嬴政と信はクーデターを跳ね除け、王権奪還=キングダム1~5「王都奪還篇」(ヤングジャンプコミックス)

2021年9月11日土曜日

キングダム

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 中国の春秋戦国時代の末期、乱立していた諸国も秦、趙、魏、韓、斉、楚、燕の七カ国体制が長く続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズの第1弾から第5弾までを総解説します。

このタームでは、シリーズの二人の主人公の「政」と「信」が出会い、最初は反発し合いながらも、いつの間にかそれぞれの「志」を理解しあい、異母弟と重臣の起こしたクーデターをひっくり返すところまでが描かれます。このキングダム・シリーズは、「政」が実母や実の父親から実権を奪い、中華統一を果たすため、他の五カ国と権謀術数を繰り広げる姿と他の五カ国との戦乱の中で、「信」が仲間たちとともに敵と死闘を切り広げながら、武将として成長していく姿が描かれていくのですが、この最初のタームは、本格的な活動を開始するまでの助走期間と考えればいいでしょう。


あらすじと注目ポイント


第1巻 戦争孤児「信」は秦王・嬴政と出会う



第1巻の構成は

第1話 無名の少年
第2話 地図
第3話 身代わり
第4話 反乱軍の手
第5話 異母弟
第6話 漂の決意
第7話 南方から来た刺客
第8話 秦の怪鳥

となっていて、この物語の主人公となる戦争孤児の「信」と彼の親友の「漂」の登場です。二人は度重なる戦乱で親や家を失い、現在は村内の有力者のもとで奴隷のような下僕生活をおくっています。


中国では、家庭内の「奴婢」制度は20世紀に至るまで残っていたようですが、人が人を所有するという形の「奴隷制度」はこの物語の舞台である「戦国時代」にはなくなりはじめていたようですが、信や漂のように、実質的な隷属関係にある人々はかなりの数いたと思われます。

この下僕生活をおくる二人は、将来、将軍となることを夢見て、剣の独学修行を二人で行っています。実際のところ、こうした社会の下層部分から将軍に成り上がっていく例はごくごく稀であったとおもわれるのですが、後の時代の陳勝、呉広や漢の王朝を築いた劉邦のように一般民から天下を治める地位になりあがることが可能であった時代を表しています。


そして、二人のうち「漂」が秦の高官・昌文君に連れられ、秦の宮廷に仕官します。昌文君はもともと「楚」国の王族だったのですが、秦に人質に出され、その後、政に仕えた人物ですね。この秦の王宮入りした「漂」が傷ついて村へ帰還してくるのですが、これがきっかけで、異母弟のクーデターによって王宮を追われている秦王・嬴政と出会い、「漂」の思いを晴らすため、大将軍への途を目指していくことになります。


第一巻では、信が政と出会った後、クーデターを起こした異母弟・成蟜と手を組んだ左丞相が派遣する刺客たちと信との死闘や、カネ目当てに政の逃亡を助ける、山の民出身の河了貂と出会い、昌文君と合流するために、古の秦王で、「春秋の五覇」と呼ばれた「繆公」と山の民が盟約を結んだ庭園に至るまでが描かれます。


第2巻 「信」は昌文君と合流し、共に反乱軍打倒を目指す



第2巻の構成は

第9話 山の民
第10話 油断
第11話 不退転
第12話 忠臣
第13話 熱き合戦
第14話 将軍への道
第15話 呂丞相
第16話 馬酒兵三百
第17話 遭遇
第18話 託す思い
第19話 驚愕の世界

となっていて、冒頭の部分では、クーデター派の竭丞相の送り込んだ吹き矢を使う越人の刺客「ムタ」と信と戦いです。


ここで、信は政を守ることによって昌文君たちの信頼を得るのですが、彼らから戸籍登録ももたない「信」は兵士にすらなれないことを知らさせるのですが、「政」が王宮復帰すれば、家や土地といった褒美のほかに「自由民」の身分を回復させることを約束させ、「大将軍」となっていく入り口を確保することになります。


しかし、ここで政が王宮復帰するには新たな障害があることが、刺客・ムタの口から語られます。

本来なら、政の味方になるはずの呂丞相が、政の異母弟・成蟜がクーデター後に即位するときを狙って、成蟜を王朝の簒奪者として糾弾し、王宮に攻め込み、その勢いで呂丞相自ら王位につくことを企んでいることを知ります。

このため、政や王昌君、信たちは、竭丞相や呂丞相のどちらにも味方していない、第三勢力を求めて、山の民へと交渉をもちかけていくこととなります。


この山の民の王国は、山岳地帯の山を切り開いた崖に、多くの建物群をつくっているような描写がされています。

この山の民の王国の勢力が実在したかどうかは、ネットでもいろいろ議論されているのですが、ありえそうなのは、現在の四川地方、昔は「蜀」と言われていた地域の勢力ではないかと想います。この地域にあった「古蜀」という国が、政の曽祖父である昭王の時代に秦に併合されているのですが、このへんがモデルかな、と思ってます。


第3巻 山の王は嬴政に味方し、嬴政軍の反撃開始



第3巻の構成は

第20話 楊端和
第21話 余談
第22話 盟
第23話 太子の座
第24話 騎兵の夢
第25話 3千対8万
第26話 王都咸陽
第27話 開門
第28話 先陣
第29話 電光石火
第30話 対面

となっていて、山の民の王国の領土に踏み込んだ政は、彼ら山の民に加勢を頼みますが、山の民の王「楊端和」は、繆公時代に結んだ友好の盟約が風化し、山の民が圧迫されてきた歴史から、なかなか首を縦にふらないどころか、みせしめのため、捕縛した信や壁たちを処刑しょうとします。ここで、山の民を味方にするため、政は荒削りではあるのですが「中華統一」の構想を語ります。それを聞いた楊端和の判断は・・という展開です。


この場面で、山の民の王・楊端和が女性であることと、彼女の野望が山岳地帯の統治だけではないことが明らかになります。


ちなみに、「楊端和」は史書にも登場する秦の武将なのですが、史実では、男性で、おそらく「山の民」出身ではありませんね。

さて、政に味方することを決めた楊端和は3千の兵士を連れて、秦都・咸陽へ向けて進軍します。しかし、都の竭丞相は8万の兵士を集めていることがわかります(もっとも、この大軍は、政の奪還戦に備えてというより、呂丞相の率いる25万の秦国軍への対抗用のようですが)。

この圧倒的な兵力差をどうにかするため、政・楊端和は、山の民軍が竭丞相側に味方すると偽り、同盟を結ぶという名目で王城内に入り込むことに成功し・・・という展開です。


第4巻 王宮突入。「王弟・成蟜+竭丞相」軍と対決



第4巻の構成は

第31話 魏興の弩行隊
第32話 人斬り長
第33話 触発
第34話 逆上
第35話 合力
第36話 あざ笑う王弟
第37話 仇
第38話 ランカイ
第39話 バジオウ
第40話 悪
第41話 決定打

となっていて、王城内に入り込んだ秦王軍は、楊端和と政率いる本隊と右側の回廊から本殿にいる成蟜を目指す遊撃隊の二手に分かれて進みます


本編の主人公・信は遊撃隊のほうに参加しているのですが、彼らの前に立ちふさがったのが、竭丞相の右腕・肆氏のもとで要人の暗殺を任務としていた「左慈」です。
結論からいくと、捨て身でかかってくる信によって倒されてしまうのですが、そこに至るまでには、山の民や壁たち味方にも大きな損害がでてしまいます。ここのバトルの詳細は原書のほうで。


そして、左慈を倒した「信」たちは、成蟜と竭丞相たちがこもる玉座の間に乱入します。往生内で近衛兵と戦う政と楊端和たちや、城外で待機する山の民軍の運命も、この玉座の間にいる成蟜と竭丞相たち首謀者を斃せるかどうかにかかっているんですが、ここで立ちふさがるのが成蟜がボディガードとしている怪人・ランカイです。怪力である上に、剣も弾き飛ばすほど防御力の強いランカイに、山の民のバジオウ、タリフ、そして、壁からのアドバイスで「剣」の技に目覚めた信が立ち向かいます。


ちなみに、ランカイをけしかける場面での、「優生思想」丸出しの成蟜の発言にはイラッとくること間違いなしなので、ここはしっかり「怒り」を溜め込んでおくと次巻の最終決着での「爽快感」が増すと想います。


第5巻 成蟜・竭丞相の反乱終結



第5巻の構成は

第42話 夢幻
第43話 怪鳥飛来
第44話 昭王
第45話 対峙
第46話 兄弟
第47話 最初の城
第48話 募集
第49話 伍
第50話 魏国軍
第51話 再会
第52話 蛇甘平原
番外編 黒卑村回想

となっていて、前巻で暴れまくっていたランカイも、バジオウ・タリフ・信の共同攻撃によって、すっかり戦意を失ってしまいます。


そして、信たちの次の標的は、王弟・成蟜と竭丞相。ただ、彼らの往生際はあまりいいものではありませんね。特に成蟜や竭丞相のセリフは、

きっ、貴様ら

まさか、この俺をっ

下民の分際で王族である、この俺を

斬ろうとでも言うのかーー

という高飛車なものです。これから政が起こそうとしている中華統一による大戦乱がもたらす「旧来の秩序の大崩壊」という事態を理解していない気がします。

そして、このクーデターが失敗に終わろうとするとき、昭王の時代に秦軍を動かしていた王騎将軍が登場します。彼は、クーデター側の武将・魏郷を造作なく斬り飛ばして、反乱軍の動きを封じた後、政に「貴方様は、どのような王を目指しておられますか?」と尋ねます。戦争に明け暮れ、秦の版図を最大に拡大した「戦神」昭王に仕え、昭王の死後は表舞台から退いたままになっている王騎が、これからどう動くのかを確かめるための質問ですね。
これに対し政は「中華の唯一王だ」と答えさらに

だが、もし俺と共に戦いたいと願うなら

昭王の死を受け入れ、一度地に足をつけよ

中華に羽ばたくのはそれからだ”秦の怪鳥”よ!

とも王騎に言い放つのですが、さて、それを聞いた王騎の判断は・・というところですね。

第5巻の後半では、いよいよ信が歩兵の応募して、秦国軍の一員となって大将軍を目指していくのですが、このあたりのレビューは、第6巻のレビューに含めていきますので、ご了解を。


レビュアーの一言

大人気シリーズとなった「キングダム」で注目しておきたいのは、中華を統一した「秦王・嬴政」に人間らしい別の姿を提示されてきたことではないでしょうか。
いままでの彼のイメージは、他の六カ国を無慈悲に攻め滅ぼし、阿房宮や陵墓の建設で民衆を使役し、統治体制としては、「法」による厳格支配で相互信頼を失わせた、という負のイメージ。
これに対して、若く、政権を担当し始めたばかりの「政」の違う姿は新鮮でありました。もっとも、「達人伝」のように、滅ぼされた六カ国の立場からは異論もあるかと思いますので、両方のマンガを読み比べるのもよいかと思います。

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