合従軍を函谷関で防衛。秦国滅亡回避か? = キングダム28~30「五カ国合従軍篇」その3

2021年9月18日土曜日

キングダム

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 中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ第28弾~第30弾を総解説します。


前巻までで、一進一退を繰り広げていた、秦と合従軍の「函谷関戦」なのですが、楚の女性将軍・媧燐の提案に従って、凡戦を繰り広げた後の函谷関への総攻撃の火蓋が落とされるのがこの28巻から30巻。合従軍の猛攻に耐え、秦軍が祖国滅亡の危機をどう跳ね返すか、が描かれます。


あらすじと注目ポイント>合従軍を函谷関で防衛。秦国滅亡回避か?


第28巻 桓騎は合従軍の隙をつき韓軍本陣へ迫る


第28巻の構成は


第295話 新たな姿

第296話 第二軍動く

第297話 戦象の意味

第298話 窮地の大抜擢

第299話 新たな攻略手

第300話 陥落の危機

第301話 敵の海原

第302話 戻らぬ覚悟

第303話 武将の襟持

第304話 信の閃き

第305話 王翦の動き


となっていて、合従軍の総攻撃を受けて、まず蒙武・騰軍と楚の汗明軍との激突が始まります。


先鞭をつけたのは左軍にいる「壁」の部隊で、蒙武の檄の熱に乗せられて実力以上の快進撃をしていきます。蒙武は壁の突撃を見てもじっと動かなかったのですが、壁軍を潰すため、汗明が援軍を放ったのを見て順次左から将兵を突撃させます。


敵軍の横陣に対し斜めに攻め込んで敵陣を切り崩していくもので、敵の正面攻撃を斜めに受けて突破していく、いわゆる「斜陣がけ」なのですが、実戦では使えない「机上の空論」といわれていたものです。


この攻撃に対し、楚の汗明は大軍を擁しての正面から摺りつぶす作戦を堅持します。楚の国は、伝統を重んじる国という印象があるのですが、ここらにもそれが現れているのかもしれません。


一方、騰軍は楚第二軍の媧燐と対峙しているのですが、煙幕の中から現れたのは「戦象」部隊です。戦象はインド、東南アジアや古代地中海地方でよく使われた戦争兵器で、古代ローマと戦ったカルタゴのハンニバル将軍の戦象部隊が有名ですね。中原では、漢代以降は気候変動と乱獲のため、象自体が減少したため「戦象」部隊が編成されることはなくなったのですが、この戦国時代は中国南方を領する楚では強力な兵器として使われていたのでしょう。


この戦象部隊に対し、象に乗る指揮官や兵士に狙いをつけた弓矢攻撃と、録鳴未たちの迫撃戦で退けた、と思いきや、媧燐の本当の狙いは「戦象」に目をひいておいて、その間に、騰軍への包囲陣を形成することにありました。さすが楚が誇る「戦術家」です。


この包囲陣に対し、騰は、左軍・五千の将に「王賁」、右軍・五千の将に「蒙恬」を臨時任命して、迎え撃つのですが、その詳細は原書でご確認を。


第299話からは再び、函谷関正面での戦です。魏軍の呉鳳明は通常の2倍の大きさの「床弩」を持ち出し、函谷関の城壁目指して発射。城壁に巨大な槍を打ち込み、これにつけた綱をつかった城壁を登らせます。


さらに井闌車も持ち出し、一挙に城壁攻略を目合します。一方、ここを守る守将・張唐たちは、八日前に韓将・成恢がしかけた遅効性の毒攻撃にやられていて、衰弱していてここを守りきれるかどうか危うい状況です。


ここに救援に入ったのが城壁の右翼を守っている桓騎です。彼には数日前、張唐将軍が彼に「国をしょって立つ覚悟があるか」と聞いたとき、桓騎は即座に否定したのですが、張唐将軍の守る中央部に井闌車が付けられたので、手柄稼ぎにやってきたとのこと。


彼は井闌車の後ろ側に火炎樽を、内部に煙玊を投げ込み、井闌車が炎上したと思った魏兵に退却させ、井闌車の階段を使って地上に降り立ちます。


そして、そこで魏の旗印を奪い、城壁攻めに意識がいっている敵陣の中を横切って韓軍の陣営へ向かっていきます。この桓騎軍の動きに張唐も参加し、両者が目指すのは、韓の主将・成恢の本陣です。

このバトルの様子と結果は原書の方でお読みいただきたいのですが、筆者は、成恢のように、謀略は巡らすが、自分は戦闘の正面に出てこない武将はキライのようですね。


第29巻 蒙武、汗明を斃し、楚軍崩れる


第29巻の構成は


第306話 十五日目の午後

第307話 五千将・項翼

第308話 媧燐軍の突撃

第309話 汗明への道

第310話 至強

第311話 明かされる戦歴

第312話 生まれて初めて

第313話 最強の涙

第314話 ”至強”決す

第315話 俺の倅

第316話 勝利は目前


となっていて、今巻の冒頭は函谷関の左部。王翦将軍と燕のオルド将軍の戦場です。ここは山伝いに函谷関の背後へ回るのを阻止する山間部の要所なのですが、オルド将軍に中心部を急襲された王翦は軍を退かせ、山中に姿を消してしまいます。もともと王翦は秦国への忠誠心の薄い将軍なので、この危機にあっさりと祖国を見捨てたのか、と疑念をもたれます。


燕のオルドは無抵抗のまま、軍を進め、函谷関の裏へ通じる大断崖を目指します。その断崖を登れば尾根伝いに函谷関の裏に抜けることができるため、オルドは山岳民族で構成する八千の部隊を登攀させるのですが、そこで待っていたのは、開戦前から潜んでいた王翦の軍勢です。崖を登るため無防備になっている燕軍に弓矢の嵐を降り注ぎます。


山岳民族の部隊を失ったオルドはやむなく空になっていた王翦軍がいた砦まで撤退するのですが、ここで王翦は再び山中に雲隠れ。どこから攻撃してくるかわからない王翦軍を警戒して燕軍はここに塩漬け状態になってしまいます。


第307話からは、楚軍vs蒙武・騰連合軍の戦いが描かれます。


まず動きは媧燐軍から起きます。媧燐将軍は臨武君の仇討ちと逸る項翼に五千人の兵を与え、騰軍へぶち当てます。そして項翼が騰に食いついているのを尻目に自らの精鋭一万のうち五千の兵を率いて騰軍の主陣へと兵を進めます。主陣を守る隆国たちが媧燐に苦戦しているため、蒙恬、録鳴未たちが援軍にまわってくる中、再び軍を汗明vs蒙武の主戦場へと移動していきます。


その汗明vs蒙武では斜陣がけで兵が厚くなっている右翼と左翼に楚軍も兵を集めたため、兵力に勝る楚軍にオサレ気味です。時間がたつにつれてジリ貧となっていくのは明白で、楚の陣営は勝利を確信するのですが、ここで、蒙武の本当の狙いが炸裂。右翼と左翼に兵を回したため手薄となった汗明の本陣めがけて蒙武自らが攻め込んでいきます。


楚軍は巨漢ぞろいの汗明の親衛隊を出動させるのですが、蒙武の敵ではありません。この親衛隊を蹴散らし、汗明の本陣まで到達、蒙武vs汗明の一騎打ちが始まります。


汗明は秦国にはその武名は伝わっていなかったのですが、実は斉、趙、魏、韓の4カ国では一度も負けていない武将として有名です。さらに、彼がまだ若い頃、楚に攻め込んだ王齕を負傷させて退却させたこともある、おそらく現在の中華で一、ニを争う猛将です。彼を相手に蒙武の大バトルが連続しまますので、ここはぜひ原書でよんでおいたほうがいいですね。


そしてなかなか決着がつかない中、汗明が斃されると楚軍崩壊の恐れもあるため、二人の戦いの最中に蒙武を暗殺してしまおうという媧燐の企みが結果的に悪手となります。暗殺者の手から蒙武を守ろうと飛び込んできた蒙恬を汗明が斬り、これに激昂した蒙武がすさまじい力を発揮して、汗明の頭部をぶっ飛ばしてしまいます。


汗明が斃れ、混乱する楚軍と合従軍の司令部なのですが、この激闘のなかで、媧燐将軍の打っていた函谷関陥落の秘策が動き始めます。媧燐の謀将ぶりが最大限発揮されるところですね。


第30巻 秦は函谷関を死守するが、李牧の秘策「南道侵攻軍」が動く


第30巻の構成は


第318話 函谷関の裏

第319話 打ち止め

第319話 楚王の怒り

第320話 首謀者の行方

第321話 しぶい状況

第322話 麃と飛

第323話 本能型の極み

第324話 ど阿呆

第325話 前進

第326話 うまい酒

第327話 政の決断


となっていて、媧燐将軍の精鋭一万のうち自ら率いていた五千の兵の残り五千が函谷関脇の崖を登り、函谷関の裏側に躍り出てきます。


そして、城門を開けて魏の大軍を迎え入れようと門に殺到し、封をしていた巨石を引きずり出すところまでこぎつけます。


ここでに現れたのが、燕軍の山岳民族兵をせん滅した後、山中に姿を消した王翦軍です。王翦は伏兵があるとみせかけてオルド軍を山中の城塞内に釘付けにした上で、函谷関の救援に向かっていた、というわけですね。


王翦の用意周到な作戦のもとに媧燐の奇襲策は崩れてしまうことになります。


この結果、十五日目の戦局は「楚軍総大将・汗明、討ち死に」という結果だけが残り、楚軍の敗退から、余波が全合従軍に広がり、開戦前の位置まで退却を余儀なくされてしまいます。


ここで、秦国の最大の危機は去った、と秦人は安堵するのですが、さらに秘策を隠しているのが、この趙の宰相・李牧の怖いところです。


十六日目以降、函谷関の周辺では大きな戦闘もなく膠着状態が続くのですが。異変は函谷関以外で置き始めています。


実は秦の都・咸陽に至るには、函谷関のほかに武関というもう一つの関所をとおる「南道」という別のルートがあるのですが、この道は狭い道が続き、大軍が動くには適さないため、今回の秦攻略戦では意識外にあったのですが、その武関を秦国側に越えたところにある小城が次々と何者かに陥落されていくという事態がおきます。


武関は陥落どころか戦闘もおきていないので、一体誰が、と秦の宮廷内でも不思議がるばかりなのですが、その正体は密かに函谷関から山間を進んで兵を送り込んできた「李牧」の攻略軍です。


函谷関戦の途中から兵を少しづつ送り込み、函谷関戦の膠着後は、諸国の兵一千づつを応援させて、南道方面から首都・咸陽を突く作戦です。しかも南道侵攻をする軍勢の中心は、趙北部で匈奴戦を戦ってきた「雁門騎馬隊」が中心となっているので、山岳戦や局地戦は得意中の得意、というところですね。


南道には趙軍をくいとめる大きな城もなく、このまま咸陽が敵兵に蹂躙されるかもしれない、というところで登場するのが、三千の兵を率いる麃公と飛信隊です。直感で合従軍内の妙な動きを察知した麃公が無断で持ち場を離れて南道を進んできた、というわけです。ここから、麃公軍+飛信隊と趙・李牧軍との戦いが始まります。


しかし、ここで立ちはだかってくるのが、王騎将軍も斃し、さらに修行を積んだ「龐煖」です。龐煖と麃公との死闘がここで始まるのですが、両雄の勝負の行方は・・、という展開です。


レビュアーの一言>楚軍の総大将・汗明の正体は?


最終的には蒙武によって斃されたものの、斉・趙・韓・魏に勇名をとどろかし、王騎より武に優れると自負していた楚軍を率いる大将軍・汗明なのですが、歴史上にでてくる「汗明」は中国・戦国時代の遊説家です。

春申君の食客となろうとして3ヶ月かけて面会したものの、そこで追い返されそうになったので、弁舌をつくして、5日に一度面会してコンサルティングを受ける待遇をかちとった、という話の残る「文系」の方ですね。ただ、その後の事績は残っていないので、一発屋で終わった感じが漂います。この五カ国合従軍が秦を攻めた戦で活躍した五カ国側の武将はそんなに明らかになっていないようなので、作者がこのエピソードからヒントをえて創作した人物のようです。

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