幕末の人斬り、田中新兵衛・岡田以蔵、裏切られて死す = 「ちるらん 新撰組鎮魂歌」5~6

2021年12月5日日曜日

ちるらん

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 幕末を彩る「新撰組」を、副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズの第5弾と第6弾。


前巻で、会津藩の支援を受けて「壬生浪士組」を立ち上げた土方たちだったのですが、今巻で初めて隊内からでた「裏切り者」の粛清を迫られます。さらに、幕末の京都を震撼させた人斬りたたちにも、粛清の嵐が降りかかります。


あらすじと注目ポイント


第5巻 壬生浪士組内の裏切り者を粛清せよ


第5巻の構成は


第二十一話 凶人対決

第二十二話 裏切り者

第二十三話 仇の正体

第二十四話 名もなき花

第二十五話 許されざる者


となっていて、長州藩から「琴」を逃した土方へ幕末四大人斬りの一人「田中新兵衛」が襲いかかります。しかし、土方の救援にかけつけた斎藤一ほか新選組のメンバーのおかげで土方と琴は九死に一生を得ることとなります。


この後、信じてきた久坂玄瑞はじめ長州勢に裏切られた「琴」は自決を図るのですが、松平容保によって止められます。容保が琴に向かって言ったのは、彼女に腕を落とされた会津五武の一人・望月安久の「武」にかける思いで・・という展開です(ただし、望月は世をはかなんで死んではいませんので念の為)


ここで話は変わり、会津側から、今まで会津藩士たちが襲撃されてきたのは市中見廻りの道順を倒幕側に漏らしている者がいるらしい、という情報が入ります。


会津藩が突き止めた裏切り者の隊士は「阿比留鋭三郎」。試衛館時代から、近藤や斎藤一と一緒だった仲間なのですが、彼が慕っていた兄を殺した者の居場所を教えるという、長州藩の久坂玄瑞の誘いにのって情報を漏らしていたようです。


そして、久坂からの情報で突き止めた「仇」の正体はなんと同じ「壬生浪士組」の・・ということで、阿比留が返り討ちにあった後も禍根が残りそうな筋立てになってます。この阿比留の仇の存在が、後になっておきる浪士組内の血を血で洗う闘争劇の原因の一つでもあるように思います。


巻の後半では、尊王派から転向した公家・姉小路公知の殺害の嫌疑をかけられ、幕府・薩摩、長州から追われる身となった田中新兵衛が壬生浪士組の屯所に殴り込みをかけてきます。薩摩の尊王派の指示に従って人斬りを行ってきたのが、突然使い捨てをされたため、浪士組の隊士を道連れに死に場所を求めてやってきた、というところですね。ここから、土方と田中新兵衛とのバトルが開始されます。


第6巻 岡田以蔵は土方に再会。人斬りからの脱却を目指すが・・


第6巻の構成は


第二十六話 さまよう魂

第二十七話 人斬り以蔵

第二十八話 漢の約束

第二十九話 さらば友よ

(特別編)バラガキ


となっていて、まず冒頭では、人斬り・田中新兵衛と土方歳三との死闘の決着がつくことになります。


史実では、薩摩藩士・田中新兵衛は捕縛され、取調べ中に自死したことになっているのですが、本書では尊王攘夷派の久坂たちに利用された上に用済みとなると見放された結果、土方たちに斃されたこととなっています。


この「人斬り」の無残な運命は、土佐藩出身の岡田以蔵の身にもおきています。彼は、武市半平太たち土佐の尊王派の指示で、土佐藩の重役・吉田東洋を暗殺したことをきっかけに「人斬り」となったのですが、この陰には武市半平太の企みがあったように描かれていますね。(半平太ファンの方々スイマセン)


そして京都で人斬りを続ける以蔵は、「人斬りの人形」として扱われた田中新兵衛の姿を見て、江戸にいたときに、日本一の剣士の座をかけて土方と再び立ち会う約束をしたことを思い出します。この後、再会した二人は再び剣を交えることになるのですが、今回も引き分けに終わってしまいます。


ただ、1年後、土佐に送還された岡田以蔵が、かつての師であった武市半平太の自決の指示に従わなかったのは、この土方との再会が影響していたのかもしれません。


後半の特別編では、土方歳三の幼い頃のエピソードが描かれています。元盗賊の頭目で人目を忍んで暮らしていた寺子屋の師匠に歳三が何を教わったか、は原書のほうでお確かめを。


レビュアーの一言


幕末の四大人斬りというと、田中新兵衛、岡田以蔵、河上彦斎、中村半次郎の4人とされているのですが、この6・7巻でそのうちの二人が明治維新を見ないまま死亡しています。そのどちらもが、暗殺を支持していた上層部に「人形)扱いされた上での死なのが、暗殺者の悲劇を感じさせるところです。

残る中村半次郎、河上彦斎は明治維新後も生き延びているのですが、中村半次郎は西南戦争で西郷隆盛に殉じて戦死、河上彦斎は危険な攘夷論者として、広沢参議暗殺事件や大村益次郎暗殺事件、二卿事件の関与などを疑われて処刑されており、田中や岡田同様の悲哀を覚えるところです。

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