海軍の新型機審査会の行方は?=アルキメデスの大戦7〜8「 新型戦闘機開発篇」その2(ヤングマガジンコミックス)

2021年10月24日日曜日

アルキメデスの大戦

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 世界大戦へと進んでいく日本の運命を変えるため、その象徴となる「戦艦大和建造」を阻止するため。海軍に入り、内部から太平洋戦争をとめようとする天才数学者の姿を描いたシリーズ『三田紀房「アルキメデスの大戦」(ヤングマガジンコミックス)』シリーズの第7弾から第8弾。


前巻でくすぶり続ける「大和建造計画」の息の根を止めてしまうため、航空母艦と航空機を戦略の中心とする「航空主兵主義」の中心を担う新型航空機の開発を、海軍の航空廠を中心に始めた櫂少佐たちなのですが、いよいよ堀越二郎率いる三菱重工と小山悌率いる中島飛行機の開発する新型機との、採択をかけた審査会での勝負が始まります。


あらすじと注目ポイント


第7巻 三菱との対決勝負に航空廠機の作戦は?


第7巻の構成は


第59話 ロンドン海軍軍縮会議

第60話 機体の調整

第61話 航空燃料

第62話 三菱の搭乗員

第63話 先制攻撃

第64話 前日の夜

第65話 霞ヶ浦航空隊

第66話 ハイヨーヨー

第67話 地上にて

第68話 採用機決定


となっていて、当初、半年間はかけるであろうと思われていた、新型機の審査会の期間が突如2日間に短縮されます。


その背景には、ロンドン海軍軍縮会議の決裂にあります。この交渉が決裂し、列強各国の軍備競争のタガが外れたことで、海軍内の大艦巨砲派が勢いづい巨艦製造へと舵が切られることを山本五十六中将たちが警戒したことがあるんですが、櫂たちにとっては、審査会の一発勝負感がどんどん強まっていくわけですね。


そして審査の行方は、櫂たち海軍航空廠機を操縦する「八神中尉」と、彼の海軍時代の師匠で今は退役して三菱重工の雇われパイロイットの「乾」との空戦勝負の結果次第となるのですが・・・といった展開です。


二人のパイロットの技量を尽くした空中戦が展開されていきますので、詳細は原書のほうでお楽しみくださいね。


しかし、採用機の決定会議のほうでは、この空戦の結果とは別に、装備に要する経費の多寡ですとか、日本海軍の伝統戦法が「旋回戦」であるとか、周辺側からの意見の影響力が大きくて、三菱を推す声が大きく、航空廠勢はとたんに劣勢になります。


ここらは国際大会の代表選考で、指名した大会の結果一発勝負で決めるアメリカの陸上界と今までの実績とか業界への貢献度で決定する日本の陸上界の違いを彷彿させるところですね。


第8巻 着艦試験に最後の望みをつなげ


第8巻の構成は


第69話 残された可能性

第70話 延長戦

第71話 ドイツ人と数学

第72話 混沌のドイツ

第73話 着艦試験開始

第74話 一発本番

第75話 延長戦の結末

第76話 ドイツの技術

第77話 シュバルツの真意

第78話 マル3計画


となっていて、最終選考の会議でベテラン搭乗員の源田大尉の熱弁で、堀越設計の「三菱重工機」が採用機となります。


しかし、ここで櫂は今まで考慮されていなかった「空母への着艦」能力について疑義をはさみます。


ここで一番最初に、三菱重工で堀越に疑問をぶつけたことが活きてくるのですが、着艦試験を提案するのと同時に、三菱機が失敗した時の備えて、航空廠機のスタンバイを始めるところが彼の深謀遠慮というか、人の悪さですね。


そして、着艦試験で、櫂が懸念したとおり、逆ガル機の弱点ともいえる風に煽られやすいという弱点が出て、三菱機は着艦に失敗し、空母の甲板を外れて落水してしまいます。空母艦載機としては致命的な失敗ですね。


この結果、海軍の新鋭機としては、航空廠の戦闘機が採用されることになるのですが、ここで櫂は航空廠機のデザインが三菱の機体の翼の部分を改変しただけのものであることや、エンジンは中島飛行機のものを転用していることを説明し、その量産バージョンは三菱で製作することとなるようです。官優先によって民間技術が消えてしまわなかったことはほっとする場面です。


そしてこの後、この着艦試験を見学していたドイツ軍艦部との技術提供の場面で、櫂少佐の交渉術が炸裂し、ドイツ軍から最新技術である「ガスタービン機関」の技術も手に入れることに成功するのですが、ここは原書のほうでご確認ください。


レビュアーの一言


最終審査の欄外ともいえる「着艦試験」で見事に空母に着艦し、失敗した三菱機に替わって採用機となった航空廠機なのですが、量産バージョンは、三菱重工で受注することとなります。

ちょっと疑問なのは、航空廠機は乗組員の安全を守るための装甲であるとか、燃料タンクのゴム皮膜とかの装備を施していたはずなのですが、この量産機となる「ゼロ戦」は、「ゼロファイター」と言う名称とあわせて終戦近くでは「ゼロライター」と言われるような防御力の低さがアメリカ軍に指摘されていたというところが腑に落ちないところです。量産過程の中で旋回性能や高速性能を高めるために、「防御力」ということが軍の上部によって軽視されていったとすれば、攻撃を最優先した日本軍の特徴とはいえ、パイロットの消耗を招く持続性を忘れた戦略といわざるをえませんね。




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