近藤勇たちは「浪士組」に加わり上洛するーヒラマツ・ミノル「アサギロ」8〜10(ゲッサン少年サンデーコミックス)

2021年4月17日土曜日

アサギロ

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 幕末の歴史を、薩摩の西郷隆盛や長州の桂小五郎といった倒幕勢力や土佐の坂本龍馬といった維新志士たちの対抗勢力として、必殺の剛剣をふるって、京都の街を血で染め「浅葱色の狼」として恐れられた新選組の近藤勇や土方歳三、沖田総司の姿を描いた「アサギロ」シリーズの第8弾から第10弾。


試衛館に主だったメンバーが揃い、近藤勇の幕府講武所教授方への落選のショックも癒えたところに、新たに京都へ「将軍守護」と「京都の治安維持」のための浪士組の結成の話がもたらされ、いよいよ、幕末史に大きな爪痕を残した「新選組」の物語に向けて動き始めます。


構成と注目ポイント


第8巻 清河八郎の「浪士組」結成の謀略が実現


第8巻の構成は


第48話 ふさわしい名

第49話 助け舟

第50話 どうせ食うなら

第51話 すべてを司る

第52話 ふさわしい金

第53話 烏合の衆


となっていて、まず新選組の初代の筆頭局長(頭取)となった芹沢鴨が、彼の郷里である水戸で、天狗党の仲間を斬り殺すところから始まります。


芹沢の前半生にはいろんな説があるようですが、このシリーズでは、水戸藩の下村継次という下級武士で、天狗党の同士三人を酒に酔った勢いで斬り殺して、「斬首刑」の宣告を受けていたのですが、刑の執行前に、天狗党の首領となった武田耕雲斎が執政に返り咲いたおかげで恩赦を受け、釈放後、「芹沢鴨」と名を改めて、仲間たちと江戸へ向かうという設定になってます。

(Wikipediaなどの記述とは少々違うのですが、これも「異説」の一つということでしょう。)


釈放後に仲間と再会し、酒を浴びるように飲む姿は、「酒豪」かつ「酒乱」、いつも酒を呑んでいたといわれる彼の姿を象徴させています。


そして、江戸のほうでは、自分を狙っていた斎藤一が沖田たちによって始末されたと信じている「清河八郎」が、「稀代の曲者」として大変化を遂げています。清河は、幕府が朝廷と約束した「攘夷実行」をなんとかするため、浪人たちを集めて「浪士組」を結成し、徳川の兵として京へ上洛させるなどを内容とする「急務三策」の建白書をしたため、山岡鉄舟に預けます。この建白書は、見方によっては、攘夷を名目に浪人を大量に集め、それを京都の治安維持に転用して、攘夷は反故にするというもので、山岡自体は幕府が取り上げるとはおもっていません。


ところが、山岡鉄舟から建白書を受けた講武所教授方の松平上総守が「松平春嶽」に見せると、春嶽は「上策」だとこの案を採用します。まさに、瓢箪から駒というわけですが、この策を実現するために幕府が大々的に「浪士組」を募集し始めたことが、近藤勇たちが京へ上洛し、新選組を結成する大きな契機となりますね。


もちろん、この募集に集まったのは、近藤勇の試衛館のメンバーたちだけではなく、芹沢鴨を中心とする水戸天狗党の残党、甲州から江戸へ出て一旗揚げようと考えていた渡世人の「祐天一家」など、ぐじゃぐじゃの人材が大集結。この集団を、第7巻で近藤勇に講武所教授方落選の理由を告げた鵜殿鳩翁、清河八郎、山岡鉄舟、佐々木只三郎といった幕臣たちが率いて、京都を目指すことになります。


第9巻 浪士組の京都行は、トラブル続出


第9巻の構成は


第54話 西 恭助の事情

第55話 問題なかろう

第56話 本庄宿の炎

第57話 身体の芯まで

第58話 天誅の都

第59話 宣戦布告


となっていて、前巻で募集された浪士組が京都を目指す旅が描かれます。ただ、全員が「俺が一番」という気持ちの「食いつめ者」が集まっているので、トラブル続きです。


まず一番目は、伊予松山藩の中間上がりの「原田左之助」が、彼を妹の仇と狙う侍から刺殺されるというハプニング。史実では原田左之助は槍の名手で、新選組の十番組の組長を務めた人物で、江戸城開城後の上野戦争で戦死したという人物で、ここで死んでいるわけはないのですが、そのカラクリは、原書のほうで。

二番目は、本庄宿での出来事。割り当てられた部屋が北に面していて「鬼門」にあたると、宿で諍いを起こした芹沢鴨たちは、鬱憤を晴らすために宿場の通りの真ん中で大きな焚き火を始めます。浪士組を預かる鵜殿や山岡たち幕臣は、浪士同士のいざこざは浪士同士で解決させようと知らん顔。どうやら、浪士同士を噛み合わせて、それぞれの働きをみたり、力関係をみようという腹ですね。


貧乏くじをひかされたのは、先番宿割の役目をさせられている近藤勇で、彼が芹沢に火を消すよう依頼すると、芹沢は近藤に火で暖をとれと強制します。大きな焚き火の直ぐ近くで炙られる近藤勇なのですが・・・という展開。ここは、近藤勇の「貫禄勝ち」ですね。


そして三番面となる、最大のトラブルの元凶は、京都で幕府の役人や佐幕派の公家や公家侍を「天誅」と称して次々に血祭りにあげている「天誅組」です。


長州藩の久坂玄瑞から、将軍家茂の上洛の先遣隊として、浪士組が京へ向かっていることを知らされた天誅組の浪士たちは、自衛のため、先回りして浪士組の主だった面々を斬るために、人斬り以蔵こと「岡田以蔵」たち数十名が待ち受けることとなります。


第10巻 芹沢と沖田の別働隊、天誅組浪士を粉砕


第10巻の構成は


第60話 近道でごぜえます

第61話 それは、足許に・・

第62話 人斬りと侍

第63話 到着

第64話 出迎え

第65話 引っ繰り返す時


となっていて、浪士組を待ち構える「天誅組」の精鋭部隊に対し、いわば「噛ませ犬」的に、芹沢鴨率いる天誅組と、近藤勇率いる試衛館から別働部隊が仕立てられ、本隊の前を行くこととなります。


鵜殿や山岡ら幕臣たちにとっては、いると煩いので、殺されても惜しくないところを天誅組と戦わせようという魂胆ですね。


天誅組の作戦は、道案内を務める「儀助」という近隣の百姓を家族を人質に脅して、横道に案内して仕留めようという計画なのですが、怪しい気配を察した佐々木只三郎は、本隊の行軍を留め、別働隊だけを行かせる対抗策をとります。


そして、山中の行き止まりに誘導されてきた、芹沢、土方、沖田たちの別働隊は、数十人の天誅組の浪士たちに取り囲まれてしまいます。


数的には圧倒的な不利な状況での「戦闘」となるのですが、芹沢は沖田に対し、

  水戸と江戸、

  どちらがたくさん斬るか、数比べだ!

といった挑発をしてくるなど、まあ余裕たっぷりですね。それもそのはず、浪士組の別働隊は、後の新選組で攘夷浪士たちを震え上がらせた「人斬り」たちが集まっているので、たった8人なのですが、数十人の天誅組の浪士を圧倒することとなります。


この戦闘は、幕府側が芹沢や近藤たち浪士を盾にして本隊を守ったもので、作戦としては成功かもしれないですが、本隊と合流した芹沢鴨が佐々木只次郎に言う

  五人までを斬ったのは確かにわしだ

  だが、その先はわしの中におる何者かが斬った

という言葉が暗示しているように、幕府としては封じておけばよかったものを外に出してしまったのかもしれません。


この後、浪士組は御所や二条城に近い「壬生村」に拠点をおくのですが、ここにやってきた「清川八郎」が彼の本当に狙っていた仕掛けを動かし始めるのですが、そこは原書のほうで。

すこしばかりネタバレしておくと、幕府が浪士組を連れてきた「将軍の守護」と「京の治安維持」を真っ向から否定するものなのですが、これがどう転がるかは、次巻のお楽しみです。


レビュアーのひとこと

芹沢や沖田たちの浪士組の別働隊によって粉砕された天誅組の待ち伏せ部隊が倒れる現場に遅れてやってきた久坂玄瑞は「これでは、まるで同士討ちではないか」と慨嘆します。

幕府の浪士組も、天誅組ももともとはどちらも浪人あがりで、境遇的には共通するところも多かったと思われます。時代にうねりがぶつかり合うときはどうしようもなくでる被害かもしれませんが、なんとも凄惨なものでありますね。

「幕末維新」は一つの「内乱」として考えたほうがいいかもしれません。



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