センゴクの「四国の戦」と秀吉の勝家との対決、ここに決着 = 宮下英樹「センゴク一統記」12

2019年12月4日水曜日

宮下英樹ーセンゴク一統記

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 落ち武者から国持大名へ、その後、戦で大敗北して改易。そこから復活して、徳川将軍家の相談役まで昇進した戦国一のジェットコースター人生をおくった「センゴク」こと「仙石秀久」の半生記が描かれる「センゴク」シリーズのSeason3「センゴク一統記」の第12巻。


前巻までで、四国へ渡って長宗我部元親の牽制を図っていたセンゴクが、「引田の合戦」で長曾我部軍と激突した結末と、賤ヶ岳で柴田勢と膠着状態にあって秀吉勢がいよいよ柴田勢と決着をつける「賤ヶ岳の合戦」の顛末が描かれるのが本巻。これにより、秀吉は織田家の筆頭家老にのし上がっていくことになりますね。


【構成と注目ポイント】


構成は


VOL.99 命の使い途

VOL.100 夢の行き場

VOL.101 岐路

VOL.102 鬼玄蕃

VOL.103 抜山蓋世

VOL.104 物憂き家路

VOL.105 女の希み

VOL.106 北ノ庄の一夜

VOL.107 餞別


となっていて、前巻に引き続いて、四国の引田で、長宗我部元親の「箱網の計」によって、長宗我部軍に取り囲まれ、壊滅状態になったセンゴクの様子から今巻はスタート。


森三人衆のうち、仙石久村、仙石久春はセンゴクの退却を助け討ち死という事態を迎えます。残った一人・仙石久武らの殿軍でようようのこと窮地を脱することができます。

とんでもない敗戦なのですが、せめてもの救いは、この負け戦で脱走を考えた配下が、

逐電を思い止めて、やっぱり戻ってきやした

ゴンの大将なら、海賊してでも食わせてくれそうじゃ思うて・・・

と彼を慕って戻ってきたことでしょうか。こうした苦難を重ねてつくったセンゴク隊の強固な結束が、後に改易され復活を果たす時に生きてくるのでしょうね。


舞台はかわって「賤ヶ岳の合戦」の場面に転換。こちらでは、信長に改易された佐久間信盛の甥の佐久間玄蕃が峰々をぐるっと回り込み、羽柴勢の中川清秀の陣に攻め入ります。中川義秀は古田織部の義理のお兄さんに当たる人で、「へうげもの」にも登場していますね。さらに、高山右近も敗走させ、一躍、武名を轟かせます。


この勢いにのって柴田勢は、勝家・前田利家が総攻撃がかけられるのですが、ここで堀久秀の守る砦を攻めあぐねているうちに、滝川一益・神戸信孝の牽制のため岐阜に向かっていた秀吉が、

ここを進みゃあ、栄光ある苦渋

進まにゃあ、汚れた安寧

と再びの「大返し」を見せます。


この大返しによって、羽柴勢の奥深く攻め込んだ。佐久間玄蕃のもとの柴田勝家から退却命令が下るのですが、佐久間玄番の嘆き姿は、一見、一枚岩のように見える「柴田勢」にも実は戦の帰趨を様子見する亀裂がはいっていたといわざるを得ません。そして、その退却するところを秀吉軍は襲って、玄番隊を敗走させます。せっかく、意気盛んに羽柴軍を攻撃していた味方の兵をこういう形で失うのは、戦略的に大きな痛手としかいえませんね。


羽柴勢の砦を攻めあぐねている勝家は当初、決死隊による攻め口の確保を躊躇っていたのですが、玄蕃隊の崩壊の報に正面から犠牲覚悟の攻撃を命令するのですが、前田利家の離脱を招くなど、すでに勝家は「老いた」といわざるをえない状態.


その後、勝家は。秀吉勢に押しまくられていき、北ノ庄城へ落ちのび・・・ということになるですが、柴田勝家とお市の最期は原書のほうで、お楽しみを。


【レビュアーから一言】


賤ヶ岳の戦で、勝家の退却命令を聞き、それに従うべきかどうか

ゴン殿よう、退いたほうがええんかや

ワシャぁ、あんまりええ気がせん

羽柴殿は賢すぎんじゃわ

もし羽柴の世になったら熱う生きていけるんかや

と佐久間玄蕃が逡巡し、「正直、怖いんじゃわ・・・」ともらします。ここらは、三方ヶ原でセンゴクとともに武田信玄の攻撃から生還した、戦国時代の空気を色濃くまとった「武将」が抱く「予感」だろうと思います。そして、その予感は、これからの石田三成をはじめとする「官僚派」の台頭を考えるとあながち間違いではないような気がします。

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