜日

イサック

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 17世紀初頭から半ばにかけてドイツやオーストリアなどの中央ヨーロッパでカトリックとプロテスタントの間で戦われた宗教戦争「三十年戦争」を舞台に、大阪夏の陣の後、戦乱が収まった日本から、兄弟弟子が師匠のもとから盗み出した銃を取り返すため、傭兵としてやってきた火縄銃の名手「イサック」の活躍を描く戦場物語『真刈信二・DOUBLEーS「イサック」(アフタヌーンコミックス)』シリーズの第6弾と第7弾。

前巻までで、フックスブルグ城を取り囲んでいたスペイン軍とスピノラ将軍の傭兵部隊を退却させたハインリヒ王子とイサックなのですが、カトリックとプロテスタントの融和を図るため、クラーエンシュタイン城へオースリア皇帝の側近と会おうとしての、その後の展開が描かれます。前巻の最後で、ゼッタの祖父が老齢と過労のために死去していて、ゼッタにとっては辛い旅立ちでもありますね。


構成と注目ポイント


「イサック」第6巻の読みどころ


第6巻の構成は


第22話 激流の戦い

第23話 山猫亭にて

第24話 裁判

第25話 火刑

第26話 夢


となっていて、、クラーエンシュタイン城に入ったハインリヒ王子の身柄を求めてくるバイエルン公国の軍隊から逃れるため、城を出て、ドイツ南部にあるメルゲントハイムの街を目指すこととなります。                                         


メルゲントハイムはドイツ騎士団の本拠地のようですね。バイエルンの軍隊に城を取り囲まれたときは

  待て。マキシミリアン公に伝えよ

  帝国男爵の居城に押し入るなら、剣で受けて立つとな

と勇ましい姿で相手を圧倒した女性男爵・エリザベートなのですが、実は、冷静に戦力を見極めている優れた「戦術家」であることが本書では描かれてます。


さて城を出て、バイエルン兵をまいてメルゲントハイムを目指す一行なのですが、途中宿泊した「山猫亭」でトラブルに見舞われます。この宿の主人が高利貸しををして村人を搾り取っていることに怒った村人たちが、この宿の主人を裁判にかけ縛り首にしようと押しかけてきます。三十年戦争は、戦争による死者を生み出しただけでなく、ドイツの国土を荒廃させ、ペストといった伝染病も流行していたようですので、まさに「乱世」という状況であったと思われます。


そして、この山猫亭に主人は、村人から暴利を貪った罪で「死刑」を宣告されるのですが、ここで宿の女将が「禁じ手」に出ます。なんと、冷夏になったり、作物が不作なのは、トーマス・ミュンツァー信徒であるゼッタが魔女であるせいだ、と告発します。まあ、初めてこの地にやってきたゼッタが元凶だというあたり濡れ衣であることは間違いないのですが、魔女狩り自体が、集団ヒステリーの極致みたいなものですから、不満を抱える村人たちを抑えるものは何もありませんね。


彼らは、ゼッタを捕らえ、火炙りにしてしまおうとするのですが、これをイサックが山猫亭で知り合った旅商人・クラウスの助けを借りて切り抜けるのですが、そのアクションシーンは、原書のほうでお楽しみを。


「イサック」第7巻の読みどころ


続く第7巻の構成は


第27話 二つの騎兵部隊

第28話 将軍の野望

第29話 赤髭

第30話 囮

第31話 戦場に響くまがまがしい銃声


となっていて、途中の集落で、魔女として処刑されそうになったゼッタを救い出して、メルゲントハイムにたどり着いた、イサックとハインリヒ王子、エリザベート男爵一行なのですが、この街を取り囲むスラブ騎兵たちと遭遇します。


騎士団の館は彼らによって荒らされていて誰もおらず、さらに城外で、ハンガリーでトルコ軍と戦っているはずのマジャール弓騎兵に襲撃されて劣勢となっているプロテスタント軍と出会います。


ハインリヒ王子の兄、プファルツ選帝侯・フリードリヒ5世に対抗する神聖ローマ帝国皇帝・フェルディナンド2世に雇われたボヘミアの傭兵隊長・ヴァレンシュタイン将軍が、プロテスタント軍を壊滅させ、フリードリヒ5世を捕縛するため、自軍のスラブ騎兵、マジャール騎兵を派兵してきている、という構図です。


マジャール弓騎兵の攻撃を、イサックの銃撃によって出鼻をくじくことに成功し、フリードリヒ5世に合流できたハインリヒ王子たちは、ヴァレンシュタイン軍の包囲から逃れる方策を模索します。


そんな中、近くの館に少数の兵士に守られて宿泊しているヴァレンシュタイン将軍を発見し、そこへ奇襲をかけるのですが、これがヴァレンシュタインの罠。エリザベート男爵とハインリヒ王子の率いるプロテスタント軍の前にマジャール騎兵とスラブ騎兵、そしてヴァレンシュタインの大傭兵軍団が現れ、おまけにヴァレンシュタイン軍にはアルフォンソ王太子軍から逃亡したロレンツォが雇われていて・・・、という展開なのですが、ここから先は原書のほうで。


レビュアーから一言


第6巻でゼッタは、山猫亭の女将に、十字架の裏に彫られている「m」の字を見られトマス・ミュンツァー信徒であることを告発されます。


トーマス・ミュンツァーというのは、ルターとともに宗教改革を訴えた神学者で、農民一揆と呼応して反乱を主導するなどしたために、1524年に処刑されています。この物語のほぼ100年前の人ですね。

処刑当時は農民の間にも支持者はいたのでしょうが、時の経過とともに、反逆者・異端者としてこの地域の人に認識されるようになったのでしょうか。中央ヨーロッパの魔女狩りは1590年代、1630年頃、1660年代がピークだったようですので、この物語の舞台となる時代も魔女狩りが盛んな頃なのですが、ミュンツァー信徒が魔女として弾劾された事例が多かったかどうかはもう少し調べてみたいと思います。

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