その2信は慶舎を斃し、桓騎の恐怖策が紀彗を退ける = キングダム43〜45「趙・黒羊丘侵攻篇」

2021年9月24日金曜日

キングダム

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 中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ第43弾~第45弾を総解説します。


前巻で趙の黒羊丘地帯に攻めこんだ秦軍なのですが、地の利に勝る趙軍に翻弄されるがままになっています。押され気味の状態を打破したのが「飛信隊」なのですが、これを受けた桓騎将軍は、積極的に攻めようとはせず、謀略に満ちた、野盗出身らしい、悪どい戦法が炸裂します。


あらすじと注目ポイント>信は慶舎を斃し、桓騎の恐怖策が紀彗を退ける


第43巻 優勢な戦況にも桓騎動かず。その狙いは何?


第43巻の構成は


第460話 飛信隊の楔

第461話 黒羊の大一番

第462話 困惑の夜

第463話 離眼の悲劇

第464話 焦れの限界

第465話 掌飢えの戦場

第466話 李牧級の男

第467話 狩られる側の風景

第468話 ”吉”と”凶”

第469話 一瞬の出来事

第470話 俺の背中


となっていて、「黒羊丘攻略戦」は三日目に入ります。


渡河戦で馬呈を出し抜いた飛信隊は、貂の戦略も冴えて優勢のまま戦闘を続けています。ここで、貂が次に思いついたのが、この勢いを桓騎軍全体に伝播させること。そのため、右翼の前線の押し込みはここまでにして、主力を中央丘へと転戦させます。


飛信隊の中央丘下方からの攻めで、ここを守る紀彗軍は一部をその防戦にまわさざるをえなくなり、一転して、桓騎軍の攻め手が増え、桓騎がどういう策をとってくるか、全軍の注目がその一点に集中します。


ところが、桓騎に集中する中、桓騎のとった策は・・・「何もしない」こと。


三日目は、兵を動かすことなく終了します。この桓騎の「無策」に全軍驚くのですが、紀彗は「動かなかったが、何かをした」と桓騎の動きになにか不穏なものを嗅ぎ取っています。


一方、紀彗軍の軍師・劉冬を急襲し、重賞を負わせたものの、自らも負傷した羌瘣は、黒羊丘の樹林内にある村に転がりこんで手当を受けています。ここで羌瘣は、村長の老女から、この地域でおきた離眼と暗何の地方勢力同士の激し争いとその過程で、離眼の子どもたちを助けるために人質となり焼き殺された、紀彗の父親の前城主の話などを聞かされます。紀彗の故郷・離眼の住民への「思い」が伝わる話ですが、これが後になって弱点となって紀彗にふりかかります。


そして戦いの四日目となります。この日も桓騎は兵を動かそうとせず、戦闘の中心は丘の右翼の秦の「飛信隊」と趙の「馬呈・劉冬」隊です。両者が互角の戦いを続ける中、動かない桓騎に焦れて、総大将・慶舎が軍のほとんどを率いて、飛信隊殲滅をすべく丘の下へ動き始めます。「馬呈・劉冬」隊と「慶舎」軍に挟まれ、すり潰されていく飛信隊なのですが、この時、紀彗軍本陣に対峙していた、ゼノウ一家の部隊が、突然、紀彗軍の中を斜めに横切って進軍していきます。彼らの標的は、飛信隊を追い詰めるため、丘の下に出た「慶舎」本人です。


張り巡らせた「網」の中で獲物を狙う戦法を取る「慶舎」が桓騎によって網の外へ誘い出され、標的となった瞬間です。


しかし、ここで慶舎を救うのは、離眼城の城主・紀彗の軍勢です。本隊はゼノウたちの攻めをくい止め、馬呈たちが信たちとの戦いを休止して、慶舎救出へと駆けつけ、慶舎はゼノウたちの包囲からかろうじて奪取したか、と思えたのですが、ここで、予想外の動きをする武将・信が・・、という展開です。


第44巻 信、趙軍の総大将慶舎を斃す。そして、桓騎の奇策炸裂。


第44巻の構成は


第471話 執念の追撃翦

第472話 ”凶”

第473話 歓喜の撤退

第474話 趙将の責務

第475話 動揺のその先

第476話 煙の真実

第477話 衿持の咆哮

第478話 殴り込みの末

第479話 尾平の叫び

第480話 尾平と飛信隊

第481話 苛烈な贈物


となっていて、紀彗・馬呈たちによって、ゼノウ一家の急襲から脱した慶舎だったのですが、彼が本陣へ戻り軍を立て直すまでを狙って、趙軍の意識の外におかれている飛信隊が慶舎を急襲します。


飛信隊の攻撃をかいくぐって脱出しようとするところを、那貴の遊軍部隊が抑え、慶舎と信の一騎打ちで決着がつけられます。


ちなみに、途中、この異変に気づい紀彗軍の劉冬が急遽防戦に回るのですが、行方がわからなかった羌瘣が戦線復帰。劉冬との再度の一騎打ちを繰り広げ、彼を斃しています。


この慶舎と劉冬の戦死は中央丘の右部と中央部を守る金毛と紀彗がまず知ることになります。この丘の戦略的価値をよく知る紀彗は、退却しようとする金毛を説得し、ひとまず戦死の情報を隠し、趙軍総力で桓騎軍へ攻めかかります。


趙軍の戦い方を観察した上で、桓騎軍の拷問部隊・砂鬼一家にある情報を引き出させた桓騎は、なんとこの段階で、中央丘からの秦の全軍撤退を命じます。激しい戦闘から一転して、中央丘は趙軍が占拠することとなります。


敵・見方とも桓騎将軍の狙いが全く見えない中、戦争五日目に入った朝、黒羊丘の樹林のあちこちで黒煙があがってきます。羌瘣が手当をうけたのと同じような樹林内にある小さな集落が桓騎軍の焼き討ちにあい、女子供を含む住民たちが桓騎軍によって虐殺、略奪をうけています。


そして、住民たちの死体が集められ、どこかに運ばれようとするのを目撃した信と羌瘣は怒り狂い、桓騎軍の本陣に乗り込み、桓騎と大バトルを繰り広げることとなるのですが、詳細は原書のほうで。


村焼きをとめようとする信の熱い思いと、桓騎軍に一時配属になっていた尾平との対立、それをきっかけに飛信隊がさらにしっかりと結束を固める様子をしっかりと読んでくださいね。


この内輪もめが終わった午後、桓騎の「攻撃」が始まります。黒羊丘で虐殺した住民の死体でつくったアーチを趙軍の砦のすぐそばに設置し、砦を守る「紀彗」に手紙を贈るのですが、そこには

これ以上の惨劇を

お前の離眼城で起こしてやる故

楽しみにしていろ

と紀彗を攻撃する桓騎の奇策が書かれています。


そして、桓騎自身は中央丘を攻撃することなく、包囲を解いて、離眼城目指して進軍していくのですが・・・。


第45巻 黒羊丘攻略戦は秦勝利。李牧は政に宣戦布告する


第45巻の構成は


第482話 離眼と趙国

第483話 勝敗の夜ふけ

第484話 それぞれの出発

第485話 蒙恬の報せ

第486話 文官達の戦い

第487話 東西大王会議

第488話 秦王の絵図

第489話 蔡沢の襟持

第490話 宿命の舌戦

第491話 秦の障壁

第492話 成長への募兵


となっていて、前巻で桓騎が紀彗にしかけた奇策が効果を発揮し始めます。


丘を捨てて、離眼城に戻り、桓騎軍から住民を守ると言い張る紀彗に対し、趙将の金毛は、この丘を捨てて黒羊丘一帯が秦の支配下にはいれば、ここを拠点にして趙国の西部一帯が危うくなると説くのですが、紀彗の決断は、といったところが読みどころですね。

まあ、敵軍の捕虜となった住民を救うために生命を投げ出した前城主の跡目を継いで城主となった紀彗に選択肢はなかったように思います。


このあたりのやり口は悪どいながらも、桓騎しかできない、敵味方とも一番損害の少ない戦略であったことは間違いないところです。


第45巻の中程からは、軍による戦争は一旦休止、外交戦の場面に移ります。


黒羊戦の休戦から数日後、秦の都・咸陽を秦の外交を司る蔡沢が、趙の宰相・李牧と斉王「建」が来秦し、「政」との会談がそれぞれもたれることになります。


まずは、斉王・田建との会談です。斉は四年前の合従軍編成の際、蔡沢の説得によりただ一国、合従軍から抜け、そのおかげで背後にいる斉を警戒して、五カ国が全軍を動員できなかったことで秦も相当助かっています。


その合従軍を抜けた理由を斉王は

合従が秦を滅ぼして

その土地と人間を六国で取り合った後の世が

見るに耐えぬ汚濁になると思ったからだ

と語るのですが、政が目指す中原統一はそれ以上の「汚濁」をもたらすのではと疑っています。もし、そうであるなら、趙の李牧と結んで新たな合従軍を起こすと政に告げます。


斉王は中原統一によって国を滅ぼされ、敵国の征服され、強制的に「秦人」にされる六国の民の苦しみを救う方策を今示せと、政に迫ります。政は中原統一は

新国建国の戦争だ

と説明し、「秦人は決して支配者となってはならない」とし、「人」によらない統治原理を訴えるですが、斉王の反応は・・といった展開です。少しネタバレすると「大躍進」とはいかないまでも、少なくとも敵になる人は減りましたね。


この次の会談相手は、趙の李牧なのですが、彼は政に対し直接「中原統一」の夢を諦めるよう要請します。中原統一の理想は崇高でも、そこに至るまでに多くの血が流され、多くの人が死ぬことを思い、彼は「七カ国同盟」を提案します。「他国との戦争」だけを禁じた盟約を結び、それに違反した国は残る六カ国で攻め滅ぼす、というものなのですが、一言のもとに政は否定します。


その理由については、本書のほうで読んでほしいのですが、合従軍で攻撃された経験をもつ「政」にすれば否定して当たり前かもしれません。


そういえば、「政」の言葉に理解を示した斉王の国も以前、合従軍に攻められ滅亡の寸前まで追い詰められていますね。


レビュアーの一言>政の「法治国家」は理想の国家か?


中原統一に対する斉王の疑問に、征は統一後にできる国は「法治国家だ」と高らかに宣言していて、王侯貴族の専制の激しかった当時における解答の一つであることは間違いないのですが、統一後の「秦」が趙高や李斯による専制を招き、さらに厳しすぎる「法」により罪人となった陳勝・呉広や劉邦によって「秦帝国」が二代で亡んだことを考えると、微妙なところがありますね。


さらに、会談後に斉王が食事をしている席で給仕をする秦人に

正に、秦の米に、秦の肉に、秦の野菜か

ならば、明日よりこれらすべてを

趙の米、趙の肉、趙の野菜と言わねばならぬとしたら

そなたらはどう思う?

と聞くと「許し難きことです」という答えが返ってきてことを考えると、なかなか精神面でも「中原統一」には難しいことが含まれていそう

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