すみれとキヨ、舞妓さんとまかないさんの青春物語が始まるよ=小山愛子「舞妓さんちのまかないさん」1〜6(小学館)

2023年4月10日月曜日

舞妓さんちのまかないさん

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 だらりの帯にお座敷かごを抱え、「おこぼ」をはいた姿が特徴的な京都花街の「舞妓」さんは、芸妓になるための修行中の少女で、伝統文化の息づく京都の中でも、とりわけ目立つ「花形」的存在であるのはよく知られています。


だらりの帯にお座敷かごを抱え、「おこぼ」をはいた姿が特徴的な京都花街の「舞妓」さんは、芸妓になるための修行中の少女で、伝統文化の息づく京都の中でも、とりわけ目立つ「花形」的存在であるのはよく知られています。。


その「舞妓」さんになるには、中学卒業の後、「置屋」や「屋形」といわれるところに住み込んで、「仕込みさん」として、行儀作法や京言葉、舞踊を半年から1年間程度学んだ後、1か月程度の「見習い」期間を経て、「店出し」してお座敷デビューとなるのですが、この間、厳しい修行が続く上に、芸とおもてなしのプロとしての適性も厳しくチェックされる難関を潜り抜けなければなりません。


一流の舞妓となることを目指して、青森から京都へやってきた「すーちゃん」こと「すみれ」と舞妓さんたちに日々の食事を出し、掃除洗濯など屋形を支える「まかないさん」となった「キヨ」の頑張る毎日が描かれるのが『小山愛子「舞妓さんちのまかないさん」(小学館)』シリーズです。


主なキャスト


シリーズを通じての登場人物は


【キヨ】


 舞妓さんになれずに「まかないさん」になった極度の天然系少女。ぼんやりしているようで、「屋形」のみんなの気持ちを的確に汲んだ「まかないご飯」は絶品です。お台所大好き少女でもあります。


 舞妓さんへの夢破れたところで、「まかないさん」への道をつかむエピソードは泣かせます。(もっとも、どこまで本気で舞妓さんになろうと思っていてかは疑わしいのですが。多分に、「すみれ」につきあって京都へやってきた感じがします。)


【すーちゃん(すみれ)】


 才能にあふれる舞妓さん。中学時代は美人で成績優秀。親の反対を押し切って青森から京都へやってきて舞妓さん修行に入りました。


 踊りの稽古や客あしらいの勉強も人一倍やる頑張り屋なのですが、その一所懸命さがちょっと暑苦しいところも。


 「百はな」という名で舞妓デビューして、その才能に注目されています。


【健太】


 キヨとすみれの幼馴染。高校球児で、甲子園にあと一歩というところで怪我で断念。第15巻の最後のあたりで、高校を中途退学し、京都の洋食屋でコック見習いを始めます。すみれの「思い人」なのですが、彼はキヨの天然さのほうが気になるようで。


【「市」のおかあさん】


 キヨとすみれの働く「屋形」の女将さん。同業の中では一番の若手らしく、贈物時期のおすそわけ競争ではいつも負け組。


【めがね姉さん(つる駒さん姉さん)と理子】


 めがね姉さんは、すみれの少し先輩の舞妓さん。横浜出身で、少々ガサツなところもありますが、面倒見はいい先輩舞妓です。


 理子は、すみれが舞妓になった後に入門してきた「仕込みさん」(第6巻第54話)。背が高く、なかなか京都ことばを覚えようとせず破門の危機もあったのですが、めがね姉さんの薫陶で仕込みさん修行を続けています。二人はケンカもしますが、いいコンビです。


【百子さん姉さん】


すみれ(百はな)のお姉さん芸妓。年始に表彰されたり、贔屓のお客さんが絶えない売れっです。


【「キヨ」のばあちゃん】


 キヨは青森では、お祖母さんと一緒に中学まで過ごしています。キヨの料理好きは「ばあちゃん譲り」。キヨの両親についてはシリーズでは明らかになっていません。


となっていて、このほか舞妓さんの着付けをしてくれる男衆や、レストランの先輩などが脇を固めています。


あらすじと注目ポイント


第1巻「すーちゃん」は「仕込みさん」となり、「キヨ」は「まかないさん」となる


第1巻の収録は


第1話 京都のかわいい台所

第2話 まかないさんは16歳

第3話 キヨちゃんの一日

第4話 キヨちゃん上京す(前編)

第5話 キヨちゃん上京す(後編)

第6話 買い出しの日

第7話 おうちのカレー

第8話 雪の日の朝


となっていてシリーズの最初は舞妓さんになるために青森から京都にやってきた、キヨとすみれの「仕込みさん」修行の様子から描かれます。


学校にPRにやってきた舞妓さんに惹かれて、優等生だったすみれは両親の反対を押し切って、中学卒業後、京都で舞妓修行を開始。彼女と幼馴染だった「キヨ」も一緒に上洛し舞妓修行を始めるのですが、不器用なキヨは初期段階でダメ出しをされてしまいます。


舞妓となることを諦めて故郷の青森に帰ることとなったキヨだったのですが、屋形の賄いの女性が出産で辞めることとなり、彼女が急遽、ピンチヒッターとして屋形の舞妓さんたちのご飯をつくることになるのですが・・という展開です。


今巻でキヨのつくるまかないと思い出の料理は「親子丼」「目玉焼き(朝食)、ころっけ(昼食)、おにぎり(夜食)」「(故郷青森の)みそ貝焼き」「ハンバーグ」「マフィン」「(じゃがいも、にんじんごろごろの)カレーライス」「ひっつみ汁」というラインナップです。


第2巻 「すーちゃん」は「仕込みさん」を経ていよいよ「店出し」デビュー


第2巻の収録は


第9話 キヨちゃんとすーちゃん

第10話 特別な日のためのごはん

第11話 秘密のごはん

第12話 眠れない夜のために

第13話 ずっと決まっているもの

第14話 同じ雪を見ている

第15話 仕込みさんの朝

第16話 私の食べたいもの

第17話 見習いさんの夜

第18話 店出しのいちにち

第19話 憂える時のごはん


となっていて、冒頭の第9話では「屋形」の雑用をこなしながら行儀作法、舞踊などを勉強して「舞妓デビュー」を待つ仕込みさん修行も終わり、いよいよスミレが「店出し」となります。ただ、何事も限度いっぱいやってしまう「すみれ」なので、稽古の領も半端ではありません。


今巻は、舞妓としてデビューするスミレが「百はな」という源氏名をもらったり、髪を初めてゆったりと準備をして「店出し」をしていくところが描かれています。


デビューの重圧に押しつぶされそうになっている「百はな」への「キヨ」のお祝い料理は、青森の郷土スイーツ「なべっこ団子」です。故郷の思い出で「スミレ」の心のコリをときほぐす「キヨ」の数々の気配りにしんみりくると思います。


このほか、今巻でキヨが出すメニューは、野菜とイカをみじん切りして、米、塩、砂糖と水でまとめてからっと揚げる「イカメンチ」、じゃじめて髪を結って箱枕で睡る前に飲む「甘酒」、舞妓さん用に一口サイズにした「小っさいカツサンド」などが出てきます。舞妓となったスミレにあった食事が増えてきています。


第3巻 キヨとすみれは、京都と青森の冬の年末年始を堪能する


第3巻の収録は


第20話 夢の一枚

第21話 今日は何曜日?

第22話 おたよりを待つひと

第23話 花街のクリスマス

第24話 花街の大みそか

第25話 帰郷1日目

第26話 初詣へ

第27話 再び京都へ

第28話 仕事始めの日

第29話 始業式

第30話 白い鳩


となっていて、季節は冬になっています。青森では雪になっていて、故郷に残っている幼馴染の健太と京都にいるキヨの心が「雪」を通してシンクロしていきますね。


年末の定番はクリスマスなのですが、本書によると花街では特別なイベントは特に開かれることないらしいのですが、お客さんの手土産でクリスマス気分を味わっている先輩舞妓を羨む「百はな」にキヨが提供するのが余り物の生クリームといちご、フルーツの缶詰でつくる「フルーツサンド」です。お座敷が終わってかららしく、今回は「小っさく」ないようです。


そして、花街らしさが感じられるのが、大晦日まで屋形に残っている「すみれ」と「キヨ」の屋形のおかあさんから贈られる、白とピンクのうすい持ち河で作られた「福玉」です。翌日の元日におかあさんが作ったのが、かしら芋の入った白味噌仕立ての「丸もちぞうに」。これも京都らしお料理ですね。


このお雑煮も、青森に帰省後は、鶏肉、ごぼう、人参をいれた醤油ベースの汁をはり餅をいれてその上に甘辛いくるみだれをのせたものに変わっています。青森のお雑煮の特徴を調べてみたのですが、「くるみだれ」はキヨの家の独自バージョンのようですね。


そして、後半部分では花街の仕事始めのようすが描かれます。着飾ってほうぼうにあいさつ回りに忙しく出かける「百はな」たちにキヨが提供したのは、食パンの上につくりおきのホワイトソースを塗り、ハムとチーズを乗せで食パンではさみ、中央部を少し窪ませたら、卵の黄身を割り入れてオーブントースターで焼いた「クロックマダム」ですね。


第4巻 祇園は冬本番。お茶屋さん回りや「お化け」といった伝統行事が開催


第4巻の収録は


第31話 あったかいお昼

第32話 ご挨拶まわり

第33話 風邪の日は

第34話 キヨちゃんのお料理はじめ

第35話 もうひとがんばりの夜

第36話 今日もあの時も

第37話 はりきりすーちゃん

第38話 豆まき百景

第39話 お気張りの飲みもの

第40話 おねがいごはん

第41話 みんなのチョコ


となっていて、物語は冬本番を迎えています。この中で、地道に「お茶屋さん回り」をする「百はな」の姿が描かれます。お茶屋ごとに最近の様子をメモして、手土産の一筆箋にも工夫を凝らす彼女は、とても16・17歳の子供の動きとは思えないほどの気の配りようです。


前半の「風邪の日は」では、風邪をひいてしまった屋形のおかあさんの注文で、キヨが「おうどん」をつくるのですが、故郷の鰹出汁の「黒いおつゆ」のうどんとは全く違う「透き通ったおつゆに九条ネギとおあげ」のうどんづくりに奮闘するキヨちゃんが描かれます。


なかほどでは、「お化け」といわれる芸妓や舞妓が様々な姿に扮して、用意した演物を披露してお座敷を守るイベントの様子と、スミレやキヨの中学校の文化祭の様子が並行して描かれます。


この「お化け」というイベントは節分の日に行われるものなのですが、もともとは江戸時代末期に京都を中心として行われていた古い年中行事です。その日は、男性が女装をしたり、少女が大人の髪型にしたり、普段と違う扮装をして挨拶回りをした後、神社にお参りにいったというイベントで、昭和に入ると廃れていたものを、平成になって地域興しの一つとして東京や京都の花街で復活したもので、日本風ハロウィンともいわれているのですが、いつ頃から誰が始めたか定かではないようです。


第5巻 すーちゃんの「屋形」での穏やかな日々


第5巻の収録は


第42話 百はな、おするばんをする

第43話 必死な妹と、その姉

第44話 キリッと、一日

第45話 キヨちゃんはいつも通り

第46話 献立は検討中

第47話 キヨちゃんの好きなもの

第48話 すーちゃんの望むもの

第49話 みんなのすきなもの

第50話 お休みギョウザ

第51話 すーちゃんお休みの日(前編)

第52話 すーちゃんお休みの日(後編)


となっていて、今巻は大きなイベントもなく、春はまだ遠く、寒い日が続く屋形の様子が描かれています。


百はなの「姉」となる芸妓の「百子」の市民マラソンへの出場シーンや、屋形の台所でキヨの料理姿をまったりと眺めるシーンが描かれているのですが、これとあわせて青森の運動会などの思い出シーンをお楽しみください。


最後のほうでは、すーちゃんの貴重な休日の日常が描かれています。


第6巻 京都にキヨとすみれがきて1年経過。新しい仕込みさんも参入


第6巻の収録は


第53話 季節はめぐって

第54話 思えば、あの日

第55話 あたらしい仕込みさん

第56話 花は人知れず

第57話 姉さんの呼び方

第58話 かご持ちの顔

第59話 彼女を形容するならば

第60話 キヨちゃんのケーキ(前編)

第61話 キヨちゃんのケーキ(後編)

第62話 ラッキーとアンラッキー

第63話 幼なじみの風景


となっていて、キヨとすみれが京都にきてから1年になります。屋形にも新しい「仕込さん」希望者がやってくるのですが、そのカチコチの様子を見て、キヨも自分が初めて屋形にやってきた1年前を思い出しています。その時も台所から流れる煮物の香りでほっとしたこと思い出して、ある飲み物を提供するのですが・・という筋立てです。


新しい「仕込みさん」の理子は、めがね姉さん(つる駒)の付き人になるのですが、いい掛け合いを演じています。


なかほどには、春のおどりの会である「都をどり」の様子が描かれます。もともとは明治5年、京都博覧会の付属行事として、京都の芸舞妓の茶と歌舞を公開することにはじまったイベントで、140年以上にわたって続けられている大行事です。


すべての芸舞妓が、夕方からのお座敷は通常通り務め、その合間におどりの会向けの特別な踊りを習って披露するので、舞妓たちのストレスも最高潮に達するわけですな。ここで彼女たちを元気づけるキヨが提供する夜食は、冷蔵庫に残った豚バラと野菜を炒め、半熟玉子を乗せたインスタント麺のおうちの夜食ラーメンです。


巻の後半では、青森のばあちゃんから送られてきた長いもを使った「長いもすいとん」とほんのり甘い干し餅をバターで炒めた「干し餅のバター焼き」が出てきます。


レビュアーの一言


京都の「祇園」「芸舞妓」については、2022年に元舞妓さんからのTwitter投稿の影響で、いろいろの悪評がたち、このシリーズにも少なからず影響があったのですが、2023年当時も少年サンデーで連載され、アニメ化や森七菜さんと山口夏希さんのW主演で実写映画化もされています。


日常的には馴染み深いとはいえない「花街」の風情を覗く楽しみという側面は当然あるのですが、キヨとすみれという二人の少女と幼馴染の健太の青春成長物語として読んでみてもいいですね。


このシリーズは2023年春現在、22巻まで刊行されています。第16巻からは健太も本格的にフレンチのシェフ見習いを始めていて、三人の淡い恋模様も楽しみな展開になってます。


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