医療訴訟を悪用する弁護士に、変人病理医が立ち向かう=「フラジャイル」18~19(アフタヌーンKC)

2023年4月28日金曜日

フラジャイル

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 臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが、臨床医たちの誤診と傲慢や医療業界の理不尽に立ち向かっていく姿を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第18弾から第19弾。


前巻までで、遺伝子変異性の癌患者の治療を通じで、老舗蕎麦屋の一族の絆を取り戻し、新たな治療薬の開発への道を開いた岸と緩和医・稲垣。そして、古巣・アミノ製薬に復帰して、さらにパワーアップしていく間瀬と火箱だったのですが、今回は、壮望会第一総合病院への医療訴訟に、岸とザッキーこと宮崎が巻き込まれていきます。


あらすじと注目ポイント


第18巻 変人病理医・岸、病理診断の遅れの責任で患者遺族から訴えられる


第18巻の収録は

第71話 安全対策委員会

第72話 弁護士の仕事

第73話 ことの始まり

第74話 進む道を選ぶ


となっていて、冒頭では壮望会総合第一病院を相手に、ある患者の遺族から、2億円の和解金と岸の医師廃業の訴えが提起されるところから始まります。その患者は3年前に胃の腺癌で死亡した患者なのですが、3か月の間に診断が4回も変わっていて、病理診断の遅れが患者の死につながったという主張です。


病院の顧問弁護士は、岸に医療ミスを認めるよう強要し、岸がこれを断り、謝罪文を床に投げると、これに対して怒号をあげはじめ、病院との信頼関係が崩れたので顧問契約を解消する、と言い捨てて退席していきます。まあ体のいい敵前逃亡ですね。もともとそこの法律事務所は医事紛争は専門外であったため、これを幸いに逃げてった、というわけです。


そしてそこに現れたのが自ら敏腕弁護士を自称する「千石吾郎」という男性弁護士。岸の同窓の外科医・細木の個人弁護士をやっていて、彼女の押し付けもあり、勝ち負けでなく、納得させて紛争を終わらせるという彼の弁護方針をみて、胡散臭い様子はぬぐえないものの、月5万の報酬で、岸は彼と弁護士契約を結ぶこととなります。


後半部分では、岸が訴えられている事案の詳細が明らかになるとともに、彼のカンファ荒らしの始まりも明らかになっているので、詳細は原書で確認しておきましょう。


岸と病院がなぜ訴えられたかは、この死亡した患者の担当医が、現在病院を辞めて、僻地で小さな医院を開業していて、医療保険にも入っていないといあたりが関係していそうなのですが、真相は次巻の種明かしのところで明らかになります。


そして、千石と岸は、訴えている相手方への診察情報を提供し、病死の原因を説明すべきだとの岸たちの主張に賛成しようとしない病院長をたぶらかして、こちら側に引き込むことに成功するのですが、ここで思わぬ横槍が入り・・という展開です。


第19巻 医療訴訟を食い物にする弁護士たちの悪企みをぶっつぶせ


第19巻の構成は


第75話 交渉の余地

第76話 目を逸らさずに

第77話 千々に乱れて

第78話 選んだ道を進む


となっていて、病院長が心変わりした背後には、病院の医療損害保険を請け負っている会社の弁護士・宇津木が介在しているのですが、彼は岸たちを訴えている三雲と代理人の久坂弁護士との面会、連絡を禁じてきます。


さらに、賠償金を増額することで、岸への廃業の訴えを取り下げさせることに成功した、と言ってきます。実はこの裏に、宇津木と訴訟の相手方弁護士の久坂部との裏取引が隠れていて・・という筋立てですね。


この裏取引に気づいた岸と千石は、まず病院長を宇津木との会食に出向かせ、彼へ壮望会の他の訴訟案件(嘘の案件です)も頼みたいと持ち掛ける罠をかけ、彼を担当弁護士から外させることに成功します。


そして、千石は相手方弁護士の久坂部のところへ乗り込み・・といいう展開で、ここらの罠の仕掛け合いと、武器を使わないバトルのようすは原書のほうで。


そして、岸は、診療情報を訴えている、死亡した患者の娘・三雲に伝え、当時、患者の看護を担当していた神本ととともに、彼女と話し合いを始めるのですが・・という展開です。


突然に父親を失ってしまった娘の、過去のわだかまりがどうほぐされていくか。は原書のほうで読んでくださいね。


レビュアーの一言


今回のテーマとなっているのが医療訴訟」なのですが、2020年の新規訴訟件数が834件、未決着案件がおよそ1600件と高い水準で訴訟が提起されています。そして、医療訴訟の特徴の一つが平均審理期間が26.1月と通常の民事裁判の2.5倍の長さになることですね。これは「医療」」という専門的な分野での過誤を争うことが要因だろうと思われ、それは医療訴訟の勝訴率が22.2%とほかの民事訴訟に比べて高くないことにも表れているように思えます。

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