薬丸とあおは「遣り手婆」の怨念に負けそうになるー安達智「あおのたつき」4(マンガボックス)

2021年4月20日火曜日

あおのたつき

t f B! P L

 江戸を代表する遊郭「新吉原」の羅生門河岸の角にある「九郎助稲荷」の奥の浮世と冥土の境にある「鎮守の社」を舞台に、売れっ子の時に死んだ花魁の霊「あお」と宮司の「楽丸」と社の主神・薄神の三人が、思いを遺して死んだ遊女の霊を浄化させていく、少しコミカルなオカルト時代劇本『安達智「あおのたつき」(マンガボックス)』シリーズの第4弾です。


前巻で生霊と化して妓楼の若い衆への邪恋を完成させようとする遣り手婆・おかねの「女郎蜘蛛騒動」の結末と、その結果、廓番の神具「鍵」を壊されてしまった楽丸と「あお」の奮闘が描かれます。


【構成と注目ポイント】


構成は


其ノ拾陸 女郎蜘蛛④

其ノ拾漆 女郎蜘蛛⑤

其ノ拾捌 郭番衆

其ノ拾玖 朧神白狐社①

其ノ弐拾 朧神白狐社②

特別編  しだれ桜


となっていて、前半の「女郎蜘蛛」は前巻で、遊女・八葉と妓楼の若い衆・兵次とを引き離すため、薬丸の力を借りて「八葉」に化けて兵次を誘いだすことに成功した「おかね」がその本心を明らかにして、女郎蜘蛛に変身します。


彼女は、兵次に惚れてしまったのですが、その想いを遂げるため、女郎蜘蛛の生霊となって兵次を取り込み、冥土で一緒になろうと企んだというわけですね。


吉原の「遣り手婆」というのは、遊女の中で花魁といった最高位の女郎ではないながら、郭の事情にも通じていて、良い客も悪い客もうまくあしらい、しかも女量ににらみがきく古参女郎がなるもので、この「おかね」も、もとは「宮戸」というそこそこ売れている女郎だったのですが、秘めた恋を同輩に邪魔されたために、「遣り手」となったという経歴の持ち主です。


「楽丸」や「あお」は、「おかね」を説得してもとの姿に戻そうとするのですが、彼女の「妄執」ははれることがなく、薬丸と同じ宮司仲間ながら武闘派の「恐丸宮司」に無理やり祓われてしまうことになります。


なかほどの「郭番衆」では、この「おかね」の女郎蜘蛛事件ですっかり自信をなくしてしまい、しかも、吉原の五つの稲荷社の宮司の使う神具の「鍵」を壊されてしまった「楽丸」が「あお」の言葉で再び、廓番の宮司として復活を目指す話となります。ただ「鍵」を神具として使うには、廓のほかの稲荷社の承認が必要なため、「薄神社」以外の神の承認を求めにそれぞれの神社で試験を受けることとなります。


後半部分の「朧神白狐社」は、まず羅生門河岸の突き当りの「伏見町」にある。この世では「明石稲荷」に相当する冥土の稲荷社の廓番の「怒宮司」の出す試験です。彼は、稲穂を使い、魂を欺く幻を見せる技を得意としています。


この宮司の出した試験は、「朧社」の五体の廓神が貝に化身して紛れ込んだたくさんの貝の中から、神の化けたものを見分ける、というものです。その試験の木底は、薬丸に「廓番」としての「心得」を教えるものでもありますね。


しかし、「怒宮司」の狙いは実は別のところにあって、薬丸宮司の従者となっている「あお」を薬丸が試験に取り組んでいるときに、「将棋」の勝負をもちかけ、彼女の本音を引き出し、従者を首にしようという魂胆です。

「あお」は怒丸のしかけた「将棋勝負」で薬丸宮司の従者となった理由を少し語り始めます。そして、「怒丸」のしかけた罠にまんまとひっかかりそうなのですが・・・という展開です。


すこしネタバレしておくと、吉原の女郎のトップである「花魁」の教養を見くびってはいけないというところですね。


最終話の「しだれ桜」では第一話で祓われた巨大な顔の怨霊「富岡」と、彼女と同じ廓にいた「きよ花」花魁とが出会った幼い頃の話が収録されてます。二人は同じ頃に北関東の村から吉原に売られてきていたようなのですが、その時の二人の心のつながりが「しんみり」させる話に仕上がっています。


【レビュアーから一言】


本シリーズの「あお」が三浦屋で務めていた花魁は、遊郭の女郎の中のトップ中のトップで、揚代という指名料は一回、1両といわれていますので今の価格では、15万円〜20万円ぐらいかかかる上に、なじみになるまでには最低3回は通わないといけなくて、それには酒・料理・芸者や幇間代といったものの代金かかりますから、花魁と同衾できるまでには100両×3回、つまりは500万円ぐらいかかったらしいです。


(江戸時代の吉原の花魁遊びについては「今日は何の日?徒然日記」の”江戸で豪遊〜吉原で花魁遊び”で解説されてます)


これだけの稼ぎある逸材である花魁は幼い頃から、古典、茶道、和歌、三味線、囲碁といった高い教育を受けるのが常で、中堅の遊郭の花魁とはいっても「あお」も相当の教養の持ち主で「将棋」もかなりの腕前であったことは間違いないようです。

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