士官学校生徒たちは、敵国の伝統的騎兵団を最新兵器で殲滅する=「軍靴のバルツァー」5・6(バンチコミックス)

2023年4月4日火曜日

軍靴のバルツァー

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 19世紀の帝国主義まっさかりの頃、こちらの世界でいうとヨーロッパ大陸の北東部に位置する軍事国家・ヴァイセンの軍人「ベルント・バルツァー」が隣国「バーゼルランド」へ軍事顧問として派遣され、大陸の強国と弱小国の間で繰り広げられる戦争と謀略に巻き込まれながら、士官学校の生徒とともに国際政治の中心に乗り出していくプチ異世界戦争物語『中島三千恒「軍靴のバルツァー」(バンチコミックス)』シリーズの第5弾から第6弾。


前巻で、バルツァーの勧めに従って、ヴァイセン軍のトップである参謀総長と面会したアウグスト王子は、彼の奸計にひっかかり、ヴァイセンとホルベックとの領土紛争に士官学校と近衛兵を引き連れて義勇軍として参加をさせられます。


当初、戦力として期待されていなかったため、最前線から離れた兵站基地での守備任務を担当することとなったのですが、ここの守備隊の緩みを衝くかのように、ホルベック軍が押し寄せ、ヴァイセンの守備隊が壊滅する中、士官学校兵が最前線に立たされることとなります。


あらすじと注目ポイント


第5巻 士官学校生は、ホルベックの伝統的騎兵軍を殲滅する


第5巻の構成は


第21話 戦争の才能

第22話 導く者

第23話 続かぬように

第24話 罪悪感

第25話 投資先

第26話 戦争の姿


となっていて、バルツァーと士官学校生徒が駐屯している兵站基地を守るヴァイセンの守備隊は、ホルベック軍が上陸したという報せをきき、急遽、先遣隊を派遣するのですが、あっという間に蹴散らされ、勇猛なホルベック騎兵を中心とする本隊は跡からやってきた守備隊本隊も迎撃し、バルツァーたちの駐屯する村へと進軍してきます。


ヴァイセン守備隊から指揮権を受け継いだバルツァーは、動けない負傷兵を残し、後退をしていきます。戦時法であれば負傷兵は捕虜として保護され、村人たちも、ホルベック側に寝返ればなんてことはない、と考えていたようですが、ホルベック騎兵の指揮官はそんな甘い人間ではなかったことを、負傷兵や村人は思い知らされることになります。


そして、脱走兵を撃つ銃声から、バルツァーたちの位置をつかんだホルベック騎兵は、その機動力を十分に発揮して、バルツァーたち士官学校生徒隊やアウグスト王子の近衛兵たちを包囲し攻撃をしかけてきます。騎馬による攻撃で摺りつぶされそうになるところで、アウグストの近衛兵が「死兵」となった立ち塞がり、自らを犠牲にして、士官学校生徒隊を囲みから脱出させます。バルツァーはここに中世以来脈々と続く、バーゼルランド近衛兵の王族への忠誠心を見出すのですが、「伝統という楔で縛られた兵隊」と酷な評価を下しています。


近衛兵たちの犠牲で、ホルベック騎兵の包囲網を逃れ、前線からの離脱を試みるバルツァーとアウグスト、そして士官学校生徒と守備隊の負傷兵だったのですが、辿り着いた村はすでにホルベック騎兵に食料も略奪されていることを発見します。ヴァイセン軍の不甲斐ない戦いぶりに、同盟を継続するか考え直したい、と告げるアウグストに対し、バルツァーはホルベック騎兵を逆襲するある手立てを提案し・・という展開です。


ここでは、農場の納屋で発見した、当時最新鋭の農具であった鉄条網と、ヴァイセンに着いた時、砲兵科のディーダが夢中になった「役立たず」の斉射砲が、逆転の鍵となります。伝統的な騎兵が近代兵器に敗れる瞬間ですね。


第6巻 ヴァイセン・ホルベック紛争調停の国際会議開幕


第6巻の構成は


第27話 帰還

第28話 黒い霧

第29話 凱旋

第30話 国際会議

第31話 国王の力

第32話 軍靴の響き


となっていて、ホルベック騎兵を撃退して、凱旋してきたバルツァーたちだったのですが、後方の塹壕の視察を行っている時に、従軍記者をしているアンネリーゼ・ホルバインという女性記者の取材を受けます。彼女は幼い頃、青年将校の九―データ事件の現場に紛れ込んでいて、それがきっかけで記者となり、クーデター事件の関係者、特に黒幕と思われるリープクネヒトについて調査を続けてきています。彼女はバルツァーからホルベック騎兵殲滅の裏情報とひきかえに、リープクネヒトに関する情報を提供しています。それは、彼の生い立ちから始まって、アンネリーゼに語った彼の数々の煽動活動の目的、そして、ヴァイセン軍高官とのつながりで・・という内容です。


この後、バルツァーはホルベック騎兵戦の功績から、対バーゼルランド工作を行うヴァイセンの特務機関の指揮官となるのですが、その最初の仕事が、ヴァイセンの仮想敵国エルツライヒが議長国となってすすめられるヴァイセン・ホルベック紛争の戦後処理を話し合う国際会議に向けた、バーゼルランド内の親エルツライヒ派の勢力削ぎ落し工作です。この効果もあってか、バーゼルランド議会内でヴァイセンとの同盟継続は賛成多数で議決されるのですが、その裏には、同盟反対派である第一王子を操って、ヴァイセンよりの対外政策の全権をアウグスト王子に委ねろ、というリープクネヒトの企みがかくれていて・・という展開です。


そして、国際会議へ赴く交渉団の護衛として、士官学校生徒たちも駆り出されるのですが、騎兵科No1の女性騎兵ヘルムートはその選から漏れてしまいます。女性であるから、人選から洩れたと思い、意気消沈する彼女だったのですが、彼女には貴族出身の女性しかできない、ある任務が特別に用意されています。それは、アウグスト王子の随行兼護衛という任務で、ということで、滅多にみられないヘルムートの美しい姿をご覧くださいね。


この国際会議ではヴァイセンのホルベック友邦への侵攻行為も議題になるはずなので、ヴァイセン川は相当の大物が出席するかと思いきや、専権の交渉権もない一介の外交官が出席しています。


ほぼすべての議決案件に本国の意向を確かめる有様で議事進行も遅れ、各国代表の苛立ちが募っている中、バーゼルランドのアウグスト王子の発言でバーゼルランドが孤立する事態に陥るのですが、突如、明らかになったのが、ヴァイセン国王自らが国際会議に出席するというスクープです。これを契機にして、国際会議場を中心に、ヴァイセン国内の反王党派の国王暗殺の陰謀も動き始め・・という展開です。


レビュアーの一言


第5巻でホルベック騎兵を殲滅する「斉射砲」なのですが、このモデルとなっているのは、こちらの歴史ではベルギーで開発され、フランス軍に採用され普仏戦争で実戦に投入された「ミトライユーズ砲」だと思われます。この銃器はハンドルを回せば25発の銃弾が立て続けに発射され、100発/分の発射性能で、有効射程は1.8㎞と運用のやり方さえうまくいけば相当の威力を発揮したそうです。


ただ、多くの場合は、本シリーズの中でも紹介されているように、重量があるため機動性が悪く、構造が複雑で、射撃操作が難しかったこともあって、開発からわずか20年で、フランス軍は実戦配備を止めています。


一方、ミトライユーズ砲から10年後の開発されたアメリカの「ガトリング砲」は、突撃を仕掛けてきた敵兵の迎撃用や海戦用に使われ、日本でも、明治維新の際、河合継之助の指揮した長岡藩が使用したり、明治政府の軍艦・甲鉄に装着され、船の奪取を狙う榎本軍を退けたという説もあります。その後、機械発射に改良され、戦闘機搭載の機関銃としてアメリカの戦闘機中心に装着されているようです。


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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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