信長は上洛して調子こいたのが仇になる = 石井あゆみ「信長協奏曲」4〜7(ゲッサンコミックス)

2021年3月28日日曜日

信長協奏曲

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 現代から戦国時代へとタイムスリップしてきた高校生・サブローはなんと、あの「織田信長」とそっくり。病弱のため戦国時代を生き抜くことが難しいと自覚している「本当の信長」と入れ替わった現代高校生が天下統一へ向かっていく姿を描いたのが本シリーズ『石井あゆみ「信長協奏曲」(ゲッサンコミックス)』の第4巻から第7巻まで。


第1巻から第3巻までで、桶狭間で大勢力の今川家を倒し、さらに尾張統一から強敵の美濃の攻略を成功させたサブロー信長なのですが、強気になって、天下に号令しようと京都に上ってい「イイ気」になっていると手ひどいしっぺ返しをくうのがこのタームです。


あらすじと注目ポイント


第4巻 信長は上洛し、天下をうかがう


第4巻の構成は


第16話 天下布武

第17話 いざ、京都(前編)

第18話 犯人は

第20話 束の間の休息

第21話 京の権力者


となっていて、第3巻の最後で、シリーズの最初で旅に出た「本物の信長」が、「明智光秀」として織田家に仕官することになります。


そして、サブロー信長の天下統一の野望達成と「光こと「本物の信長」と彼の連れてきた僧侶・沢彦のススメもあって、上洛を計画することとなるのですが、この時に必要なのが、途中にある浅井家の懐柔。このために、お兄ちゃんの信長大好きの「ブラコン(ブラザーコンプレックス)」娘・お市の説得が必要になるのですが、それを誰がどうやったか、は原書のほうで。


「本物の信長」・明智光秀の人脈である細川藤孝を通じて、足利義昭に目通りできたサブロー信長は、彼をを奉じて上京し、彼を第15代将軍へ推戴します。

さらに、稲葉山城をを少数の手勢で占拠することに成功した天才軍師・竹中半兵衛が織田家へ臣従することを了承したり、ここらが無邪気に「天下布武」が簡単にできるね、と舞上がっていた最盛期の頃ですね。


ただ、信長が岐阜へ帰っている間に、再び頭をもたげてきた三好三人衆を追い払うために再上洛し、将軍の御所を建設したり、南蛮の宣教師・ルイス・フロイスと会って布教の許可を出したあたりから、足利義昭とのすれ違い・隙間風が産まれてきます。


現代人感覚で物事をすすめる「サブロー信長」のやり方が当時の「常識」とぶつかってしまった感じですね。


第5巻 浅井の裏切りで大ピンチ。殿軍の秀吉の企みは?


第5巻の構成は


第22話 不穏

第23話 戦国の梟雄

第24話 金ヶ崎

第25話 逃走中

第26話 逃走中②

第27話 到着


となっていて、第22話の「不穏」では、織田家の4人の軍団長の一人に抜擢された「秀吉」の屋敷へ「弟」と名乗る「忍び」が忍び込んできます。


これが、秀吉の天下取りを陰で支えた「豊臣秀長」となります。史実では、温厚で思慮深く、その人望で慕われていた人物とされているのですが、本シリーズでは、今川義元の忍び上がりで、信長にとってかわるのを虎視眈々と狙っている「秀吉」以上に、陰謀好きの怪しい人物として描かれています。


信長のほうは、上京を促しても一向に腰をあげない朝倉義景の討伐のため、織田・徳川連合軍10万の兵で越前へ向かいます。ここで、織田・徳川軍の背後に位置する浅井久政・長政親子が、義昭の信長討伐の要請に従って、織田信長を裏切って兵をあげます。

ここで、妹の「お市っちゃん」が、両端を縛った小豆の袋を信長に届けてきたエピソードや、信長軍が急遽退却する中で、殿軍(しんがり)を豊臣秀吉が務めるのは史実と同じなのですが、彼の目的は信長を逃して大出世に向けての賭けにでたわけではなく、背後から信長を追撃して、桶狭間で敗死した今川義元の敵討ちをしようという企みです。


ここで出てくるのが、明智光秀と竹中半兵衛で、二人で秀吉を牽制して、秀吉の企みを抑え込みます。外面からみた様子は史実のように、秀吉と光秀が殿軍として奮闘し、信長の窮地を救うのですが、意図は全く違っていた、という展開にしています。


第6巻 金ヶ崎で負けた信長は、姉川の戦でも危機一髪


第6巻の構成は


第28話 おうちに帰ろう

第29話 帰宅

第30話 おゆきちゃん

第31話 宵

第32話 姉川の戦い①

第33話 姉川の戦い②


となっていて、金ヶ崎の浅井家の裏切りで、全滅しそうになったところを、動機はどうあれ秀吉と光秀の固い防備もあって、命からがら京都へ舞い戻った信長は体勢を立て直すため、岐阜へと退きます。


この京都から岐阜へ帰陣する途中の「千草峠」でおきたのが、日本史上初めてのスナイパーの狙撃による暗殺未遂事件ですね。信長は、いろいろ日本初のタイトルを保有しているのですが、これはありがたくない日本初でありますね。


この時のスナイパーが「杉谷善住坊」という銃の名手で、依頼したのは六角義賢といった説があるのですが、「センゴク」では別の人物が主犯であったように思います。このシリーズでは、狙撃を依頼したのはなんと「・・・」ということになってますね。「・・・」については原署のほうでお確かめください。


朝倉攻めを、浅井久政・長政親子の裏切りで断念させられた信長は、竹中半兵衛の美濃・近江国境付近の城主の切り崩しの成功をうけて浅井攻めへ出陣します。信長軍は2万という大軍なので破竹の勢いで攻め進み、浅井の本拠・小谷城の近く(2kmぐらい)の虎御前山に陣を構えのですが、ここで浅井長政が朝倉の援軍を味方に一挙に攻めへ転じます。


長政の「ひたすら、信長の首を狙え!」という命令を受けて、夜のうちに姉川を渡り、横山城攻めへ兵力を回したため手薄になっている信長の本陣めがけて奇襲をかけてきます。信長軍にしてみれば裏をかかれてあっという間に大ピンチ、という感じです。

ここらあたりは

俺さ、

信長っていえば、なんかもうちょっとカッコよさげなイメージがあったんだけど

なんか最近、逃げてばっかじゃない

というサブロー信長の「ぼやき」がこの時の状況を現していますね。


このときも、信長はその逃げ足の速さでなんとかピンチを脱し、この後、徳川家康軍の奮闘が活きてきて、信長軍が盛り返し、朝倉勢が崩れたのをきっかけに浅井軍も敗走をはじめ、結果的に「信長勝利」といわれているのですが、気分的には「完全勝利」とはいえなかったように思います。


第7巻 信長は攻勢に転じるが反乱続出。無念の和睦か?


第7巻の構成は


第34話 姉川の戦い・・その後

第35話 志賀の陣

第36話 志賀の陣②

第37話 元亀元年終わる

第38話 ミッチーの一日

特別読切 エースの秘密


となっていて、姉川の戦の後、横山城を攻め落とし、その城代として「秀吉」が任命されます。


ここで注目しておくべきは、竹中半兵衛が美濃兵とともに、秀吉に寄騎していることで、通説では、信長の残虐さを嫌い、秀吉の度量の大きさに感銘して彼に助力したことになっているのですが、本シリーズでは「金ヶ崎の退き戦」の時と同様、横山城の城代となってまた信長に反旗を翻さないように牽制する役割ですね。


信長のほうは、浅井勢を小谷城に押し込めておいて、叩いても叩いても頭をもたげてくる「三好三人衆」や「六角勢」を潰しておこうという作戦にでるのですが、その最中に「石山本願寺」が挙兵、そして、その動きを見て、浅井・朝倉連合軍が出兵、という感じで、織田を倒すために周辺勢力が協働して動き始めます。さらには、浅井・朝倉連合軍を食い止めている宇佐山城の「森可成」軍の前に、比叡山の僧兵たちも敵として出現し、ということで、信長包囲網が敷かれることとなります。


この後、比叡山内に布陣する朝倉・浅井軍とは膠着状態となり、信長は将軍・義昭の力を借りて「和睦」することになります。


信長包囲網の陰の立案者である「義昭」を利用したあたりは流石ですが、講和の内容的には、信長が「覇者」の地位から一歩退いたもので、「無念」の和睦であったのではないでしょうか。


ちなみに、岐阜へ帰還した「サブロー信長」が鬱屈しているため、しばらく身代わりとなった「本物の信長」は、松永弾正から、「サブロー信長」が数百年後の日本からタイムスリップしたものであることを教えられるのですが、これがどう物語の展開につながっていくかはまだ未知数です。


レビュアーからひとこと


「金ケ崎の退き戦」にしても、「姉川の合戦」の時の浅井軍の急襲のときにしても、信長の”行動”の特徴は、形勢不利、絶体絶命とわかると、味方の軍隊も放っておいて、恥も外聞もなく「逃げる」ことですね。信長というと、「桶狭間」などの「勝ち戦」が目立つのですが、彼の本当の”凄さ”は、こうしたピンチのときに躊躇なく「逃げる」ことのできる思い切りのよさかもしれません。普通なら人目をきにしたり、今まで積み上げたきたもものを失わまいとして、全てを捨てて逃げることを躊躇して傷口を広げるものですが、そんなことは構わず「逃げる」ことに専心するところが信長偉大なところでしょう。

この「逃げ足の速さ」は、後に信長が亡くなる「本能寺の変」での「潔さ」となんだかしっくりこないところなのですが・・・。

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