龐煖+李牧の攻撃のもとに王騎将軍斃れる = キングダム 14~16「馬楊攻防戦」その2

2021年9月13日月曜日

キングダム

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 中国の春秋戦国時代の末期、乱立していた諸国も秦、趙、魏、韓、斉、楚、燕の七カ国体制が長く続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズの第14弾から第16弾までを総解説します。


前巻までで、秦国領に侵攻してきた趙の軍勢に対し、王騎将軍の戦術が冴えて趙の右軍の指揮官を斃したり、包囲陣を敷く趙の中央軍を、秦の蒙武軍が力押しに粉砕したり、と秦国軍有利な展開となるのですが、このタームでは、趙の大将軍・龐煖が登場して、秦国軍を動揺させ始め、さらに、本当の軍師である李牧も戦線に参画し、秦軍の大黒柱である王騎将軍の身に危険が迫っていきます。


あらすじと注目ポイント>龐煖+李牧の攻撃のもとに王騎将軍斃れる


第14巻 趙の総大将・龐煖が秦軍へ襲い掛かる


第14巻の構成は


第141話 神の業

第142話 九年ぶり

第143話 把握不能

第144話 倒せる

第145話 「集」の作戦

第146話 失敗

第147話 尾兄弟

第148話 友

第149話 再結集

第150話 王騎の実力

第151話 蒙武迫る


となっていて、第13巻の後半部分で夜営中に、秦の陣地に単身でのりこんできた、趙軍の総大将・龐煖によって、飛信隊をはじめ秦の兵士たちは大混乱に陥ります。


秦の兵士たちは芋でも切るように斬り飛ばされていくので、ここに信と羌瘣が介入して龐煖を止めようとするのですが、信は龐煖の剣で弾き飛ばされ、まったく敵いません。


この圧倒的な強さを誇る龐煖の剣に対し、羌瘣も蚩尤の技を究極まで研ぎ澄まして対戦するのですが、彼女の「巫舞」も龐煖に跳ね返されてしまいます。だんだんと息があがってくる羌瘣に対し、龐煖の力は衰えるところがなく、圧倒的に不利な状況となっていきます。


ここで、龐煖の来襲に気づいた干央軍が龐煖包囲網を敷き、四方を囲んで投げ槍による攻撃をしかけ、龐煖の注意力がそちらに向いた隙に、背後から「信」が迫り、龐煖の体に刃を入れるのですが、といった展開です。


残念ながら、この捨て身の戦法も龐煖を倒すまでには至らず、龐煖の後をおいかけて秦軍の夜襲をしかけた万極軍にも追われて、飛信隊は山中深く逃げ込んでいくことになります。この逃走の最中に、尾兄弟の弟の「到」が「信」を守って戦死してしまいます。


龐煖の出現によって趙有利に傾き始めた戦局なのですが、ここでまず王騎が山間部の戦いに参入したことで秦側に動き始めます。小高い丘の上に「秦旗」をたてて、友軍かとおもわせてだまし討する趙の将軍・渉孟の姑息な手を見抜き、渉孟を粉砕したのに始まって、蒙武軍が趙の本陣をとらえることに成功します。


第15巻 罠にかかった蒙武軍に王騎軍合流し、趙軍を攻撃


第15巻の構成は


第152話 罠

第153話 旗

第154話 蒙武掛かる

第155話 北の軍

第156話 到着

第157話 士気高揚

第158話 真打ち

第159話 予想

第160話 総大将、見える

第161話 個人の武

第162話 摎の正体


となっていて、蒙武は趙の本陣をとらえ、龐煖と対峙するのですが、刃をかわすことなく龐煖は逃走します。


これをさらに追う蒙武なのですが、実はここには趙の軍師・趙荘によって罠がしかけられています。蒙武は両側を崖で挟まれた狭路におびき寄せられ、崖の上から巨石投下の攻撃を受け、半数の兵士が失われてしまいます。しかし、これで意気消沈する蒙武ではなく、さらに奥地へと敵の姿を求めて進軍していきます。そして、龐煖の姿をとらえたかと思ったのですが、これはダミー。山中深く張り込んだ蒙武軍を、龐煖+趙荘の趙本軍が攻撃をしかけていきます。


趙本軍の攻撃によってボロボロになっている蒙武軍なのですが、ここで王騎の本軍が救援にかけつけます。蒙武軍を崖下まで追い詰めた趙本軍に対し、副将の騰と歩兵部隊を使った揺動作戦で、趙の軍師・趙荘を撹乱していくのですが、この戦闘の様子は原書のほうでどうぞ。


実は、王騎軍が趙本軍に崖下に追い込まれた蒙武軍の救援に駆けつけるところまでは、趙の本国の三大天の一人で、北方の戦地で匈奴軍を撃破してかけつけた「李牧」の予測したとおりで、李牧はこの後、王騎軍を李牧率いる趙の北方軍で挟み撃ちして殲滅する作戦を準備しています。


この秘策に本能的に気づいた王騎は、李牧の北方軍が到着するまでに、趙本軍と決着を付けてしまうつもりで、龐煖との一騎打ちを始めていくわけですね。この王騎vs龐煖は迫力ある戦闘が連続していきますので、バトルシーンのお好きな方はぜひ原書のほうで堪能してほしいところです。


第16巻 王騎の死を代償に馬陽を防衛


第16巻の構成は


第163話 摎の秘密

第164話 邂逅

第165話 強さの根源

第166話 相容れず

第167話 秦の武威

第168話 新たな時代

第169話 死線

第170話 天下の大将軍

第171話 将軍の景色

第172話 継承

第173話 終戦


となっていて、冒頭のところでは、9年前に龐煖によって六大将軍の一人「摎」が倒され、その仇をうとうと王騎が龐煖の顔面を切りつけた経緯が語られます。


実は「摎」は当時の秦の王・昭王と側室の間にできた娘で王騎の恋人であったことがここで明らかになります。幼い頃、「摎」が将軍となり、城を百個とったら王騎の妻にするという約束が、あと一個で果たされようかという時、馬陽城の戦で龐煖によって「摎」は斃されてしまったわけですね。「摎」を斃した龐煖の顔に傷をつけた王騎の剣が9年の歳月を経て、再び龐煖を襲うこととなります。


そして、龐煖にトドメをさせるか、という時、李牧の率いる趙の北部軍が到着します。王騎の予測では北部軍の到着までに、龐煖を斃せるはずだったのですが、李牧の北部軍の行軍速度はそれを上回っていたということですね。


ここで、秦軍と李牧の北部軍を加えた趙軍との全面対決が巻き起こります。そして、李牧の目指すのはただ一点「王騎を討ち取ること」です。李牧はその理由を

国を代表する大将軍の首というのは

その国の軍事の象徴ですからね

それを失わば秦の武威は失墜し

逆に趙の武威は列国の脅威となります

と説明しています。

彼を討ち取ることによって、秦国の「武威」の象徴を失落させて、ひいては国の弱体化を狙う戦略ですね。


そして、この最後の乱戦の中で、王騎軍は、趙の本軍である趙荘軍を壊滅させるのですが、龐煖と矛と魏加の放った矢によって、王騎将軍は瀕死の重傷を負ってしまいます。このまま放置すれば、趙軍によって切り刻まれ、死後も辱めを受けることが明らかなため、「信」は王騎将軍のをのせた愛馬を秦の本軍まで連れて行くのですが、この礼として、王騎将軍から彼の「矛」を授けられることになります。


この後、趙軍も大きな被害を受けたため兵を撤退させるので、秦軍としては趙の侵攻をくいとめ「勝利した」といってもいい状況なのですが、その代わりに失ったものも大きかった、という状況ですね。


レビュアーの一言>「李牧」という新人類の登場


今回、馬陽攻防戦の最後のところで、趙の北部軍を率いて登場した李牧なのですが、負傷して戦線を離脱する「王騎将軍」のあとを追わせることなく、戦線を縮小させてます。これについては、趙軍の中にも非難する将兵もいたのですが、李牧は

目的は王騎の死

これが達せられた今

これ以上、血を流すことに全く意味はない

無意味な死だけは絶対に赦しません

として、戦を終結させています。このあたりは、戦争を個人の武勇の「ぶつかり合い」と捉える当時の風潮とは一線を画する「新人類」といえるかもしれません。


秦が中原の統一戦争を推し進め、六カ国を併合していく中で、秦の攻撃を一時的にでも退けることのできた将軍は「趙の李牧」と「楚の項翼」の二人だけと言われているのですが、そのパワーの源はこの「新人類ぶり」にあるのかもしれません。

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