アイルランドの貧乏少女は、ニューヨークギャングに出会う=北野詠一「片喰と黄金」2・3(コミックDAYSコミックス)

2022年10月16日日曜日

歴史コミック

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 土地のほとんどをイギリス人の地主たちに所有され、慢性的に食料不足の状態におかれている状況の重ねて、人々が主食にしているジャガイモの伝染病で国中が飢饉となったアイルランドから、ゴールドラッシュのアメリカへ一攫千金を狙ったやってきたアイリッシュ少女・アメリアとその従僕・コナーの冒険を描く「片喰と黄金」シリーズの第2弾と第3弾。


スタートの第一巻では、港を目指す途中で知り合った、アメリカへ渡航するつもりが愛娘で断念した農夫の資金援助や、偽ダラとの移民船生活を経てようやくアメリカへ到達したアメリアたちだったのですが、ニューヨークでアイリッシュ嫌いのギャング団のリーダーとトラブルを起こしたり、と前途多難なアメリカ東海岸の旅が始まります。


あらすじと注目ポイント


第2巻 アメリアはニューヨークのギャング団と出会う


第2巻の構成は


第5話 ニューヨーク③

第6話 ニューヨーク④

第7話 ニューヨーク⑤

第8話 コニーアイランド

第9話 ニュージャージー


となっていて、第1巻の最後で、当時ニューヨークで最凶といわれたギャング団・バワリーボーイズのボスでアイリッシュ嫌いの「ビル・ザ・ブッチャー」に誤って頭突きをくらわしてしまったせいで、ギャング団につかまり、倉庫に監禁されることになります。


アメリカの移民排斥は公式には1882年に制定された中国人排斥法から始まるとされているのですが、非公式には州政府によってヨーロッパ系移民、特にアイルランドからの貧しい移民については強制送還などの措置がとられていたのが実態で、アメリカがぶつかったビル・ザ・ブッチャーは、排斥主義者の筆頭格ですね。


今回、アメリアたちが監禁されのは、移民が増えつつあるニューヨークで、ブッチャーにアイリッシュに対する免疫をつけようと、ブッチャーの片腕であるイライジャが計画によるもので、アメリアたちとブッチャーを一定期間、同室で過ごさせようというもので、ギャング団のイメージアップを狙ったものというふれこみなのですが、実は、黒い陰謀がかくされていて・・という展開です。


物語の中盤では、ボルチモアを目指しながら地図を読み間違えて到達したコニーアイランドで、日本人の漂流者あがりのジョン万次郎と出会います。


ジョン万次郎は1846年から数年間、捕鯨船員として暮らし、1849年にニュー別途フォードに戻って恩人のホイットフィールド船長と再会後、日本へ帰る資金を稼ぐため、ゴールドラッシュのカルフォルニアに向かっているのですが、本書では、日本へ帰ろうという気持ちにさせたのはアメリアの示唆のように描かれています。


最終話では、アメリアたちと同じカリフォルニアの黄金探しに向かっているマイルスたちの荷馬車の同乗させてもらうのですが、ニューヨークでのブッチャーとのトラブルのせいで、すっかりなうての女ギャングと間違えられていて・・という筋立てです。


第3巻 アメリアは、アイルランド移民の夫婦のてひどい拒絶と歓待に会う


第3巻の構成は


第10話 ボルチモア①

第11話 ボルチモア②

第12話 グレートフォールズ①

第13話 グレートフォールズ②

第14話 B&O鉄道


となっていて、第2巻の最終話で知り合ったマイルスたちとともにボルチモアに到着したアメリアは、移民船で偽ダラから譲り受けた手紙の差出人である本物のダラの親戚のもとを訪ねます。


彼女はこの手紙を瀕死だったダラから譲り受け、これを届けにやってきたという設定で、その親戚に食事や宿泊の提供を受けようという魂胆なのですが、いざ、その親戚に出会ったしまうとアメリアは嘘をつくことができず「私はダラさんの遺体から手紙とお金を盗んだ」と偽ダラから聞いたことを正直に言ってしまい、相手からは・・という展開です。


嘘のつけなかったアメリアは最初、てひどい拒絶を受けるのですが、アメリアたちのみすぼらしい様子をみたダラの義父母夫婦は、4日間だけ彼らを宿泊させてやることにします。

そして、その間を使って、アメリアたちは西海岸行きの道具をあれこれ仕入れてくるのですが、その原資はアメリアのある特技で・・という展開です。

アメリアのアイルランドでの境遇を聞いたりして、だんだんと彼女たちを受け入れていく展開が泣かせます。


ボルチモアでダラの義父母のもとに長逗留してブーツまで提供をうけたアメリアたちは、カンバーランドを目指しています。その途中で、「旅の絵描き」と名乗る「イザヤ」という男性と出会います。


イザヤ自体は身なりもよく、パトロンから資金提供を受けながら旅をしている、という謎多き存在なのですが、ひょんなことから、彼にポトマック川のメリーランド州とバージニア州の境にあるグレートフォールズでコーヒーを御馳走するという約束をしたことから、旅の仲間が増えることになり・・という展開です。


レビュアーの一言


第2巻でアメリアが出会った「ジョン万次郎」は、その後、カルフォルニアの金鉱で働いて得た資金で、日本へ渡航し、琉球から薩摩、長崎を経て、1841年の漂流以来11年ぶりの故郷の土佐へ帰郷しています。

その後は、土佐藩に武士として登用されたり、ペリー来航時からは幕府に招聘されて直参旗本として任用され、咸臨丸がアメリカ航海のときにも同行したり、と当時のトップレベルの海外通として幕末外交に貢献しています。

さらに、坂本龍馬も万次郎から聞いた世界観に影響を受けて彼の思想を形成したともいわれていて、幕末の重要人物といっていいでしょうね

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