黒沢は中田担当を外れ、河さんは書店をクビに。試練の時来る=松田奈緒子「重版出来!」14〜16(ビッグコミック)

2023年2月9日木曜日

重版出来

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オリンピック出場を目指していた女子柔道選手・黒沢心が心機一転、大手出版社・興都館の青年マンガ雑誌「バイブス」の編集部員となり、一癖も二癖もある編集者たちに揉まれながら、変人やナイーブなマンガ家たちを担当しながら編集者として成長していく、編集者のお仕事系マンガのシリーズ「重版出来!」の第14弾から第16弾。


前巻までで、業界の動きから遅れていたWeb漫画誌をリリースし、新たな一ページを開いたバイブスで、これのおかげで以前、マンガ界を去った東江絹が還ってくるという嬉しい出来事があったのですが、壁にぶつかって、「ビーヴ遷移」の新しい悪役キャラのイメージが仕上がらない作者・中田伯の精神がどんどん崩壊する危機を迎えるのがこのタームです。


構成と注目ポイント


第14巻 黒沢は中田伯の担当から外れ、”神”書店員・河さんはクビになる


第14巻の構成は


第七十八刷 雷雨!

第七十九刷 担当失格!

第八十刷 ネバ―ギブアップ!

第八十一刷 どぅわちゅうぉん! Do What You Want!

第八十二刷 みんなの居場所

第八十三刷 町の本屋さん誕生!


となっていて、冒頭では中田伯くんの精神状況がどんどん悪化していっています。彼は編集部に悪口を記した大量のファックスを送り付けるとともに、仕事場では、作品の悪役のセリフを延々呟いている姿が目撃されます。彼は、イメージ作りに苦労していたキャラクターと同化してしまっているようで、ここまで漫画家が精神状態を悪化していることに気づかなかった責任をとって、黒沢は担当を外れることに。

いままで伯と二人三脚でマンガを創ってきた黒沢に始めて訪れた試練ですね。


一方、黒沢にいろいろアドバイスをしてくれていた”神”書店員の「河」さんも、勤務先の書店から契約の打ち切りを告げられるという試練の時を迎えています。

昨今の書店の経営難の状況で、契約打ち切りはなんともしがたいのですが、「本屋」を続ける夢を捨てたくない彼女は、なじみのカフェが廃業することを知って、ある決断をします。それは、自らが本屋を起業するということで、河さんの人生もまた新たな展開へと向かっていくこととなります。


第15巻 バイブスに新編集長来る


第15巻の構成は


第八十四刷 ネバーセイ!

第八十五刷 セットアップ完了!

第八十六刷 みんな闘っている!

第八十七刷 バランス!

第八十八刷 フリークライム!

第八十九刷 ミネルヴァの梟は暮れ染める黄昏を待って飛び立つ!


となっていて、冒頭では「バイブス」の主(ヌシ)的存在であった和田編集長が異動し、後任に姉妹紙の「バンプ」編集長だった相川が新編集長として赴任してきます。彼は最年少で編集長になり、打ち切り予定であったマンガ「ネバーセイ!」を継続掲載して、初版100万部のモンスター作品に仕上げたという、腕利きの編集者です。ただ、黒沢の先輩格の「壬生」にはイヤな想い出しかないようなのが気がかりです。


新編集長・相川は「バイブス」テコ入れのため、自分が再生・メガヒットさせた「ネバーセイ!」の作者「武見」を「バイブス」でも連載させるというプランを始めます。そして、その担当編集者に武見の意見もあって、「黒沢」が抜擢されることになるのですが、実は、相川にはある企みがあって・・という展開です。


武見はいままで少年誌だけに掲載していたので、青年誌であるバイブスでは新機軸を出したいと焦っているのですがなかなかネームが仕上がらず、とうとう連載を辞めたいとまで言いだします。栗沢は、担当している高畑との対談を頼むのですが、高畑は武見の悩みが、自分の作品が「ネバーセイ!」一本しかないことにあることを見抜き、あるアドバイスをするのですが、それは・・という展開です。


この後、新編集長・相川の過剰接待による経費流用と編集プロダクションの委託経費のピンハネ疑惑も漏れ出してきて、編集部の体制が大きく変わっていくのですが、辞職した相川は、会社の力を自分の力と勘違いした典型的なパターンを踏んでいくのが悲しいですね。

最終盤のエピソードにでてくる、じいちゃんから贈られた入学祝いに込められた「心」を忘れてしまったのがそもそもの始まりだったかもしれません。


第16巻 黒沢は漫画家発掘作業開始。中田くんは「アユちゃん」に癒やされ蘇る


第16巻の構成は


第九十刷 噂の男!

第九十一刷 あたらしいわたし!

第九十二刷 again!

第九十三刷 美意識!

第九十四刷 野暮より悪いことは不誠実!

第九十五刷 夜明け前が一番暗い!


となっていて、辞職した相川編集長に代わり、五百旗頭が新編集長になっています。安井さんと五百旗頭さんの編集長譲り合いの様子は前巻に出ています。


中田伯くんの担当を外された黒沢のほうは、連載が打ち切りになり、離婚もしたため、四国に帰郷しようとしているマンガ家「野口」に新連載を依頼します。新連載のテーマは、「探偵もの」で、四国で暮らす作者と東京にいる編集者・黒沢、そして東京にいるアシスタント「リオ」の三者で、リモート&デジタルの作画作業が新鮮です。


一方、中田伯くんのほうは復調が進んでいて、ビーヴ遷移の執筆も順調に進んでいるようです。この功績者は残念ながら黒沢ではなくて、アユちゃんにあるようですね。ストーカーの気配を感じて不安がる「アユ」ちゃんをバイト先のファミレスから駅まで送る行為で、中田くんがだんだんと癒やされている気配が伝わります。


中盤では、刀剣ブームにのっかって、「ツノひめ」とコラボした刀剣図鑑をつくることになるのですが、文化局の刀に詳しい編集者・田部井と共同作業を始めたことから、「美術本」づくりに引きずり込まれていく黒沢の姿が描かれます。


レビュアーの一言


第16巻では、リモートで作画作業をする漫画家さんがでてくるのですが、これは新型コロナ禍の外出禁止で、アシスタントと離されてリモートワークを余儀なくされた作者の実体験が反映されているようです。

ネットで調べてみると、オンラインストレージにファイルを置いて、遠方のアシスタントさんと協同作業をしているマンガ家も実際いらっしゃるようですね。さらに、求人サイトを見てみると、フルリモートのアシスタント募集といった求人もゴロゴロ出ていますね。

大部屋の中で、アシスタント数名が徹夜で作業をしている、ってな風景もだんだんレアになっている時代なのかもしれません。

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