砂漠の中で、両方が想い合っていながら、わずかな行き違いから別れてしまった、スミスとタミルの再会である。再会自体は先巻の10巻で果たしているのだが、今巻は再会するまでのアミルの旅であるとか、再会してからの二人の行く末について描かれるのが本書です。
【収録と注目ポイント】
構成は
第七十話 寒中歌
第七十一話 あれから
第七十二話 約束
第七十三話 湿板写真
第七十四話 前日
第七十五話 南へ
第七十六話 時計
第七十七話 アンタリヤ
となっていて、第七十話は、このシリーズで時折、挿入歌っぽく入れられる「ポエム」のような短編で、メインとなるのは、鷹好きのティレケが、カルルクが冬営しているところまでやってくる話。物語が始まる前の、食前酒みたいな味わいですね。
そして、第七十一話が、スミスと出会ってから、別れ、その後、彼を追いかけてアンカラまで行くタミルの物語で、彼女のひたむきさが愛らしい。さらに、彼女の憂い顔やら泣き顔やらがたくさんでてくるのが、本話なのだが、美女はどんな顔をしてもよいですなー、ということを実感しますね。
ここはタミルがアンカラでスミスを見つけ、走っていき、袖をひっつかむあたりがクライマックスとなります。
ここで表彰しておきたいのは、タミルを後妻にもらった旦那さんで、いくら美女に泣かれたからといって、この善意に溢れた行動はなかなかできることではないですね。
第七十二話から第七十五話、第七十六話は、再会した二人がこれからどうするかが描かれる数話。ネタバレを少ししておくと、今回は「悲しい別れ」といったものはありません。ロシア近くの黒海周辺からペルシアの内陸を通って、アラル海の近くから、カルルクたちの住むブハラを目指す旅に出かける最初のところが本巻である。注目ポイントは、彼らの旅に同行させる「写真機」の数々で、写真草創期の、撮影の姿が興味深いです。
さらに、スミスと旅に出たタミルが見せる「笑顔」がなんとも可愛いいですね
第七十六話は、タミルと別れた後、砂漠へ投げ捨てたスミスの「時計」がたどる変転の旅である。「器物」も機会があえば出世するという典型のような話です。
【レビュアーから一言】
まあ、こうなるよね、という予感はあったのだが、やはり、想い合う二人の男女が再開することは、これからどうなるかわからないにせよ、なんとも目出度い。
19世紀末の戦乱のニオイのする「中央アジア」をヨーロッパ人と女性という、トラブルに巻き込まれる確率がバカ高い二人の旅がどうなるか、まずは期待いたしましょう。
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