戦前の満州を舞台に、新たなクライム・ストーリー始まる=門馬司・鹿子「満州アヘンスクワッド 1・2(ヤングマガジンKC)

2022年12月29日木曜日

満州アヘンスクワッド

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 第二次世界大戦前、中国東北部に日本政府の影響下で建国された「満州国」。「五族協和」のスローガンのもと繁栄をしているようにみえて、そこは日本陸軍の関東軍をはじめとする「日本」だけではなく、革命政権から追われた「白ロシア」や、中国本土で日本の侵略に抵抗する「中華民国政府」、さらには闇の世界の支配権を争う「青幣」や「ロシアンマフィア」が蠢く弱肉強食の世界です。その「満州国」を舞台に中華アヘンの密売による儲けで、弟と妹と一緒に日本へ帰ることを目指す少年・日方勇を主人公にした、クライム・ストーリーが『門馬司・鹿子「満州アヘンスクワッド」(ヤングマガジンKC)』です。


今回はこのシリーズのスタートとなる第1巻から第2巻までを紹介しましょう。


主なキャスト


日方勇


日本陸軍に徴兵され、満州の関東軍に一兵士として配属され、戦闘に従事。関東軍が占領したチャハルで、死にそうになっていた幼い子どもにかけよったところで、その子から狙撃され右目を負傷して、満蒙開拓義勇軍に配属。

そこで、高濃度のアヘン精製の技術を習得したことをきっかけに、青幣のボスの三女・麗華と知り合い、彼女とともに巨大なアヘン密売組織をつくりあげていきます。


麗華


当時の中国の闇世界を支配していた「青幣」の三大ボスの一人「杜月笙」の三女。高濃度のアヘン「真阿片」を売りに来た「日方勇」を奇貨として、属していた組織を裏切り、独立した犯罪組織をつくろうと企んでいる美貌の女ボスです。


長谷川圭人


若くして昇進した関東軍の憲兵隊伍長。関東軍に反抗したり、関東軍の資金源を脅かす勢力の摘発に辣腕を振るっている人物です。拷問による尋問がお得意で、勇と麗華を捕まえようと執拗に狙っています。


あらすじと注目ポイント


第一巻のあらすじと注目ポイント


構成は


第一話 満州の男

第二話 青幣の女

第三話 王になる

第四話 兄の覚悟

第五話 顧客

第六話 勇の選択


となっていて、冒頭では昭和十二年の満州。関東軍に徴兵され、入営する本シリーズの主人公「日方勇」の姿から始まります。新兵としてチチハル攻撃に参加しているのですが、占領後のパトロールで斃れていた少年から狙撃され、右目を負傷して退役。満蒙義勇軍の農場に配属されることとなります。


この農場で同じ農業兵仲間の「陣内茂」という老兵が密かに栽培している「阿片芥子」を見つけたことから、彼の運命は急変していきます。

この秘密を守るため、勇を殺そうとした陣内を返り討ちにして殺害。陣内の栽培していた阿片芥子から高濃度のアヘンを精製して、当時、中国の闇世界を支配していた「青幣」の地元組織にそれを密売しようとして、「青幣」の三大ボスの娘「麗華」と知り合うこととなります。


「麗華」はここの地域の組織を任されていたのですが、前々から父親から独立して、それにとってかわる闇組織をつくることを夢見ていていたところに、その絶好の武器となる「アヘン」を自家精製できる「勇」が現れ・・という展開です。


第一巻では、肺ペストにかかって亡くなった母親に代わって、幼い妹弟の面倒をみるため、独学で習得した高濃度のアヘン精製の技術を武器に、麗華と手を組む「勇」の史型が描かれます。

しかし、それはアヘン売買を財源としている日本の「関東軍」や、中国の闇組織「青幣」の追及を受けることでもあって・・という展開です。


第二巻のあらすじと注目ポイント


構成は


第七話 売人

第八話 家族のために

第九話 刺客

第十話 新天地

第十一話 番人

第十二話 贈り物

第十三話 密輸

第十四話 仲間

第十五話 歌姫

第十六話 籠の中の鳥


となっていて、新しい闇組織をつくるため仲間となった麗華と勇は、奉天で「杜月笙」の阿片密売の売人をしている少女「リン」のスカウトに乗り出そうとしています。テディベアをかかえる「リン」はいたいけな少女の雰囲気ながら、凄腕の「売り子」で、その秘密は、一度見たらすべてを記憶してしまう「瞬間記憶力」と「観察力」にあります。

彼女は親の借金を返すため、「杜月笙」の組織に属していて、親に再会することを夢見て、最初は麗華の誘いを断るのですが、両親は「リン」を組織に売ってすぐ、日本に逃亡しようとして組織に射殺されていたことを知って・・という展開です。


パーティーに加わる仲間が増えていく、ドラクエ的構成を採用している本シリーズなのですが、ここで「リン」が勇と麗華の仲間になっていきます。ただ、仲間になった理由に、リンのある誤解があるのですが、そこは本書で確かめてくださいね。


一方、青幣のボス「杜月笙」によって、奉天の阿片窟を潰した日本人を始末するために雇われた腕利きの殺し屋「仕立屋・ロン」は流しの理髪師に変装して、勇の妹弟のセツと三郎のもとへ忍び寄っています。


血塗られたロンの「道具」を見つけた二人は彼から逃れるために、秘策を講じ、ということでセツと三郎の奮戦については原書のほうで御覧ください。この殺し屋の襲撃によってセツと三郎も勇の今の商売の中身を知り、「熱河」に拠点を移した勇の「農場兼精製工場」の手伝いをしていくこととなります。


さらに、広大な芥子畑の護衛をするため、麗華は熱河に拠点をおくモンゴル族に協力を仰ぐことを決めます。巨額の契約金に、モンゴルの長老たちの心も動くのですが、勇のある不用意な行動が、彼らの怒りをかい、話が潰れそうになるのですが・・というあたりは原書で。まあ、このトラブルがもとで、4ヶ国語ができるバートルがパーティーに加わることになるのは「怪我の功名」というところでしょうか。


レビュアーの一言


この物語の舞台となる「満州国」の民族政策のスローガンは「五族協和」といって「和・韓・満・蒙・漢」の五民族が協調して暮らせる国を目指す、というもので、これは清朝の末期から中華民国にかけて使われた中国の「満・蒙・回・蔵・漢」を変形したものと言われています。

「和」は日本民族、「韓」は韓民族、「満」は満州族、「蒙」はモンゴル族、「漢」

は漢民族、なのですが、後の標語の「回」がウイグル族、「蔵」はチベット族ですね。

このあたり、それぞれの国の勢力図を見るようです。


ちなみに、このシリーズでパーティーのメンバーとなるのは、日本人(勇とリン)、中国人(麗華)、モンゴル人(バートル)、ロシア人(キリル)、満州人(クワン)の五族です。

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