アイヌの娘・アシリパはソフィアの昔話で暗号解読の鍵をみつける = 野田サトル「ゴールデンカムイ」18〜19(ヤングジャンプコミックス)

2021年8月7日土曜日

ゴールデンカムイ

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 アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第18弾と第19弾。


あらすじと注目ポイント


第18巻 土方の刺青人皮探しのターゲットは「毒殺犯」


構成は


第171話 樺太アイヌの刑罰

第172話 阿寒湖のほとりで

第173話 僕の怪人

第174話 湖の中心で突っ走る

第175話 繭

第176話 それぞれの神様

第177話 長谷川写真館

第178話 革命家

第179話 間宮海峡

第180話 亜港脱獄


となっていて、今巻の前半部では北海道での「刺青人皮」の争奪戦の続きが描かれます。


土方一派が今回狙っているのは、30人以上を様々な毒薬を使って殺して網走監獄に収監され、脱走囚人の一人となった元家畜獣医の関谷輪一郎。彼はまず柔道王・牛山を騙して毒を飲ませて意識を失わせ、さらに、その牛山の命を人質にして土方歳三と賭けをして彼にフグ毒を飲ませて意識を失ったところを生き埋めにすることに成功しているのですが、消息の途絶えた土方を救うため、元網走監獄看守・門倉が立ち向かうことになります。


もっとも、先にちょっかいをかけてきたのは犯人の関谷のほうで、生き埋めにしている土方を人質にして門倉をおびきよせ、「種繭雌雄鑑別器」を使って毒入の繭の入った丸薬をひくかひかないかのギャンブルを仕掛けてきます。このへんはさながら、「賭ケグルイ」の世界ですね。


まあ、こんなときに引きの悪いのは門倉の特徴で、彼はフグ毒を引き当て倒れてしまうのですが、この運の悪さが突き抜けて幸運に変わってしまうのがすごいとこで、フグ毒にはフグ毒を対抗させて無害化させてしまいます。


また、関谷によって一旦、フグ毒を盛られて生き埋めにされた土方のほうも、意識を失う寸前に、フグ毒の効果を下げる措置をとっています。土方は「若い頃に薬売りをやっていた経験が役立つとはな・・」と述懐していますが、ここは薬屋としての経験だけでなく、幕末の動乱で何度も死地をくぐりぬけてきた経験もセットというべきでしょう。


さらに、牛山のほうもその強靭な体で、知覚のほうはまだ不完全な回復ですが、体のほうか常態に戻し、生き埋め場所から自力で脱出します。その後、いじめられっ子の用心棒役を果たして、彼が強く生きていく自身を与えるのですが、そのあたりは原書のほうで。


一方、樺太のほうでは、キロランケたちが亜港監獄内にいるソフィアの脱獄のための下準備を着々と進めているのですが、物語は、キロランケとソフィア、ティルクが逃亡生活の中で、ウラジオストックにいたり、日本人の経営する小さな写真館「長谷川写真館」で居候をしながら、日本語を教わった日々が描かれます。


その生活はキロランケたちとっては、日本人の夫とロシア人の妻、そして二人の間にできた赤ん坊と暮らす平和な日々であったのですが、ある時、「ハセガワ」はキロランケたちがロシア皇帝を暗殺した指名手配犯であることを知り、妻と子供を実家へ帰るように促します。

そして、妻子が家を離れたその日、長谷川写真館にとうとう、ロシア帝国の秘密警察・オフラーナの手先がやってきます。手先を逆に捕縛したキロランケが尋問すると、なんと彼らの狙いはキロランケたちではなく、「ハセガワ」であることがわかり・・・という展開です。


「ハセガワ」は日本軍のスパイであったことがここで判明するのですが、これにはさらにどんでん返しがあって、この写真館周辺での秘密警察との銃撃戦の流れ弾にあたって命を失う「ハセガワ」の奥さんに「ハセガワ」から衝撃の告白があります。それは鶴見中尉の過去にも関わってくるのですが、詳細は原書のほうでご確認を。


この後、ソフィアたち亜港監獄の囚人たちの集団脱獄がはじまるのですが詳細は次巻で。


第19巻 亜港監獄からソフィアを脱獄させよ


構成は


第181話 アムールトラ

第182話 私の知らない父のこと

第183話 狼に追いつく

第184話 流氷原

第185話 再会

第186話 忘れ物

第187話 罪穢れ

第188話 生きる

第189話 血痕

第190話 明日のために


となっていて、前巻の最終番で「白石」が監獄の壁にしかけた爆薬の爆発を合図に、ソフィアたちが看守たちに襲いかかり、爆発で壁にできた穴から脱獄を図るのですが、穴の先ではアムールトラが待ち構えている、という事態がおきます。


なんで、トラがいるんだ、というところは不明ですが、まあ、そう簡単には脱獄できなかったよ、という筋立てと思って読みましょう。


で、監獄の外でアシリパに出会ったソフィアは、ブルジョア出身の彼女が、少数民族出身の革命家・ティルクと出会い、彼から少数民族の文化について学んだことや、彼が極東ロシア、樺太、北海道を含めた「極東連邦国家」の構想をもっていたことをアシリパに語ります。

歴史的には、1920年代にロシア極東部の今のブリヤート共和国・ハバロフスク州・沿海州をエリアとして、シベリアへ勢力を伸ばそうとする日本軍との緩衝地域をつくる意図で、ロシア政府肝いりのブルジョア民主主義国家・極東共和国(チタ共和国)がつくられるのですが、ウィルクの構想したものとはちょっと違うようです。


そして、ソフィアから父・ウィルクの革命活動に向けた揺るぎない行動や、「ウィルク」の名前がポーランド語の「オオカミ」に由来することを聞いて、アシリパは、名前の由来を聞いた妻、アシリパの母親からアイヌ名として「ホロケウオシコニ」、”オオカミに追いつく”という名前を与えられたという父の話を思い出します。それが引き金となって金塊の隠し場所を示す「刺青人皮」の暗号を解く鍵に気づくというわけですね。


しかし、この時のアシリパの不審な動きを見て、「尾形」がアシリパが何かを思い出したことに気づきます。彼は、キロランケたちに隠れてアシリパから暗号を解く鍵を聞き出そうとして、彼女を拉致し、杉元が網走で撃たれた時の偽の情報を与えるのですが、アシリパは尾形の嘘に気づき・・・という展開です。


この後、監獄からの脱走騒ぎに気づいてアシリパたちに追いついた杉元たち一行と尾形、キロランケとのバトルが始まります。そこでは、アシリパを撃とうする尾形へ向けた杉元の声に驚いたアシリパが尾形の目に毒矢を射てしまったり、谷垣がインカラマッの復讐をキロランケに果たしたり、と網走監獄での「ウィルク」救出作戦での「精算」がされていくことになります。


ちょっとネタバレしておくと、この最後のバトルでキロランケは命を落としてしまうことになって、彼の背後にいるのは誰か?とか、尾形が金塊を探す目的は?といったことは今巻では不明のままに終わってしまいます。


レビュアーの一言


18巻と19巻は、刺青人皮捜索をめぐるアクションシーンや、亜港監獄爆破や集団脱獄のバトルシーンなどが中心で、「アシリパ飯」の出番はありません。

かわりに、網走監獄からの逃走以来離れ離れになっていてアシリパと杉元とが再会を果たします。もっとも涙、涙の場面だけでなく、杉元の軍服のボタンに、アシリパのまぶたが寒さでくっついてしまうというおまけつきなのはこのシリーズらしいところです。

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