美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Season『宮下英樹「センゴク権兵衛」』の第24巻。
前巻で朝鮮半島へ侵攻し、高麗国の首都・漢城を落城させたのですが、その後の明国への侵攻を行うための秀吉の渡海をめぐって、徳川家康と石田三成との意見対立が表面化し、政権内での亀裂が明らかになりはじめたのですが、今巻ではさらにその対立が激しくなってきます。
あらすじと注目ポイント
構成は
vol201 板挟み
vol202 揺れる心境
vol203 踊る戦線
vol204 勅使来日
vol205 外交手腕
vol206 豊臣の前途
vol207 さらば
vol208 喧しいわ
vol209 大捕物
vol210 大盗賊の正体
となっていて、急遽渡海を取りやめた秀吉の名代として、石田三成、増田長盛、大谷吉継たちが指揮権を託されて渡海するところから始まります。
石田三成は
とかく殿下は「渡海軍の統制」を
徳川・前田(の)両殿ではなく、奉行衆に託された
その信頼に応えねばならぬ
と意気に感じているのですが、理想論に走りがちな奉行衆に対する不安感は拭いようもありません。
案の定、今後の方向性について高麗国の内政優先か、明国への侵攻優先かはっきりしない上に、先発している諸将たちは三成たち文治官僚を軽視している武闘派ばかりで、対立が激化するのは目に見えている状況です。さらに、母親の死去によって秀吉も京へ引き上げるなど、リーダー不在のままで事が進んでいってます。
さらに加えて、実際の戦局の情報をそのまま秀吉に伝えると激怒間違いなしので、かなりごまかして伝えるなど情報操作も行われていたのが、「朝鮮戦役」の裏側のようです。
筆者は
とかく秀吉は疲れていた
そして「安易な誤情報」に縋ってしまったのかもしれない
と評しています
まるで、2021年当時のコロナ対応をめぐる政権によく似た状況がおきていたわけですね。
こうした中で「明国との和平交渉」が始まっていくわけですが、小西行長と明の和平派とが仕立てる「偽」の明国勅使を相手にして、戦役の趨勢や相手国の思惑について情報不足のなままの「秀吉」が演じる「交渉劇」です。
センゴクは現在の豊臣政権下では権力ピラミッドの下のほうなので、詳細について知り得る立場ではないのですが、持ち前の鋭い勘で、この舞台裏に勘付いているとともに、秀吉政権の今後についてなにやら暗い予測をたてています。
物語の後半部分では、あの「石川五右衛門」の登場です。本書では、大名の大半が九州の名護屋にいたことによる畿内の警備不足をついたもので、手下の数が500人から1000人いる大名並みの大盗賊団の「頭目」として描かれています。
史実では、センゴクは伏見城に忍び込んだ五右衛門相手に大バトルをしたり、と五右衛門捕縛に大功績をあげたことにななっているのですが、本書では
俺らにゃ、何事もねぇ静謐の世は
ドブみてぇなもんさ
と戦国の世の終わりを嘆く五右衛門と語り合うひと味違う描き方をしています。秀吉による天下統一は身分関係の固定化ももたらしているわけで、戦働きで一発逆転を狙っていた下積みの人々の「喪失感」を「石川五右衛門」が体現していたようです。
ここで少しネタバレしておくと、次巻以降で豊臣政権を揺るがすことになる、明との和平交渉で秀吉政権と朝廷との板挟みにされたり、茶々の男子出生で不安にかられる関白秀次の様子が仕込まれているので、ここはしっかりおさえておきましょう。
レビュアーの一言
こうした情勢の中で、茶々の懐妊と男子出生という「慶事」は進んでいってます。淀君の懐妊については、秀吉の子種ではないのでは、という疑惑が昔からあるわけですが、筆者の推測は名護屋城下での男たちの連続不審死と秀吉と淀君との
茶々、後始末はつけたんじゃな?
という会話で表しています。
これらを見ると、筆者は、この懐妊は豊臣家の存続を図る為の秀吉・淀君二人の「計画」で、姦通疑惑も承知の上、という推理ですね。
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