不死身の杉元と鯉登少尉は極東のサーカス団のスターになる = 野田サトル「ゴールデンカムイ」16(ヤングジャンプコミックス)

2021年8月7日土曜日

ゴールデンカムイ

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 アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第16弾。


あらすじと注目ポイント


構成は


第151話 ジャコウジカたち

第152話 人斬り

第153話 京都

第154話 残り時間

第155話 ヤマダ曲馬団

第156話 不死身の杉元ハラキリショー

第157話 樺太島大サーカス

第158話 大トリ

第159話 ウィルタ民族

第160話 国境


となっていて、最初の話はアシリパたちの動静。キロランケは、森の中でジャコウジカを狩り、その場面で樺太アイヌの額飾りである「ホホチリ」に関しての父親・ウィルクの昔話を語って、アシリパの記憶を呼び起こそうとしています。彼女の父親に関する記憶の中に「金塊の隠し場所」が埋もれていると思っているのでしょう。父との思い出を語るアシリパをみるキロランケと尾形の目が「冷たい」ですね。


そして物語のほうは、北海道に残り「刺青人皮」を探している土方歳三一派の動きに移ります。土方たちは網走監獄の隠し部屋に残されていた「エトピリカ」のくちばしを持っていたとされる、「幕末の人斬り」の生き残りの囚人を探しています。


その囚人は収監時の名前は「土井新造」と名乗っているのですが、幕末時には「人斬り用一郎」と呼ばれた刺客です。エトピリカは、ロシア・アラスカ・カナダの沿岸や離島に生息している海鳥なのですが、日本では根室のほうにしかいないという情報をもとに根室の漁場で漁の下働きをして暮らしている彼の居場所をつきとめます。


土井新蔵(人斬り用一郎)はこの物語ではかなり高齢になっていて、認知症の症状もでている様子なのですが、彼が幕末に行った暗殺で斃された人物の子供が彼に復讐にやってきたり、土方歳三が顔をみせたり、ということをきっかけに、幕末当時の記憶がフラッシュバックして「人斬り」として蘇ります。老人とは思えない、刀剣バトルが繰り広げられるので、ここは幕末もののようにお楽しみください。


ちなみに、彼が海岸で斃されるシーンで、「先生」と呼ばれる人物に「勤王主義」の欺瞞を非難しているあたりから、モデルは「岡田以蔵」ではないか、と推測するサイトもありますね。もう少しネタバレしておくと、土方歳三が、榎本武揚とともにつくろうとした「蝦夷共和国」の目的が南下をすすめるロシアと日本との間の緩衝国として北海道を独立させ、少数民族をはじめとした移民を受け入れ多民族国家をつくることにあった、と打ち明けるあたりは、「歴史に秘められた陰謀」好きにはたまらん話ですね。


巻の中盤からは、アシリパたちを追っている杉元一行の話に移ります。杉元たちは樺太の南部にある、当時、政治・経済の中心であった豊原(今のユジノサハリンスク)までやってきたのですが、ここで刺青人皮の写しの入った「背嚢」を置き引きに盗まれます。とてもすばしっこい泥棒だったのですが、捕まえてみると、ここで興行をはじめようとしていた曲馬団「ヤマダ一座」の軽業師であることが判明します。

ここで、杉元が自分たちが曲馬団に出演することで、その噂を先に行くアシリパに届けることができるのでは、と思いつき、その交渉を始めます。最初は素人にできるはずが、としぶる団長だったのですが、鯉登少尉の意外な才能が見いだされ・・という展開です。


鯉登少尉がその軽業の才能で、スターダムにのし上がっていく様子と、その人気を奪おうとする杉元の真剣を使った「ハラキリショー」、さらには曲芸の才能もなく、少女歌劇でもうまく演じられない谷垣の「苦悩」の姿が描かれています。少しネタバレすると、旅芸人一座と思われていた「ヤマダ一座」の本当の姿が公演の最後のほうで明らかになり、さらにはアシリパをキロランケがどこへ連れて行こうとしているかのヒントもでてくるのでお楽しみに。当時の日露の政治情勢を反映したきな臭いものであったことはネタバレしておきましょう。


巻の後半部分になると、アシリパたちは樺太の中部から北部の太平洋側を生活圏としている「ウイルタ族」と接触を図っています。彼らのトナカイを誤射してしまったというふりをして、彼らのトナカイ猟の手伝いをして仲間になった上で、ウイルタ族にまぎれて、国境を越えてロシア側に密入国しようという企みですね。

そして、ここでキロランケとアシリパの父・ウィルクの秘密の一端が明らかになります。


レビュアーの一言


樺太も中部あたりにくると動物の種類も変わってきて、アシリパの知らないものも増えてきています。

今回、ウイルタ族が飼育している「トナカイ」もそれで、トナカイの乳をかき回して「アリ」いわゆるバターをつくり、「リバースカ」と呼ばれる麦粉のパンにつけて食する体験は彼女にとっても新鮮なようです。

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