土方歳三は蝦夷にわたり、箱館府に戦さをしかける=「賊軍 土方歳三」8

2023年5月16日火曜日

幕末

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 新選組の副長として、近藤勇を支えるとともに、その冷徹さと智謀で知られ、倒幕の志士や薩長を恐れさせた「土方歳三」の、明治維新以後を描いたシリーズ『赤名修「賊軍 土方歳三」(イブニングコミックス)』の第8弾。

前巻では、東北の雄藩である仙台藩が、新政府派の重臣・遠藤文七郎によって新政府軍へ降伏・恭順し、奥州列藩同盟が瓦解、東武皇帝を名乗った輪王寺宮も京都へ無理やり帰還させられる中、あくまで、新政府への抵抗を貫く土方は、榎本武楊や大鳥圭介らとともに、北海道へ渡り、新たな政権「蝦夷共和国」を設立し、明治政府からの独立を目指していきます。


あらすじと注目ポイント

構成は

第52話 前触れ
第53話 帰還者たち
第54話 蝦夷上陸
第55話 勃発
第56話 袈裟懸け
第57話 射手(マッパ)
第58話 隊士の眼
第59話 軍神

となっていて、冒頭では、蝦夷へ渡るに際して、新選組の隊士たちに対して、「新選組解散」を告げる土方歳三の姿から描かれます。すでに近藤勇は刑死、永倉新八、原田左之助、斎藤一が離隊し、有名な隊員はほとんど残っていなかったのですが、生き残った隊員を無駄死にさせたくないという土方の「想い」と解釈しました。本シリーズでは、この時点で、土方は喀血していて、結核の末期だったという設定になっているので、自らは蝦夷地で幕府軍に殉じる気持ちだったと思われます。

(ちなみに、「ゴールデンカムイ」では、函館戦争後、土方は捕虜となり、合流した永倉新八や「アシリパ」たちと「アイヌの黄金」の争奪を明治政府と繰り広げています。)

中盤では、榎本武楊が指揮する旧幕府海軍の開陽、回天ほかの8隻が蝦夷地の鷲ノ木浜へ投錨し、土方歳三の最後の戦い「函館戦争」が始まります。

函館港に入港すれば、新政府の奉行所のある五稜郭への侵攻も容易なのですが、松前藩からの攻撃を避けるため、あえてこのこの鄙びた漁村へ上陸したというのが第一の理由ですが、本書では、この時、すでに「蝦夷共和国」の創設を考えていた榎本、函館港を行き来する外国船とのトラブルの発生を避けたというのも理由の一つとされています。ただ、東武皇帝擁立時と違い、この時の榎本たちは、徳川幕府の旧家臣団を迎え入れ、旧幕臣で北方防衛と蝦夷地開拓が目的で、新政権樹立は考えていなかった、という説もあるので、ここは検証が必要でしょう。

後半では、和平と全面戦争と両面をにらみながら、新政府の箱館府と交渉しようとする、榎本・土方れの蝦夷共和国側に対し、箱館府は講和を拒否し、真っ向から兵を向けてきます。土方と大鳥圭介率いる「蝦夷共和国軍」は、箱館府軍と冬の北海道で出没する「穴持たず」のヒグマと戦うこととなるのですが、その戦の結果と、新生・新選組少年隊士がどう成長していってかは、原書のほうで。

レビュアーの一言

今巻では、会津で「八重の桜」の主人公・山本八重に特訓された新選組の少年隊が土方歳三に従いて蝦夷まで行き、蝦夷共和国軍の一員として戦っているのですが、戊辰戦争ではこれ以外にも多くの少年武士が新政府軍と戦っているのがとくちょうです。有名なのは会津藩の「白虎隊」なのですが、一番悲劇的な最期となったのはなんといっても二本松藩の「日本松少年隊」でしょう。

当時、白河城に藩兵のほとんどが守備のために詰めているなか、三春藩の裏切りにより、新政府軍が空城同然の二本松城へ進軍。この守備として出陣したのが二本松藩の少年武士たちで、新政府軍の急な進撃に対応するため、兵籍へ入る年齢を15歳まで二本松藩は引き下げて対応しようとしたのですが、少年たちは、二本松藩独特の「入れ年」というしきたりで、13歳から入隊し、戦闘に加わります。

しかし、二本松藩軍は仙台藩などの応援も含めて1千、薩摩・長州などの新政府軍は7千人の兵士という兵力差で、徹底抗戦むなしく二本松城は落城し、少年兵の多くは戦死してしまいます。

しかし、急な招集のため、正式な隊名もなく、戊辰戦争の敗北により「賊軍」として扱われたため、大正6年になるまで、詳細が秘せられてきたという悲しい扱いを受けてきています。

現在では郷土を守って散っていった少年兵のために、地元の方によって7月に墓前祭が開催されているのがせめてもの慰めですかね。


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