終末の世界を、二人の少女はどこへ行く = つくみず「少女終末旅行」(新潮社)

2019年8月15日木曜日

etc

t f B! P L

 ディストピアものの小説やコミックは、終末ヘ向かう戦争や異生物との闘争を描くものと、終末が訪れた後に残された者の物語を紡ぐものとに大別できるのだが、本書は後者の種類に属している。

 その中で、本書を特徴づけているのは、廃墟となった都市群の中を、女の子二人が、「ケッテンクラート」という軌道車に乗って延々と旅をしていく、という設定である。


「ケッテンクラート」というのは、もともとは1939年に、ドイツの自動車メーカーによって開発された、前輪が車輪で、後輪がキャタピラになっているハーフ・トラックで、泥濘の多いポーランドやハンガリーといった東ヨーロッパ戦線で使われたものであるらしい。本書では、文明崩壊後、古い文献をもとに復元された、という設定になっているようですね(第一巻の最後に「図解」がありますね)。


【構成と注目ポイント】


構成は


01 星空

02 戦争

03 風呂

04 日記

05 洗濯

06 遭遇

07 都市

08 街灯


となっていて、まずは「ミナ」と「ユーリ」という二人の少女が大きなビルの中を、復元ケッテンクラートで外への出口を探して走行しているところからスタート。


雪が降っているところを見ると、北方地域であると思われるのだが、終末が核戦争によるものであるなら、核の冬が長く続くはずだから断言はできませんな。


で、この都市群を二人で旅していくのだが、携行食糧を見つけた時に独り占めしようと争うあたりに人間が戦争を起こす「原点」のようなものを垣間見せたり、

記憶は薄れるから

記録しておくんだよ

と「記録」「記憶」が人間としたあるために重要であることを教えてくれたり、とシュールながらも「哲学的」な仕上がりの漫画となっている。

 ただ、食欲旺盛で肉体派の人物にとっては「記憶なんて、生きるジャマだぜ」といったふうに「記憶」は余計なものであるようですね。もっとも、「余計」というのは、「忘れたい」と同義かもしれんですが・・・。


本巻の最後の方では、カナザワという、地図をつくっている男と出会います。遺跡として残っているビルのエレベーターに乗っているところで、地図を落としてしまい落胆する彼に対し、「意味なんかなくてもさ、たまにはいいことあるよ」というユーリの言葉が、これまた哲学的でありますね。


【レビュアーから一言】


終末マンガというと、グロかったり、スプラッター系でちょっとなーというものもあるのだが、このシリーズは、すでに終末を迎えててから次巻が経過した後の世界を描いているせいか、妙に「静か」な印象が強い仕上がりですね。小説でいうと、筒井康隆さんの「幻想の未来」の最後のあたりの、海と陸が融合していく中を、二人の少女が旅して行っているような感じであります。

このブログを検索

ブログ アーカイブ

ラベル

3月のライオン (7) 7人のシェイクスピア (17) etc (29) アウトドア (6) あおのたつき (9) あかね噺 (4) アサギロ (13) アド・アストラ (6) アルキメデスの大戦 (20) アルテ (9) イサック (9) イノサン (9) ヴィンランド・サガ (10) ヴラド・ドラクラ (4) グルメ (12) こざき亜衣 (2) スポーツもの (1) つぐもも (9) ハコヅメ (8) パパと親父のウチご飯 (14) ハンティング (3) ヒストリエ (11) フィッシング (7) ふしぎの国のバード (9) フラジャイル (14) プリニウス (12) ブルーピリオド (5) へうげもの (20) ベルセルク (13) ミステリと言う勿れ (8) ゆるキャン△ (12) リアル (4) ローズ・ベルタン (9) 阿・吽 (3) 医療コミック (8) 応天の門 (18) 乙嫁語り (12) 怪獣8号 (4) 鬼滅の刃 (1) 宮下英樹 (3) 極東事変 (2) 軍靴のバルツァー (9) 高橋葉介 (3) 高橋留美子 (2) 山と食欲と私 (11) 重版出来 (7) 諸星大二郎 (2) 信長を殺した男 (1) 信長協奏曲 (6) 新九郎奔る! (5) 推しの子 (5) 星野之宣 (22) 戦記もの (5) 惣領冬実 (1) 葬送のフリーレン (6) 達人伝 (7) 断頭のアルカンジュ (4) 賭ケグルイ (28) 土山しげる (4) 東村アキコ (10) 卑弥呼 (8) 舞妓さんちのまかないさん (7) 紛争でしたら八田まで (7) 碧いホルスの瞳 (1) 亡国のマルグリッド (4) 忘却のサチコ (7) 幕末 (11) 満州アヘンスクワッド (9) 矢口高雄 (2) 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (10) 憂国のモリアーティ (10) 歴史コミック (37)

自己紹介

自分の写真
日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

QooQ