古代ローマ時代のが博物学者「プリニウス」をメインキャストにすえて、当時の地中海世界の様子や、ネロ時代のロー目帝国の盛衰を描いた本シリーズも第8巻目となった。
ローマの大火の後の混乱はようやく静まってきたのだが、帝国の支配権を手に入れるために、ティゲリヌスの暗躍は続いていて、まだまだ「泰平」とはいえないローマ帝国とそんな情勢は知ったこっちゃないと北アフリカからクレタ、ロードスへの旅を続ける「プリニウス一行」が描かれるのが本巻である。
【収録と注目ポイント】
収録は
「アレクサンドリア」
「レヴィテ」
「ティゲリヌス」
「ドクニンジン」
「クレタ」
「ミノタウルス」
「ドムス・アウレア」
となっていて、前巻でエジプトのピラミッド内を調査したプリニウスは、この当時の西洋における文明と文化の中心地である「アレクサンドリア」に到着する。到着してすぐに驚かされるのが、「荷物の書物・書簡・記録等文字の書かれているものは規定によりすべて没収」というシステムで、もちろん没収してそのままというわけではなく、写本をつくって写本を渡すシステムである。
自筆の文字情報がほとんどであった当時、アレキサンドリアの図書館のレベルを高めようとすれば、こういう方法しかなかったのだろうが、原本を集めていたせいで、損の後のアレキサンドリアの図書館の焼失や略奪によって本物が失われた原因ともいえるのだろうな。
話のほうは、セネカがネロに疎まれて自死を命じられるし、ネロの后のポッパエアに子供が出来るが・・・、とローマ帝国の「平和な毎日」がだんだんと崩れていく。ローマの大火の仕掛け人のユダヤ人も捕まったり、とだんだんとネロに対するローマの人々の目が冷たくなっていく様子が伺えますね。そんな精神の不安定さを回復させるためであろうか、ネロによってプリニウスの捜索が命じられたりしているので、プリニウスがプラプラと放浪できるのももう少しの期間なのかもしれない。
なお、ネロに囚われていたブリタニア人奴隷のフラヴィア(プラウティナ)は地震のおかげで、牢から脱出できる。もっともこれがネロの錯乱を助長して、ポッパエアの不幸を呼び寄せるという筋立てなので、この娘がいなくなるとネロの運勢も下向きになるということですかね、
このほか、アレクサンドリアを離れて、クレタ島に移ったところでミノタウルスの自動人形に遭遇したり、と古代ローマの怪しげなところを味あわせてくれる。アトランティスの伝説らしいことを、一緒に旅をしているフェニキア人の子供がつぶやくので、ここはチェックしておいたほうがよいかもね。この子が水際で拾う古い硬貨に秘密があるかも。
【レビュアーから一言】
ローマの大火後ということもあって、帝国を揺るがすような大きな事件はないが、帝国簒奪の陰謀が深く進行する、といった感じである。
ネロをとことん愛しつつも、よい扱いをされなかったポッパエアは、「悪女」という評判が高いのだが、本作を読む限り同情の余地はあるような気がするのだが、いかがだろうか。
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