イサックは仇と出会い、スペイン軍を退却させるー真刈信二・DOUBLEーS「イサック」3〜5(アフタヌーンKC)

2020年10月13日火曜日

イサック

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 17世紀初頭から半ばにかけてカトリックとプロテスタントが中央ヨーロッパを舞台に争った宗教戦争で、ドイツ人口の20%を含む800万人の死者を出した「人類史上で、最も破壊的な戦争の一つ」といわれた三十年戦争の時代に、戦国時代の日本から傭兵としてやってきた、火縄銃の名手「イサック」の戦場での活躍を描く戦場物語『真刈信二・DOUBLEーS「イサック』シリーズの第3弾から第5弾。

前巻までで、スペインのカトリック軍に攻め込まれ、敗北間近となっている、プロテスタント側の、プファルツ選帝侯の弟・ハインリヒ王子の前に現れた、日本人銃士・イサックは、その天才的な銃撃の腕で、スペインのアルフォンソ王太子を敗走させるなど、たった一人で大きな戦果をあげたのですが、スペイン軍が、体制を立て直し、さらに、イサックが仇としているロレンツォという日本人銃士も戦闘に参加してからの戦いが描かれます。


構成と注目ポイント


第3巻 城塞都市ローゼンハイムへスペイン軍が攻めかかる


「イサック」第3巻の構成は


第8話 猪左久と錬蔵

第9話 蓋

第10話 樽

第11話 王太子、ふたたび


となっていて、イサックの大阪夏の陣の回想シーンから開幕します。大阪城落城の一ヶ月前に、師匠の娘を騙して、職人仲間の錬蔵が「信」の銃を盗んで逃亡します。夏の陣の決着で日本から戦乱がなくまってしまうことへの不満が原因のようですね。この時に、師匠の娘は徳川家に囚われてしまい、錬蔵が持ち出した銃を持ち帰らないと釈放してもらえないようですが、今後、鎖国令が発せられる中で、大丈夫なんでしょうか。


本筋のヨーロッパ戦線のほうは、錬蔵ことロレンツォが銃で牽制し、それを利用してスピノラ(弟)の軍が攻めかかります。このまま攻撃を受け続ければ城壁を乗り越えられ城内に侵入されると見たイサックとハインリッヒは城を出ての戦闘に切り替えます。普通なら、兵士たちに取り囲まれて封殺されるところなのですが、今回城攻めをするのが、スピノラ(兄)将軍の薫陶をうけ、騎士道にこだわるロベルトであったのが幸いします。一騎打ちで、ロベルトとオルシーニを倒したイサック王子とハインリヒは、帰陣したボルマン隊長の傭兵隊の加勢もあって、城内に生還することができます。


大勢は変わらず、ローゼンハイム城塞都市は大軍で囲まれている状況には変わりなく、このまま包囲戦を続けようとするスピノラ(弟)へのアルフォンソ王太子の命令が戦局を変えます。スペインへの帰国が迫っている王太子は、2〜3日の間に攻め落とせ、と命令します。しかも、銃士ロレンツォを連れて帰国するというので、もはやスピノラ(弟)軍にとっては、力技で攻め落とすしかなくなってしまいますね。


第4巻 アルフォンソ王太子、暗殺される


「イサック」第4巻の構成は


第12話 銃弾のゆくえ

第13話 思わぬ知らせ

第14話 突入

第15話 壁

第16話 決死


となっていて、イサックは力攻めで攻めてくるスピノラ軍の気勢を削ぐため、ロレンツォを狙撃して動きを止める戦略に出ます。もっとも、イサックは負傷のため、銃がまともに撃てる状態ではないので、ゼッタに補助させながらの銃撃です。この銃弾はロレンツォを直撃することはできないのですが、動きをとめる効果はアリですね。


そして、城へのイギリスの応援軍と王太子の帰国が迫る中、スピノラ軍が総攻撃をかけてきます。迎え撃つローゼンハイム城の守備軍は、自ら城を焼く偽装をして防ごうとするのですが、城内への地下通路を見つけたスピノラ軍が侵入することに成功します。ここで、侵入するスピノラ軍と、ハインリッヒ王子側の傭兵隊長・ボルマンとイサックが死闘を繰り広げるのですが、このあたりは原書のほうで。


さらに、敵の攻撃を退けた後、ハインリヒ王子はイギリス軍がローゼンハイム城塞都市に到着し、守備力が強化されたことを見届けると、根拠地のフックスブルグ城へ帰ろうとするのですが、森の中で待ち伏せしていたスペイン軍に捕獲されてしまいます。彼の救出に向かうイサックなのですが、そこにはロレンツォ(錬蔵)がすでに待ち構えていて・・・と今巻の終盤へ展開していきます。


一方で実は、戦局を大きく変える事態が発生しています。自分がスペイン王になれば、ヨーロッパのほとんどを統治することになり戦乱は終結する、というアルフォンソ王太子を、戦乱の中でしか自分の生きる意味を見いだせないロレンツォが殺害していて、この王太子の死によって、この戦争の行方はさらに混沌としていきますね。


第5巻 スペイン軍退却。戦局は新たな局面へ


「イサック」第5巻の構成は


第17話 少女の祈り

第18話 決断

第19話 敵地深くへ

第20話 帝国男爵

第21話 フォン・ハラヘ


となっていて、イサックはスペイン軍に切り込み、捕縛されたハインリヒ王子を救出するのですが、逃げ切れず、スペイン軍に包囲されてしまいます。このイサックの窮地を見て駆けつけるのがゼッタです。彼女は、スペイン軍の中をかいくぐってイサックのもとへたどり着き、彼の銃撃の援助を始めます。


負傷のため、銃に次の玉を装填できないイサックだったのですが、ゼッタが代わって装填。イサックが狙いを定めたのは、スペイン軍を指揮するスピノラ(弟)将軍。将軍がスペイン軍に突撃を命じた瞬間に、彼を撃ち殺す戦法です。


この場面で、日和ったのが、スピノラ(弟)将軍です。かれは兄の死によって1万の傭兵軍を指揮する立場に成り上がれたところなので、ここで死後の名誉と自分の生命を引き換えにするようなことはするわけがありません。ここはイサックの作戦勝ちというところでしょう。

これによって、フックスブルグ城を囲んでいたスペイン軍は撤退。プロテスタント勢は一息つくこととなります。


ここで、プロテスタント勢にとっては一縷の望みともいえる情報が入ります。ドイツのカトリック勢の中心勢力・バイエルン公国の中にプロテスタント側勢力の飛び地・クラーエンシュタイン城までいけば、そこでオーストリア帝国皇帝の側近・ハラハ伯爵がカトリック・プロテスタント両派の和解の協議をするために待っている、というのです。


危険を承知で、クラーエンシュタイン城へ向かったハインリヒ王子一行は、途中、ゼッタの機転やクラーエンシュタイン城主の女性男爵・エリザベート(正式名は、エリザベート・フォン・クラーエンシュタインというそうです)の助けで無事城へ入ることができたのですが、そこへ選帝侯の軍隊がカトリック勢の大軍の前に敗走したことや、味方の有力な指揮官が、腕の立つ狙撃手によって次々と銃撃されて倒されたことを知ります。さて、ハインリヒ王子とイサックはどうするのか・・と、今巻の最後のほうへと展開していきます。


レビュアーから一言


この物語は1618年から1622年頃にかけておこったボヘミア・プファルツ戦争のちょうど中程の1620年頃であることが第一巻に書いてあるのですが、イサックがヨーロッパにくるもととなる銃を発注した徳川家康は1916年に、長谷川藤広は1617年に死去していて、徳川幕府は二代目・秀忠の晩年期に入り、1623年には徳川家光が第三代将軍となり、すでに「戦国時代」は遠い昔になってきています。これから日本は1633年の鎖国令にむけて国を閉ざしていくので、二丁の銃を手に入れても、イサックの帰還への道のりはかなり厳しいものとなると思われます。

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