カスティーリャ王女に気に入られたことで、アルテに刑死の危機ー大久保圭「アルテ 11-13」(ゼノンコミックス)

2020年10月7日水曜日

アルテ

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 芸術・文化が花開き、多くの優れた画家が生まれてはいるが、まだまだ女性が自らの才能を思う存分発揮して活躍することが難しかった「ルネサンス」の時代に、貧しい貴族の家を出て、自分の才能を信じ、一流の画家となることを目指して修行する女性の奮闘を描く『大久保圭「アルテ」(ゼノンコミックス)』シリーズの第11弾から第13弾。


前巻までで、スペインからやってきた高貴な感じの謎の美女の肖像画を、トスカーナの枢機卿から頼まれて描くことになったアルテなのですが、その女性の正体が、カスティリャの王女とわかり、肖像画製作にも熱が入るのですが、あわせて、彼女を取り巻く政争にも巻き込まれていくところが描かれます。


構成と注目ポイント


第11巻 アルテはカタルーニャの王女に自分の過去を語る


アルテ「第11巻」の構成は


第51話 カスティリャ王女

第52話 娼婦ナンナ

第53話 隠し部屋の夜

第54話 思い出


となっていて、イレーネがカスティーリャの王女・カタリーナであったことを知ったアルテは、彼女の境遇についてより知りたいと思い始め動き始めます。


これがきっかけとなって、第52話の「娼婦ナンナ」では、第一話で、ヴェロニカから聞いた男に騙されて没落した高級娼婦・ナンナのもとをイレーネ(カタリーナ)とともに訪ねるという暴挙に出ます。その様子は、原書のほうで読んでいただきたいのですが、イレーネ(カタリーナ)を暴漢から助けるためのアルテとアスセナの活躍が見事です。陰鬱な印象しかもてなかったこのエピソードが、イレーネ(カタリーナ)が変化していくのでお楽しみに。


その後、第53話から第54話では、イレーネ(カタリーナ)の肖像画を書くために、彼女のことをもっと知りたいというアルテに、彼女は泊りがけでやってくるよう指示し、アルテと父親が使っていた「隠し部屋」で、それぞれの境遇を語り合うことになるのですが、本巻では、まずアルテの境遇が語られることになります。

主なところは、彼女の父親と母親との葛藤とアルテが画家として生きることを決意したあたりが語られるのですが、最初のほうで、フィレンツェが教皇側について、スペイン軍が進軍してくるのですが、そこでメディチ家が帰ってくると心配する姿が描かれていて、どうやら、アルテの家は、反メディチの市民派であったような感じです


第12巻 カタルーニャ王女の過去は幽閉生活


続く「アルテ」12巻の構成は


第55話 塔の中

第56話 炎

第57話 師匠と弟子①

第58話 師匠と弟子②

第59話 不穏


となっていて、前巻で語られたアルテの過去に続いて、今度はイレーネ(カタリーナ)の過去が語られます。

ここで、少し解説しておくと、彼女のおばあさんがカスティーリャの女王で、おじいさんが隣国アラゴンの王様で、この二人が結婚したことで、今の「スペイン」の基礎ができたわけですね。で、このカスティリャの王位を、イレーネ(カタリーナ)のお母さん「ファナ」が継いでいます。このお母さんのファナ女王は、旦那との関係がうまくいかず精神不安定になったのと、宮廷の政争もあって幽閉されていて、カタリーナ以外の子供はお母さんの兄嫁のところで育てられているのですが、彼女一人、母親と暮らしているという状況です。


で、彼女は結婚する前に、自国の外の状況を勉強するためにローマに滞在したり、その後フィレンツェを訪問した、ということですね、ちなみに彼女は兄・カール5世の義兄のポルトガル王ジョアン3世と結婚することになります。


ここで、自分の意志で行動することが制限され、結婚も政治的な事情で決められる彼女に対して、アルテは同情するのですが、イレーネ(カタリーナ)は

どんな相手でも

絶対に愛してみせる

と宣言します。この場合の「愛する」が現代人の考える「愛する」と同じかというと少し疑念がわくのですが、生来の「王家の誇り」というやつは感じます。


このほか、第57話と第58話は、だんだんと成長していく弟子アルテに対する師匠レオの揺れ動く感情を描いています。少々、恋愛モードが強くなっている気配は感じますが、次巻でそれも大きく流れを変えさせられることになります。


第13巻 アルテ投獄。無実の罪で刑死か?


「アルテ」第13巻の構成は


第60話 波乱

第61話 欺瞞

第62話 暗闇①

第63話 暗闇②

第64話 困惑


となっていて、第12巻の最後で、母国で反乱が起きる気配があり、急遽、スペインを帰還することになったイレーネ(カタリーナ)の動きに、アルテが巻き込まれていきます。 


イレーネ(カタリーナ)のお気に入りになったアルテを自分の持ち駒として使おうとするシルヴィオ卿が、アルテに自分のスパイとなり、情報を流すよう依頼します。イレーネ(カタリーナ)の兄・カール五世は神聖ローマ帝国の皇帝なので、フランスとハプスブルグ家の間で揺れ動くイタリアの諸都市にとっては、このあたりの情報はいくら金を出しても欲しいところですね。


しかし、この申し出をアルテは断ってしまいます。友人となったイレーネ(カタリーナ)を裏切ることになるから、という理由ですが、シルヴィオ卿は、この企てがイレーネ(カタリーナ)を通じて、カール五世側に知られてはマズイため、アルテが金を騙し取ろうとしたという濡れ衣を着せて投獄します。でっちあげで有罪にして闇に葬ってしまおうということですね。


この危機を、レオ親方から聞いたイレーネ(カタリーナ)がアルテ救出に乗り出すのですが、当然、正面からいってもシルヴィオ卿側がすんなりいうことを聞くはずもなく、アルテを脱獄させるという乱暴な手を使うのですが、ここで活躍するのは、武術の達人・アスセナですね。アルテを自分に偽装して脱出させるために、長く伸ばした髪をばっさり切ってしまう思い切りのよさはスゴイです。


そして付け加えてくと、シルヴィオ卿は、イレーネ(カタリーナ)が匿っているアルテを奪還しようとやってくるのですが、彼女に軽くあしらわれてしまいます。どうやら彼は、女性を侮って、とんでもない人物を敵に回してしまったようです・・・。


レビュアーから一言


母親と一緒に幽閉状態であったイレーネ(カタリーナ)を外へ連れ出すなど、彼女の人生に大きな影響をもったのが、カール五世ですが、彼は当時のヨーロッパ王族のサラブレット中のサラブレットともいえる存在で、全盛期に彼が治めていたのは、ドイツ、オーストリア、オランダ、ベルギー、スペイン、ナポリ、シチリア、スペイン領アメリカなど広大な地域にまたがる、王の中の王ともいえる存在なのですが、彼の在位中に、ルターの宗教改革がおきています。

イレーネ(カタリーナ)がポルトガル王と結婚するのが1525年なので、彼女の宮廷画家となったアルテは、カール五世のスペインとフランスとのイタリア戦争やローマ劫略など、イタリアを襲う戦火に巻き込まれていくのでありましょうか。

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