劇場戦争決着。あわせて「秘めた恋」も終わりを告げる ー 「七人のシェイクスピア(Part2) 12」(ヤングマガジンコミックス)

2020年6月7日日曜日

7人のシェイクスピア

t f B! P L

 大英帝国が絶頂を迎えたエリザベス一世の時代に、イギリス・ルネッサンスの本場ロンドンで、劇作家として世に出現。以後、演劇の世界に大きな影響を及ぼし続けている「シェイクスピア」の半生記と彼の創作の秘密を描く「七人のシェイクスピア」Part2の第12巻。


劇場戦争の最終盤に向けて、マクベスの上演と、リチャード三世の上演を女王に許可してもらい、海軍大事一座との差をつめていくストレンジ卿一座。芝居の観客だけでなく、ワースの考えたワインやパンなどとの抱合せ商法も功を奏していく。そして、女王陛下付きの美人侍女・のジョウン・ブラントとの仲もうまくいって、意気盛んなシェイクスピアで、劇場戦争の結末が明らかになるのが本巻。


【構成と注目ポイント】


構成は


第104話 喜びの友、悲しみの薬

第105話 絶望して死ね

第106話 登りつめる

第107話 終演

第108話 余興①

第109話 余興②

第110話 ソネット43

第111話 地獄の中へ行け

第112話 告白①


となっていて、「リチャード三世」上演も山場に近づき、アンの作曲した楽曲は観客の心を揺さぶり大きな拍手が巻き起こります。


ここで、大喜びで「ずっと余韻に浸っていたい音楽だ」とシェイクスピアを称賛するジョウンに対し、

甘い果実が熟れきると

やがて死神の腐った口に滴るわ

と女王が冷たい宣告をします。ジョウンとシェークスピアの仲を女王はしっかり把握していて、これ以上関係を続けると二人に「死」が訪れるよ、という警告ですね。いやー、好事魔多し、とはよくいったものですね。


もうひとつの山場である、リッチモンドとリチャードの最終対決の前夜の「亡霊」のシーンです。このシーンは以前、舞台で再現できないとしてカットされていたものなのですが、ロビンの斬新な発想で見事に蘇ります。


そして、リチャードとネッド・アレンの殺陣の場面。両者の俳優としての才能がぶつかり合い、双方が相手の演技を引き立てあい、素晴らしい出来で、大喝采で、芝居としては大成功というところですね。


ここで、今日の「芝居」の収益が明らかになります。いままでの収益差は30ポンド。それ以上の収益をあげていないと、ストレンジ卿一座は敗北。シェイクスピアは、裸でジグダンスを踊り、その姿で、マーロウの属する海軍大臣一座の本拠地のある「ローズ座」まで行進。そこで、這いつくばってマーロウたちの靴を舐め、永遠に筆を折る、という約束をはたさなけれなばなりません。


ところが、「芝居」の収益は28ポンド。2ポンド足りません。高笑いしながら、シェークスピアたちに詰め寄るマーロウの子分・ウォトソンに対し、ワースが仕掛けていた秘策が現れます。彼は、本屋のトマス・ソープに、「リチャード三世」のネタ本である「年代記」などの歴史書を劇場の前で販売する許可を与えていて、売上から手数料をとる契約を密かに結んでいたのです。


ここで、ソープが支払った手数料は・・・、というところで、たいていなら「大逆転ー!」というところなのですが、残念ながら1ポンド2シリング。あと18シリング足りません。


さあ、もうワースの秘策もつき、敗北が決定したか、と覚悟を決め、シェイクスピアは観客の求めに応じ、カーテンコールで舞台にあがります。観客の感謝の言葉を述べ、挨拶が終わったら、マーロウたちと約束した裸踊りの開始、というところなのですが、ここで、感動した観客たちが彼の立つ舞台に向かって投げ入れたのは、芝居や興行の原点ともいえるもの。いわゆる投げ銭ですね。観客たちに助けられての逆転劇が巻き起こります。


いやー、こういうアップダウンの激しい結末は予測してませんでした。まあ、この騒動にお陰で、ジョウンは一命をとりとめた感じがありますね。

そして、シェイクスピアは逆に、マーロウとウォトソンに舞台に上がって「約束の余興」を見せてくれ、と呼びかけるのですが・・という展開で、その後については、本書のほうでお読みください。


劇場戦争はストレンジ卿一座の勝利に終わり、魂が抜けたようになっているシェイクスピアなのですが、これは大仕事を仕上げたためもあるのですが、恋人のジョウン・ブラントの態度が突然冷たくなっていることのほうが大きいのかもしれません。


そうした中、ここで再び、女王から「ブラック・レディ(黒い淑女)」に会いたいとの知らせがやってきます。


面会の目的は、フランスのルーアンへの遠征の司令官を願うエセックス伯の頼みをどうしたらいいか判断を占ってほしいというものだったのですが、ここで意外な事実が明らかになり始め・・、という展開で、次巻以降の新たな展開への予兆がはじまります。


【レビュアーから一言】


劇場戦争の勝負で、シェイクスピアに恥をかかされたマーロウなのですが、史実では、これ以降もロンドンで巡査を脅して問題になったり、無神論や外国人襲撃を扇動するビラをまく嫌疑でつかまったり、といろいろ問題を起こした上、この劇場戦争から2年後の1593年の5月にロンドンのデッドフォードの居酒屋で刺殺されることになります。

本作では、都会的で冷静・冷酷で、策謀の多い人物として描かれているんですが、かなりのお騒がせの人物でもあったようですね。

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