天然パーマのZ世代探偵の”新感覚”推理に注目=田村由美「ミステリと言う勿れ」1・2

2021年3月19日金曜日

ミステリと言う勿れ

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 天然パーマが爆発したような特徴的なカリフラワーヘアーの持ち主で、人と交わるのが苦手な心理学専攻の大学生・久能整(くのう・ととのう)が、望まないのに向こうのほうから降りかかってくる奇妙な事件を、その丁寧で鋭い観察力と、雑多な博学的知識をもとに謎解きをしていく。Z世代系新感覚ミステリーが本シリーズ『田村由美「ミステリと言う勿れ」』です。

シリーズの第1巻から第2巻までは、久能整の探偵デビューから、連続生き埋め事件の犯人探しに巻き込まれたり、までが描かれます。


構成と注目ポイント


第1巻の構成は


episode1 容疑者が一人だけ

episode2 【前編】会話する犯人

おまけのたむたむたいむ


となっていて、まずepisode1は、アパートに籠もってカレー作りをしている本シリーズの主人公・久能整が、突然、大学の同級生・寒河江の殺害容疑で任意同行を求められるところから始まります。


彼が犯人と疑われている原因は、寒河江が殺害された時刻に、死体のみつかった公園で言い争っているところを目撃したという証言が入っているのと、殺害現場から何ブロックか離れたマンションのゴミ箱から、被害者の血液と「整」の指紋がべっとりついた果物ナイフが発見されたというもので、これを見る限り言い逃れができそうもないのですが、「整」は


と犯行を認めようとぜず、取り調べにあたる刑事たちの大反感をかってしまいます。このため、総掛かりで取調べが始まるのですが、取調べをする刑事たちの悩み事、「乙部」巡査のかわいがっていた娘に阻害され始めたことや、愛猫が死ぬ直前に姿を消したことに気に病んでいる上に、捜査本部の中のたった一人の女性ということで雑用係として扱われていることに悩む「風呂光」巡査、奥さんにイクメンでないと責められている「池本」巡査たちの悩みをその「雑学的博識」で解決をしていきます。


そして、この捜査陣を実質的に動かしているベテラン刑事の「藪」警部補が、奥さんと子供がひき逃げされて亡くなった時に捜査で立ち会えなかったというトラウマを抱えていることを知り、寒河江殺害の真犯人に気づくのでした・・という筋立てです。


ただ、事件の余波はこれだけではおさまらなくて、少しネタバレすると、藪警部補の家族をひき逃げした犯人は本当は誰だったのか、というところがこの話のキモですね。


episode2は、「整」が当日限りとなった美術展に行くために、普段乗らない路線バスが「バス・ジャック」されてしまいます。

このバスジャック犯は、路線バスの外側を観光バス風にラッピングし、バスジャックが起きているのを隠すといった周到な準備をしているのですが、身代金を要求するわけでもなく、どこか遠くのほうへバスをひたすら走らせていきます。


「整」は途中で、犯人の男を挑発して怒らせて隙をつくり、犯人が持っている武器のナイフを、同乗している他の男性客に奪わせることに成功させるのですが、実はその乗客は、犯人とグルで・・という展開です。


第2巻の構成は


 episode2 【後編】犯人が多すぎる

 episode3 つかの間のトレイン

 episode4 思惑どおりと予定外

 幕の内 episode2とepisode3の間

 おまけのたむたむたいむ


となっていて、最初の話は、第1巻のバスジャック事件の解決編です。


「整」たちを人質にしたバスは山中にあり「犬堂家」の大きな屋敷へと着きます。そして、このお屋敷の主、「犬童愛珠」が最近起きている連続生き埋め殺人の最初の被害者であるとともに、「整」と犯人たちを除く。バスジャックされたバスの乗客が、愛珠が最後に姿を消したバスに同乗していた人たちであることもわかります。犯人たちの狙いは、「愛珠」を殺した犯人をつきとめることが真意で・・・という展開です。

この事件で、「整」はこのシリーズで、彼を様々な事件へ誘導する「犬童我路」と出会うこととなります。


episode3は、前話のトラブルで見逃した美術展「印象派展」が広島で開催されるという情報を、「犬童我路」から得た「整」は広島へ向かうことにするのですが、新幹線の車中で、父親からきた手紙を読む女性に出会います。彼女は幼い頃に父親と死別したと聞かされていたのですが、実はそれは嘘で、彼女の育ての母は、実の父母から彼女を引き離して今まで育ててきていたとのこと。彼女は結婚を機に、父親に会って結婚式への出席を依頼するつもりのようですが、父親から彼女に宛てた手紙には、実の母親からの「警告」が隠されていて・・・という展開です。


episode4では、広島に着いて念願の印象派展を見たところで、「狩集汐路」という女子高校生と出会います。彼女は「犬童我路」の推薦で「整」に頼み事をしてきます。それは、彼女が属する「狩集」一族の遺産相続の相続人指名のコンテストで、自分のパートナーとして力を貸してくれというものなのですが、その相続人指名の方法というのが、それぞれに与えられる「蔵」で、「あるべきものをあるべき所で、過不足なくせよ」という奇妙なもので・・・という展開で、「整」はいつの間には旧家の相続争いに巻き込まれていくことになります。


レビュアーの一言


コミュ障気味で、引き籠もり傾向のある、このシリーズの名探偵「久能整」の謎解きは、意外に、人の気づいていない闇を暴き出す毒舌とともに解き明かされるのが特徴です。

さらに、謎解きですべてが円満におさまるわけではなく、新しい「闇」が出現するような感じがするのは私だけでしょうか・・。

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