織部の遺した「へうげ」はめんめんと続いていく ー 山田芳宏「へうげもの 25」(モーニングKC)

2019年8月12日月曜日

へうげもの

t f B! P L

 茶人大名・古田織部の戦国末期から江戸時代初期まで、武人から転じて「へうげ」を追い求めた男の物語が、今巻で完結します。


シリーズの後半は、豊臣と徳川との融和を図るために悪戦苦闘している姿が目立っていて、とうとう、その努力も実らず、豊臣家の滅亡を迎えてしまうのですが、実は・・といった秘史・野史的なところもしっかり盛り込んであります。このあたりは、既巻で、信長が非業の死をとげた本能寺の変の犯人を「秀吉」とした本書らしいところが随所にみられる仕上がりとなっています。


【構成と注目ポイント】


構成は


 第二百六十三席 BOSSA NOVA

 第二百六十四席 Be Free

 第二百六十五席 風神RYDEEN

 第二百六十六席 DRAGONへの道

 第二百六十七席 Greatest GIFT

 第二百六十八席 返事はいらない

 第二百六十九席 RIDE on TIME

 第二百七十席 FRUTA BoA

 第二百七十一席 ROUTINE’S MAMA FUNK

 第二百七十二席 Summer Breeze

 第二百七十三席 棕櫚の影に


となっていて、時代的には大坂冬の陣が終結した直後、1615年5月10日の午後、大阪城の山里丸から秀頼らしき焼死体が発見されるところからスタート。


当然、この死体が本物かどうか徳川方も疑心暗鬼に陥るのだが、秀頼一族の捜索は続けながらも、徳川幕府は、織部が丹精込めて育て上げた美濃焼や唐津物を破棄させたり、美濃窯で織部好みの器を焼くことを禁止したり、豊臣を助ける「人」だけでなく「文化」そのものを抹殺しようとするところに、家康の「へうげ」に代表されるものへの深い怨恨を感じますね。


ただ、こうした「文化の撲滅」というのは思ったより手強いもので、

色付けんなら雷神は江戸城の城

風神は緑釉の緑に決まってらァな

タイマン勝負してるように描きゃァ、最高に良くなるぜェ

といった感じで、絵画で「武」でもって戦を終わらせようとした徳川に対し、「風流を以て 戦を終わらせようとした者がいた」ことを表現しようとする者がいるし、徳川方の中にも、松平忠輝のように

ハナからそれがしには野心も政の才もございませぬで

もし、改易されるようなことになっても

一介の数寄者として楽しみますれば

その際には駄歌でも詠んでお贈りいたします

とうそぶく武将(もっとも、松平忠輝は妻の五郎八姫を通じて、奥州の姦雄・伊達政宗とのつながりもあるようなので、字義どおりにとってはいけないかもしれませんが)や、

父上(家康)は乱世の覇者でありますが

太平の施行者、足り得ませぬで

と、家康のやり方がこれからの時代にマッチしないことを感づいている秀忠のような二代将軍も出てきているので、織部の努力も全くムダではなかったように思えます。


ただ、こういう事態になってくると、助命にすがらず「粋」を通そうというのが古田織部という人物で、処刑を受け入れ、その最期の姿を多くの者に見せることで、自分の価値観を後世に残そうとするあたりに、まだ衰えない曲者ぶりが見えますね。


 もっとも、家康のほうも曲者ぶりでは負けていなくて、当初、介錯を命じられていた小堀遠州を押しのけて、自ら乗り出してきて、武と文の両巨塔の対決が繰り広げられることになります。


そして、最後の最後で、織部渾身の「へうげ」が炸裂することになるのですが、詳細は原書で確認してくださいな。


【レビュアーから一言】


シリーズの最後は、織部の処刑後、この時代をリードしてきた織田有楽斎、北の政所、徳川家康の死去、そして、織部の残滓を求めて九州・琉球まで旅をしていく岩佐又兵衛と宗箇の姿で終わっていくのだが、当方が注目したのは

秀忠にもって来させい

あやつなら知っておる

わずかな毒に効能を・・・な

という徳川家康の死去の場面の言葉で、二人の勝負は「古織」の勝ちとなったように思うのですがどうでしょうか

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