道真は「明石」の地で新境地に至る = 灰原薬「応天の門 3」(バンチコミックス)

2019年7月24日水曜日

応天の門

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 前巻で、兄の死の真相に気づいてしまった道真なのであるが、その死に藤原北家の一族が絡んでいたことにより、一挙に宮廷の主導権争いに巻き込まれる様相を呈してきた「応天の門」シリーズ。


まあ、史実によると、菅原道真が政権争いをしたのは、藤原基経の長男の時平なので、ここらあたりから抗争の基がまかれていたのかもしれないですね。


【収録と注目ポイント】


収録は


第十一話 染殿の后、鬼に乱心せらるるの事 一

第十二話 染殿の后、鬼に乱心せらるるの事 二

第十三話 染殿の后、鬼に乱心せらるるの事 三

第十四話 道真、明石にて水脈を見る事

第十五話 在原業平、数多の災難に遭う事 一


となっていて、道真が兄の死の真相に気づいたところはちょっと置いておいて、まずは、清和天皇の母・藤原明子こと染殿が、清和天皇の枕元に生霊となって現れるところからスタート。


 もちろん、このシリーズは怪奇譚ではないので、生霊ではなく、生身の人間であるのだが、謎は実の母親の染殿が、実父が今をときめく藤原良房であるのになぜ、といったのが謎の始まり。この謎の周辺で、

この都こそ魑魅魍魎の跋扈する伏魔殿にございますれば

この真済、お傍にて悪しきものより、御家名をお守りいたしましょう

なにより染殿様にはまだまだご祈祷が必要かと存じますが・・

と藤原氏に取り入ろうとする「坊主」が出現、というのが、祈祷が大流行の平安時代らしい。


 もっとも、権力に食い込もうとしてすり寄ってくるモノたちでも、平気で踏み潰していく辺りが、「藤原北家」のすさまじいところでありますね。

 この染殿の秘密を道真の父親が目撃することになるのだが、良房・基経に脅されて黙秘。


こういう積み重ねが、道真を「反藤原」に追いやっていくんでしょうね。


第十四話は、兄の死の真相に衝撃を受けた道真が、得業生の試験を前にして出奔する話。「なるべく遠くへ行く船にのせてくれ」と闇商売の「昭姫」に頼みこんで着いたのが「明石」なのだが、ここで、再起のきっかけをつかんでいく。


再起のきっかけとなるのは、明石で都から流れてきたらしい母子に出会うのだが、その地の「井戸」が枯れてきているということで、人柱にされそうになっている娘・ハツを救おうと、新しい井戸を掘り当てるところから。


郷司をしているハツの父親の

口先だけでは人は動かん

村全員の命を預かるなら、まず自分が覚悟を見せねばならん

それはわしの郷司としてに務めじゃ

こんな発言に勇気づけられた、というところでしょうか。

 さらには、この都から流れてきた母親に以前、業平がちょっかいを出していた、というおまけ話もついてきます。


第十五話の「在原業平、数多の災難に遭う事 一」では、道真の許嫁の「島田宣来子」登場。この女性は史実でも道真の妻となっているのだが、道真に対し、「げぇっとは何じゃこらァ、逃さんぞ道真」と言うような、お転婆なお嬢さんであったかどうかは史実ではわかりません。


話の方は、昔の女に恨み言を言われる夢を見てから、牛車の女の髪の毛が絡みついていたり、スズメバチに襲われたりといった怪異に襲われる業平を助ける話の発端のところ。謎解きは次の巻を見よ、という筋立てで、今巻では業平に女性の陰に怯えるところで終わっております。


【レビュアーから一言】


許嫁の「宣来子」の登場で、白梅だけでなく、道真の回りが賑やかになってきましたね。ただ、宣来子の父親の島田忠臣は、道真の学問の師であるとともに、藤原基経の忠実な臣下でもあるので、これからこのあたりが揉め事の原因になってくるのかもしれないですね。

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