沖田総司は、東北朝廷を切り崩す新政府軍と対決する = 赤名修「賊軍 土方歳三」4

2021年7月6日火曜日

幕末

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 新選組の副長として、近藤勇を支えるとともに、その冷徹さと智謀で知られ、倒幕の志士や薩長を恐れさせた「土方歳三」の、明治維新以後を描いたシリーズ『赤名修「賊軍 土方歳三」(イブニングコミックス)』の第4弾。


前巻までで、江戸の上野戦争で彰義隊が敗れ敗走した旧幕府軍なのですが、寛永寺の座主であった輪王寺宮を戴いて「東北朝廷」を打ち立て、「賊軍」ではない「第二勢力」として新政府軍に立ち向かおうとする土方たちに対し、明治政府の「東北朝廷」の本格的な切り崩しが始まるのが本巻です。


構成と注目ポイント


構成は


第23話 太政大臣を追え

第24話 薩摩の雄叫び

第25話 大山の秘剣

第26話 衝撃、奔る

第27話 予期せぬ密計

特別収録 ダンダラ


となっていて、前巻で上野寛永寺から脱出し、会津に逃れた輪王寺宮を担いで「東北朝廷」を作り上げようとする土方をはじめとした東北諸藩の動きに対し、新政府の西郷たちと、彼らと協力関係になった旧幕府の勝海舟たちの策略が動き始めます。

彼らの狙いは、輪王寺宮ではなく、東北朝廷の重臣として祭り上げられた「九条道孝」太政大臣。

明治新政府の大総督府参謀・前山清一郎が、仙台藩主を通して九条道孝に謁見を申し出て、西郷隆盛の言として

「延元の乱」の再現を目論むようなこの構想には異議を唱える

もちろん、九条様に限り

そのような永きにわたる戦乱の世を望まれるはずがない

と伝えます。この説得に対し、九条は「九条総督と秋田にいる新総督を一緒に連れて京に戻り、朝廷に戦争中止を訴える」とう言を仙台藩に受け入れさせるというのを条件に京へ帰還します。

ちなみに「延元の乱」というのは足利尊氏が後醍醐天皇の建武政権に反旗を翻し、最終的に室町幕府を開いた一連の戦乱で、これを持ち出すことで、九条道孝に明治天皇に対して逆臣となる恐怖を抱かせることになったと思われます。

彼の奪取を皮切りに、東北朝廷の政権部分を切り崩していくことで、九条卿を仙台藩から親・新政府派も多数いる秋田藩へと移すことに成功します。


この動きに対抗して、東北朝廷のうった再奪還のための仙台藩の使者一行に、沖田総司が土方の命を受けて随行する、といった流れです。

土方としては、新政府につくか東北朝廷につくかで対立の激しくなっている秋田藩に仙台藩の人間が赴いても無事にすむはずがないと考えていて、沖田の「剣の腕」を期待してのことなのですが、この推測が見事的中します。


秋田藩で密かに待ち受けていたのは、「薩摩」の者たちで、仙台藩の使者たちを狙ってきた「薩摩もん」と沖田総司との死闘が始まり・・といった展開です。

沖田は天然理心流の達人であることは周知のことなのですが、今回襲ってきた薩摩藩士たちも「薬丸示現流」の使い手たちで、幕末の京都さながらのアクション・シーンが展開されることとなります。

本書によると「薬丸示現流」は奇声とともに「一の太刀」にあらん限りの気迫を乗せて打ち下ろすもので、相手が受ける太刀ごと相手を叩き綴す日本最強の剛剣です。これと「三段突き」と言われた沖田の突き技との一騎打ちです。


残念ながら、仙台藩の特使たちは秋田藩の新政府派によって濡れ衣を着せられて封殺されてしまうのですが、この戦闘シーンで、黒装束姿の長脇差で新政府を夜間襲撃し、30数回戦って一度も負けなかった仙台藩屈指の隠密部隊「衝撃隊」隊長、細谷直英に出会っています。


巻の後半では、会津藩主の命で、白虎隊の隊士たちに新選組当時の武勇伝を語っている土方の姿が描かれます。語られる白虎隊士は、刀の先が地面につくような、まだ若い者ばかりで、これから彼らが闘う戦闘の悲惨さはまだその気配すら感じられません。


レビュアーから一言


今回は、近藤たち試衛館の面々が幕府の募集に応募して京都へ浪士隊として上ったときの、芹沢鴨たちとの道中での騒動を描いた「ダンダラ」も併載されています。

ここでは、江戸から京都へ向かう途中の本庄宿で、芹沢鴨たちの部隊の宿が手配洩れになっていたために、彼らが宿場の家を壊して「大篝火」を燃やして、近藤勇の責任を追及した事件を中心に描かれているのですが、その迫力で芹沢を圧倒したように描かれていた「アサギロ」と違って、武骨で一本気な「近藤勇」の姿が描かれています。両方を対比して読んでみるのもいいかもしれません。

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