敏腕すそはらい・奏歌が「つくも憑き」となった理由ー浜田よしかづ「つぐもも」15〜17

2021年5月4日火曜日

つぐもも

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 母親ゆかりの帯である正絹爪掻本綴袋帯「あやさくら」が年月を経て意識をもつようになった付喪神「桐葉」と、彼女の”ご主人さま”的立ち位置のはずなのだが、完全に下僕扱いされている主人公「加賀見一也(かずや)」が、ひきよせられてくる妖怪や人の呪詛や想いが結集した怪異「あまそぎ」を調伏していく、お色気満載の現代版「陰陽師」物語の第15弾から第17弾です。


前巻までで、蘇った腕利きの元すそはらいで、”つくも憑き”の奏歌によって菊理姫と桐葉を斃された”カズや”が、姉・霞が三年間、奏歌+あずみを封じ込めている間に、彼女たちを倒す実力をつけるための基礎知識として、奏歌とあざみ、そして”かずや”の過去が振り返られます。


構成と注目ポイント


第15巻 奏歌は腕利きの「すそはらい」となり、上岡に赴任


第15巻の構成は


第72話 奏歌と桐葉1

第73話 奏歌と桐葉2

第74話 奏歌と桐葉3

第75話 任地上岡1

第76話 任地上岡2


となっていて、前巻で封印が解け蘇った、”かずや”の母親である、あまそぎつきの”すそばらい「奏歌」の幼年時代から始まります。


彼女は近くで発生した妖魔の調伏の巻き添えで家族を失ってしまい、「すそはらい」の育成と派遣を行う「つづら殿」へひきとられます。


火前坊という妖魔に襲われる中、淡々と妖魔の放つ火炎をかわす様子に「すそはらい」の才能の萌芽が感じられたため、この養成学校に入校できたのですが、早速、同級生からのいじめにあってしまいます。ただ本人はあまり気にする様子もなく、淡々と暮らしています。これが、彼女が妖魔に襲われたときに「私には心がない」ということなのかもしれません。


そして、同級生の嫌がらせが続き、すそはらい試験の受験のために、一人ひとりに与えられる「付喪神」の選択の時も、遅刻させられてしまい、残り物の「帯」を掴まされてしまいます。これが帯の付喪神「桐葉」との出会いで、桐葉はもとは”かずや”の母・奏歌のつぐももだったのですね。


この二人(?)は相性がよかったのか、その力が発揮されるのが、すそはらい昇格試験のときで、試験に使われた雑妖の出没する山中に潜んでいた上級妖魔・火前坊を、教官たちも捕縛に苦戦する中、楽しそうに撃滅してしまいます。これをきっかけに、今まで覇気のなかった彼女が生き生きと「妖魔退治」に乗り出していくことになります。


幾度の妖魔退治で力をつけてきた奏歌なのですが、その力を持て余すようになち、このシリーズの主舞台となる上岡の土地神付きの「すそはらい」に立候補します。この上岡の地は、この巻でもすでに呪詛不安定地域とされているので、あながち”かずや”の忌み子特性で妖魔を集めるようになったわけではないようですね。


当然、そうした不安定地域なのですでに腕利きの「すそはらい」が配属していて、奏歌は、前任者の「兜」のつぐももを操る獅子崎新九郎と対戦してどちらが上岡の「すそはらい」として適任かを決めることにするのですが・・という展開です。


第16巻 奏歌の後継者・かずや誕生。そして”かずや”は”あざみ”を創る 


第16巻の構成は


第77話 神様といっしょ

第78話 奏歌の後継

第79話 かずやの過去

第80話 かずやとあざみ1

第81話 かずやとあざみ2


となっていて、前半部分では、上岡の土地神・菊理姫のすそはらいとして着任した奏歌が着々とその実力を伸ばしていく姿が描かれます。


しかし、最初は出現する妖魔・怪異を退治することを喜んでいたのですが、実力が上がるにつれ、上岡の高難度怪異も簡単に退治できるようになり、彼女は退屈しのぎのため、各地に棚上げされている超高難度怪異「蔵凍り(くらこごり)」の退治を、つづら殿から請け負って各地へ転戦するようになります。


ただ、あるとき

あなうらめしや、あなうらめしや

千年護り、千年与え

その冥加が、かの仕打ち

ならば、あが石片が、千年怨まん

と奏歌に遺恨を持つ怪異が出現したあたりから不吉な気配が漂い始め、それから半年後に生まれた”かずや”は呪詛を引き寄せる「忌み子」としての体質を持ってしまうことになりますね。この忌み子としての霊力を統御するため、桐葉が”かずや”のつぐももとなったわけですね。


ただ。この頃から、能力が高くなりすぎて、ほとんどすべての「怪異」が敵ではなくなってしまった奏歌は、幼少期に味わっていたような空虚感を再び持ち始めたようです。

そして、その空虚感に漬けこまれて奏歌が「ダークサイド」に呑み込まれる日がやってきます。


その原因となったのは”かずや”で、後継者として母親・奏歌の実力を上回りたい彼は、その練習相手として、人工の「付喪神」を創造します。それが黒い帯から生まれた「あざみ」ですね。最初の頃は、”かずや”と仲の良いつぐももだったのですが、ある時、”かずや”が、奏歌が家族と死別したときに着ていた服にかけた呪詛が”あざみ”と同化して暴走を始めることとなります。


第17巻 桐葉と菊理姫は、つくも憑き・奏歌と死闘を繰り広げる


第17巻の構成は


第82話 かずやとあざみ3

第83話 奏歌の死

第84話 黒い心臓

第85話 過去細事

第86話 つづら殿へようこそ


となっていて、邪悪化し、暴走し始めた”あざみ”が奏歌に取り憑き、支配を始めます。いわゆる「つくも憑き」の現象ですね。


もともと”あざみ”が邪悪化したのも、奏歌の幼少時の服に残っていた残留思念が原因と思われるので、その意味で奏歌とあざみは、特別に親和性が高かったのかもしれません。


そして、つくも憑きとなった奏歌は、かずやの命を狙って攻撃を始めます。彼のつぐももとなっている桐葉がこれを防げるか、という筋立てですね。そして、つくも憑きになりながらも、母親としての心を残していた奏歌の出した結論は・・というところが読みどころですね。


しかし、奏歌とあざみの話はここで終わりません。奏歌の捨て身の犠牲にもかかわらず、つくも憑きは命を落とした奏歌の身体を支配し、”かずや”とその守護者”桐葉”と”くくり”を始末する、という使命をもった疑似人格をつくりあげます。そして、今度は上岡の白山神社へやってきたつくも憑き・奏歌と菊理姫(くくり)との死闘が始まります・・・という展開です。


そして、奏歌とあざみ、自分の過去の映像を見、自らの使命を確かめた”かずや”は、奏歌開放までに実力を増強するため、すそはらい養成所「つづら殿」の頭首・織小華央姫とともに、つづら殿へ向かうのですが、そこで見たのは、付喪神を道具として扱う「隷付喪神派」のクーデターでした・・・というところで次巻以降へ続きます。


ちなみに、シリアスタッチが続いてサービスシーンが抑制ぎみの展開だったのですが、今巻の「第85話 過去細事」で爆発していますので、そちらもお楽しみに。


レビュアーから一言


すそはらい養成所「つづら殿」は「親付喪神派」と「隷付喪神派」に勢力が二分されているようですが、親付喪神派の幹部が獅子崎、東那、鈴谷という三人。


獅子崎は奏歌と上岡の「すそはらい」を争った人物ですし、東那と鈴谷は、奏歌がつづら殿に入校した当時の同級生です。


このへんに何かの因縁と暗示を感じるのは私だけでしょうか。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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