新潟から山形へ。マリーズからの不穏な手紙の内容は? ー 佐々大河「ふしぎの国のバード 4」(ビームコミックス)

2019年5月6日月曜日

ふしぎの国のバード

t f B! P L

 イザベラの旅は、新潟にしばらく滞在し、そこから越後街道を経て山形へ。さらには山形から青森へと向かっていくのだが、本巻は新潟から山形までの道中が描かれる。旅の記録以外に、イザベラの通訳・伊藤が前の雇い主のチャールズ・マリーズに出会った時の回想譚と、英国公使・ハリスの妻・ファニーが日本に訪れている英国・米国の実豪華たちを翻弄する様を描いたエピソードが描かれる。


チャールズ・マリーズは、凄腕のプラントハンターという設定になっっているのだが、実在の人物で1877年と1878年に日本に滞在し、北海道を中心に植物の種子、昆虫を集めていますね。で、この「プラントハンター」という職業、17世紀から20世紀中頃にかけてヨーロッパの活躍した職業で、食料や香料・繊維等に使われる植物や観賞用植物の種子を探して世界中を旅して集めて回っていた人々なのだが、日本でも最近では「情熱大陸」にもでた西畠清順さんが有名ですね。そういえば、ゴルゴ13にも「種子探索人」という、チベットを舞台にしたプラントハンターを扱ったのがありましたね。


【構成と注目ポイント】


構成は


第15話 伊藤の記憶

第16話 越後街道

第17話 山形①

第18話 山形②

第19話 ファニーの憂さ晴らし


となっていて、第15話の「伊藤の記憶」で、伊藤が前雇い主とのことを思い出すきっかけは、新潟の植木市で「変化朝顔」を見たのがきっかけ。普通のイギリス人だったイザベラは、非常に驚くのですが、プラントハンターのマリーズからは「単なる突然変異」で、「繁殖能力のない」ビジネスにならない代物だとさんざんな扱いですね。「変化朝顔」は江戸時代一大ブームになったのだが、明治10年頃にも再びブームになっていたらしいので、ちょうどイザベラが来日した頃に符合しますね。


新潟を離れて山形へ向かう「越後街道」は、大雨に降られたり、宿屋では害虫やネズミに悩まされたりということはあるのだが、第3巻の「会津道」に比べれば、開けた街道である。この道中で出会う、娘歩荷がイザベラにサインをねだるのだが、彼女が「文字」に興味があって、必死になって勉強するのは

これからは若い娘でも

「勉学のために異国へ渡るような新しい時代だ」

とお寺の住職に聞きました

ということから。

「私のような馬鹿でも、辛く苦しい日々を超えて、少しでも、前に進みたい」とイザベラに打ち明けるところは健気である。


まだ開国したばかりの「未来」へと希望を持って進む時代、司馬遼太郎さん風にいえば「坂の上の雲」を追っかける時代の「明るさ」を見るようですね。


第17話、第18話の「山形」で、伊藤が

開港地でもないのに、これほど文明化しているとは・・・

山形恐るべし

というところは、おそらくはこの地の初代県令・三島通庸の方針で公共施設の洋風建築化を進めた現れでしょうね。山形市や山形県のHPをみると観光名所にもなっているようです。


こうした西洋建築は、当時の日本が西欧に追いつく象徴のものだっのだろうが、物語の中盤頃、未だちょんまげ姿の人力車夫を逮捕しようとする巡査とイザベラが対立するところで、巡査がイザベラに腹を立てたのは

霊液云々は

あくまで人々を納得させるための方便であって

実際は西洋諸国と対等な関係を結ぶため

必死に過去のものを捨てようとしているのに

西洋人であるバードさんに、それをとやかく言われれば

腹が立つのも当然ですよ

と伊藤が解説する。これはこの巡査だけでなく、この時期の多くの役人や知識階層に共通する複雑な思いだったのだろう、と推測するのである。


後半のところで、楯岡の宿場で出会った「口寄せ」の老婆が「今すぐ危ねえ旅ばやめろ、さもなくば目の前で人がおっ死ぬことになるず」という不吉な予言をするのだが、これが当たるかどうかは次巻以降。とはいうものの、「イタコ」に代表される「巫女」の文化が色濃く残っていたことがわかるエピソードでありますね。


険しい山越えや、雨に打たれての道行きなど、脊髄に爆弾を抱えるイザベルの状態はあまり良いとはいえない。そんな彼女を心配してか、伊藤が案内する「病院」の視察が、当時の先端医療と日本の家族看護の混合という「混沌」を見せていて面白い。


『ベッドのような高い所に寝かせたら、落ちて骨折してしまう』といったやりとりが平気であるのが良いですな。


【レビュアーから一言】


最終話の「ファニーの憂さ晴らし」はイギリス公使・パークスの妻である「ファニー」のお話。彼女が、横浜のボートレースで、優勝チームにメダルを授与するという役目なのだが、ゴマをすってきたり、他人の陰口だらけのレディーたちなどに鬱憤を募らした彼女が何をやったか、というのは原書で確認してくださいな。

 彼女もイギリスの高等法院の初代副長官であったトーマス・プラナーの孫娘ということで、当時のセレブであることは間違いない。さぞかし鼻っ柱も「お強かった」でありましょうね。

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