趙の首都・邯鄲を目指す秦軍を雑多な軍で食い止めろ = 王欣太「達人伝」12〜13

2021年5月22日土曜日

達人伝

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 二百年続いた中国戦国時代の晩期。西方の強国・秦が周辺諸国に強大な力を背景に強圧をかけつつあるが、他の五国にまだ、秦の強権的なやり方に反抗する力の残っていた時代に、荘子の孫「荘丹」、伝説の料理人・包丁の甥「丁烹」、周の貴族出身ながらある事情でそれを捨てた「無名」び三人の男が、「法律」と「統制」で民衆を縛る秦の中原統一の野望に抵抗する姿を描く『王欣太「達人伝ー9万里を風に乗りー」(アクションコミックス)』シリーズの第12弾から第13弾。


前巻で、秦の統治下に入ることを拒んで趙に救援を求めた上党の地に、秦国の猛将・王齕に攻め込まれたものの、彼の参謀を捕虜にするなど、秦軍に人泡吹かせることに成功した、荘丹ら「丹の三侠客」たちと上党の義勇軍。ここに、趙の正規軍で、生き残っている六国の将軍の中で、秦軍に勝利した経歴のある「廉頗」将軍も秦軍との戦に参戦し、長平城を舞台にした秦・趙のがっぷり四つの戦が繰り広げられます。


構成と注目ポイント


第12巻 盗跖、朱涯六傑、孟嘗君の食客は荘丹に呼応して参陣


第12巻の構成は


第六十七話 大盗の武

第六十八話 最上の戦士

第六十九話 流氓侠客軍団

第七十話  胚胎

第七十一話 抗鍬の坩堝

第七十二話 盗賊の名


となっていて、冒頭は、前巻で、捕虜になった参謀の笵束を取り戻すため、上党の城内に単騎で乗り込んできた王齕にすがりついて邪魔をしたものの、王齕に斬られそうになった荘丹を救ったのは、「表」の戦には関わらないことを信条としていた「盗跖」です。


彼は荘丹たちとの約束を果たすために、盗賊稼業をしばらく休業して、上党の地にやってきたというわけです。


そして、この盗跖の参戦が契機となったのか、孟嘗君の食客や、朱涯六傑、そして荘丹たちから馬を盗んだ馬泥棒や運送屋の手下たちが続々とやってきます。そして、宋の国で鯨骨に斃された玄信の遺児・峻と修も成長し、逞しくなってやってきます。


そして、趙の正規軍のほうは、向こう意気は強いものの実力の追いついていなかった「孟梁」将軍にかわり、現在生きている秦に対抗する六国の武将の中で、唯一、秦軍に勝った経歴を持つ、趙の名将・廉頗が指揮をとることになります。戦の元となった上党は、すでに秦の王齕の猛攻によって占領されてしまっているので、上平の人々が逃げ込んだ、趙の「長平城」周辺が、趙と秦との戦の主戦場となるのですが、これが中国の戦国時代の趨勢を決めていく大きなターニングポイントになる「長平の戦」です。


この戦に参戦した盗跖は強力な武力と統率力を持っているのですが、趙の正規軍に組み入れられることを嫌ったため、形式上は「部隊長」という下っ端の役職をもらい、事実上は盗賊や侠客たちで組織する別働隊「流氓侠客軍団」として、趙の正規軍の武将の反感をかいつつも、

皆の者!

各船に分乗し秦兵を処分せい

積み荷は丸ごと

上党の避難民に届けるぞ!

と主戦力の一つとして秦の補給部隊を襲って兵站線を断ち切ったり、上党城内の食糧庫を焼き払ったり、とゲリラ戦を展開し、超軍の主力の一つとなっていきます。


このあたりの秦軍の裏をかいていく戦いは、かなりすっきりするので原書のほうでぜひお楽しみを。


第13巻 秦の白起、隠密として潜入しゲリラ戦を展開する


第13巻の構成は


第七十三話 斥候の心得

第七十四話 気骨の口気

第七十五話 「趙軍師卒反秦斥兵」ー史記・白起伝

第七十六話 千年の境界

第七十七話 ふたつの砦

第七十八話 森の伏兵


となっていて、前巻での荘丹や、太原の盗猿軍団の上党の食料庫襲撃で、参謀・笵束が命を落としたことに逆上して無茶な攻撃に出ようとする王齕を止めたのは、隠密理に派遣されてきた「白起」です。


秦国でも、長平の戦の重要性を見抜いてて、表面は「王齕」軍による攻撃をさせながら、同時に裏面で、「白起」による諜報と陽動作戦を展開しようとしているわけですね。


その情報収集のため、盗跖軍に参陣している、孟嘗君の食客あがりの武将・賀震をとらえて尋問するのですが、彼は何も喋ることなく、白起によって処刑されてしまいます。しかし、彼の死ぬ間際の

白起よ、胸に刻め

いかなる殺戮によろうと

人の炎は消し尽くせぬのだ

という言葉が、これから「白起」の心を悩まし続けることになります。


そして、情報収集と陽動を行う白起は、廉頗軍の副将・張茄を惨殺したり、といった闇の攻撃をしかけてきます。白起の部隊には、荘丹たちも遭遇し、かなりヤバいところまで追い詰められるのですが、盗猿たちの救援でなんとか凌ぐことに成功し、命拾いをしています。


一方、廉頗軍の防御でなかなか趙侵攻が進展しない状況に、秦国内では秦王自らが12万の大軍を率いて趙へ攻め入ることが決定されます。いよいよ、秦vs趙の最大決戦の火蓋が斬られることとなるのですが、その最前線である、「長平」の方では、盗跖の勢いが止まりません。力任せに攻撃してくる秦の左軍の武将・曹賁を、あっという間に返り討ちにするのですが・・という展開です。


レビュアーから一言


第13巻と第14巻では、上党軍を占領し、一挙に趙の都・邯鄲を狙おうとする秦軍を、趙の名将である「廉頗」将軍が、その勢いをなんとか阻止する展開となってます。それは将軍一人の才覚によるものではなく、盗跖や荘丹ら「丹の三侠」や、孟嘗君の食客など多くの力の結集のもとで成し遂げられているところが評価ポイントですね

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