博物学者のルーツは「自然」にあった=ヤマザキマリ「プリニウス」11(バンチコミックス)

2021年10月9日土曜日

プリニウス

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 古代ローマ時代の政治家で、天文、塵、動植物、鉱物、地理などなど当時の世界の情報を集めた「博物誌」をまとめた「プリニウス」とローマに放火して焼き尽くし、「暗君」の見本のように扱われている「ネロ」をメインキャストにした、古代ローマの「叙事詩的」物語である『ヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」(BUNCH COMICS)』シリーズの第11巻。


前巻で古代ローマ帝国で有数の暴君と言われる「ネロ」が民衆の反乱や元老院のクーデターの末に強制的に自決されたところが描かれたのですが、今巻では現代の騒乱から離れて、本シリーズの主人公であるプリニウスの幼年時代と青年時代が描かれます。


あらすじと注目ポイント


構成は


71.コムム

72.マルクス

73.スギナ

74.ムーターティオー

75.リウィア

76.オウィディウス

77.ポンポニウス


となっていて、プリニウスはイタリア北部の現在のロンバルディア州のコモ(当時の名前はコムム)で生まれたとされています。コムムは古代の青銅器時代のケルト人の遺跡も残っているところで、紀元前1世紀から古代ローマの支配下に入っている歴史のあるところですが、スイス国境近くの自然豊かな「田舎」であることは間違いなく、こういう環境がプリニウスの精神形成に大きく影響したことは間違いないですね。


さらに、彼が召使いのグラエキア人(南イタリアのギリシア人の植民地)との会話で、カルタゴのハンニバル将軍がコムムから見えるピレネーを越えてきた話を日常的にやっていて、彼のローマを超えた国際性のもとにもなっているように思えます。


プリニウスの家系がどういうものだったかは本シリーズの記述でもネットでもよくわからなかったのですが、ローマへの留学とか、ミラノから琥珀をとりよせていたり、と裕福な階級であることは間違いないですね。

そんな彼が学校で石工の息子マルクスと友達になるのですが、マルクスは父親の急死とその後、家計を支えていた兄が殺されたことにより、一家離散してしまいます。プリニウスがセレブでありながら庶民や異民族と交際することに抵抗なかった彼の基礎はこのへんにあるのだと思います。


そして、後半部分では、ローマに来て、学問に気を取られて、恩師の孫である「リゥイア」との恋を失う姿が描かれています。プリニウスの甥の記録によると「夜明け前から仕事をはじめ、勉強している時間以外はすべて無駄な時間と考え、読書をやめるのは浴槽に入っている時間だけだった」ということですので、真面目な堅物さが影響したんでしょうね。


この生涯唯一といってもいい恋に敗れたプリニウスは、軍隊に入りゲルマニアへの遠征軍に参加しています。当時のローマは傭兵制度ではなかったと思われるので、いわゆる「市民の義務」として参加したのでしょうが、ここで山岳地帯生まれを生かして武功をたてているのですが、詳細は原書のほうで。


レビュアーの一言


今巻の後半のところでは、ハチミツ漬けになった「半人半馬」が登場してきています。


プリニウスの「博物誌」には、その目でみられると石化する毒蛇「バシリスク」とか、エチオピアに生息し、顔は人間、体は獅子、尻尾はサソリのようで、人間の声を真似るという「マンティコア」や不思議な人類とかが登場してくるのですが、今回は姿のみ紹介されてます。

おそらくは、日本の各地に伝わっている怪物と同じような「合成品」なのでしょうが、もうちょっと「掘って」もらえるとありがたかったですね。本書によると「アエギュプトゥス」つまり「エジプト」のものらしいですが、ミイラ化の技術が活かされているのでしょうか。

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