藤原史(不比等)は、中臣と物部の欠史の存在を知り、忍壁皇子に接近する=風越洞・壱村仁「ふることふひと」4・5

2023年2月26日日曜日

歴史コミック

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 乙巳の変で当時の最高権力者・蘇我入鹿を中大兄皇子と暗殺し、大化の改新で辣腕を振るった、中臣鎌足の次男として生まれ、父の死後、斜陽気味となった藤原本宗家を盛りたて、藤原一族が日本の最大支配階級となる基礎を気づいた日本古代最大級の大物・藤原不比等が自らの出生と日本の欠史を秘密を明らかにしながら、「古事記」を編纂していくシリーズ『風越洞・壱村仁「ふることふひと」(マックガーデンコミックス)』の第4弾と第5弾。


前巻までで、大君の天武の命をうけて、自らの出生を隠して女装し、「稗田阿礼」を名乗りながら、今は失われた聖徳太子の編纂した「国記」に記されている古代氏族の伝承を太安万侶に伝えて、古事記の編纂を続けていた藤原史(ふひと)だったのですが、本物の稗田阿禮に出会ったことから、失われた歴史の復活を目指していきます。


あらすじと注目ポイント


第4巻 史と阿禮は「欠史」復活のため、忍壁皇子に接触


前巻で史を訪ねてきた本当の稗田一族の長・阿禮から、聖徳太子と蘇我一族が編纂した歴史には、物部と中臣の氏族の歴史がごっそり排除されていることを知らされ、さらに幼い頃に亡くなった兄・定恵の死の原因が自分にあった記憶を取り戻した「史」は、阿禮とともに偶然、「日本書紀」を編纂している忍壁皇子に出会います。


この忍壁皇子が、今後の古事記の編纂と、聖徳太子によって葬られた「欠史」の復活に大きな関わりをもってくるので覚えておきましょう。


というのも、「史」と太安万侶が編纂している「古事記」は、一介の舎人によるものなので、時の権力者によっていつ闇に葬られてしまうかわからないため、正式な国の史書として編纂が進められている「日本書紀」のほうに、これらの欠史をもぐりこませようというのが「史」と「阿禮」の企みですね。


どうやら、「欠史」の解釈次第によっては、昔は「大君」の家系のみが「帝位」を継ぐと決まってはいなかった、という現在の権力構造を揺るがす「危ない思想」でもあるようですね。この「欠史」のさわりのあたりが本物の稗田阿禮によって本文中で語られていますので、詳しくは原書のほうで。


ただ、忍壁皇子との接触は、皇子と親しい、中臣一族の現在の長である「中臣大嶋」の介入を招き、阿禮は、大嶋の屋敷へと連行されていってしまいます。


第5巻  史は、自分をぶち殺すと宣言する蘇我の姫君に出会う


本物の稗田阿禮を中臣の氏の長者・中臣大嶋のもとへ連れ去られた「史」は、そのショックも癒えない中、安麻呂と古事記編纂を進めています。冒頭で語られるのは。日本全国で朝廷の命をうけて征服戦争を展開した「ヤマトタケル」の物語が語られていきます。このあたりは、「卑弥呼ー真説・邪馬台国」では、日下国の将軍・吉備津彦の出雲王の騙し討ちのエピソードで語られているところですね。


そして、「史」は飛鳥寺の入鹿の墓所で、「自らの手で、藤原鎌足の子・史をぶち殺す」と言い放つ、蘇我一族の「娼子(しょうし)」という女性と出会います。なんともつかみどころのないふわふわした印象を与える女性なのですが、一皮むけば、謀略好きなような気配が漂っています。


彼女が本巻で死を悼んでいる「兄」は蘇我安麻呂という人物で、大友皇子側についた蘇我赤兄たちとは袂を分かち、大海人皇子が天智天皇の病床に呼ばれた時に、天智の譲位の誘いにのらないよう忠告し、大海人の吉野脱出を助けた命の恩人なのですが、天武朝では重用されることなく、史書から姿を消しています。このへんに、娼子が史に恨みをもつ理由がかくされているのかもしれません。


一方、中臣大嶋の屋敷にやってきた阿禮は、忍壁皇子に接触し、物部氏に伝わる「石上の七支刀」の現物を拝観しています。ただ、本当の狙いは、忍壁皇子の側近の物部の一族である石上麻呂に接触することにあったようで、彼は天武天皇と帝位を争った大友皇子の死に関わる秘密を握っているようです。


さらに、史と安麻呂は「欠史」を正式に記録に残すよう、天武帝を説得するのですが・・という展開です。


レビュアーの一言


第5巻ででてくる「蘇我娼子」は、後に「史(不比等)」の正妻となる女性で、元正天皇・聖武天皇の時代に権勢をふるった藤原四兄弟のうち、武智麻呂(藤原南家の祖)、房前(藤原北家の祖)、宇合(藤原式家の祖)を産んだ女性です。

737年の天然痘の大流行によって四兄弟が相次いで死去したり、藤原仲麻呂の欄などで一時衰弱したものの、奈良時代に復活し、以後、日本政治を支配したといえる一族の源となった女性なのですが、その女性が鎌足によって滅ぼされた「蘇我氏」出身であるのは興味深いところです。

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