150年ぶりの極刑を執行するサンソン一族内で世代交代がおきる=「イノサン」3・4(ヤングジャンプコミックス)

2023年6月22日木曜日

イノサン

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 フランス国王からの委託を受けて、パリで死刑を宣告された囚人の処刑を執り行う一族「サンソン家」の一員で、ルイ16世やマリーアントワネット、ロベスピエールなどフランス革命期の多くの有名人をはじめ300人の人間の首を刎ねた伝説の処刑人「シャルル・アンリ・サンソン」とその妹「マリー・ジョセフ・サンソン」を中心に、フランス革命を裏面からとらえた歴史コミック・シリーズ『坂本眞一「イノサン」(ヤングジャンプコミックス)』の第3弾と第4弾。


前巻で、ひ弱な後継ぎだったのが、自分を廃嫡しようとする父親の意向を目のあたりにして覚醒し、四代目サンソンとしてデビューしたのですが、友人「ジャン・シャルトワ」の処刑で頭を叩き潰す失態を演じ、後が無くなったところで、150年ぶりに行われる車裂きの処刑の執行を任されます。


あらすじと注目ポイント


第3巻 150年ぶりの八つ裂き刑の執行命令がサンソン家に下る


第3巻の構成は


n°21 血族の闘争

n°22 漆黒隧道

n°23 自白の審問

n°24 母に捧げる愛餐

n°25 修羅の誓い

n°26 黄熱の祭典

n°27 矜持と奇禍

n°28 紅蓮の叫び

n°29 純真のステップ

n°30 煌めく未来

n°31 気高きメメント・モリ


となっていて、前巻で知り合った、飢饉のために妻を失い、息子とともにパリへ出てきたフランソワ・ダイソンが、国王ルイ15世の暗殺を企てて捕まり、その処刑の命令がサンソン家へと下されます。その方法というのが、かつて150年前に、アンリ4世の暗殺を企てたフランソワ・ラヴァイヤックで行われて以来、執行されたことのなかった「八つ裂きの刑」です。


その残酷さと、ダイソンの犯行の真意を知っているため、執行を拒否するのですが、それを聞いて激高したサンソン家の実力者である二代目サンソンの夫人「アンヌ・マルト」がとったのは、三代目サンソンの弟で、ランスとベルサイユの処刑人をしている「二コラ・サンソン」を呼び寄せ、シャルルの手伝いをさせるというものです。

彼女はあくまでも、シャルルに執行者をさせたかったようですが、ニコラには、この150年ぶりの処刑を仕上げて、「ムッシュー・ド・パリ」(パリの処刑人・フランスの処刑人のボス)の地位を手に入れることのようですね。


そして、処刑の当日、三代目サンソンの施術で、壊死した片脚を斬り落ちすことによって命をとりとめた息子の姿を見て、ダミアンが語った、「国王暗殺未遂事件」の真相は・・という展開です。


第4巻 八つ裂き刑でおきたトラブルを幼いマリーのアイデアが解決する


第4巻の構成は


n°32 召天の流儀

n°33 絶対父権

n°34 処刑台の愛

n°35 赤いバラの蕾

n°36 血族の金科玉条

n°37 月影さやかな交声曲

n°38 まばゆき受難

n°39 開明の焔

n°40 幼き”運命の女”

n°41 無垢なる者の創世記


となっていて、冒頭から「八つ裂き刑」の執行」が続いています。「八つ裂き刑」というのは本書によると、単に手足を馬にくくりつけて引っ張らせるという単純なものではなく、それに至るまでに灼けたペンチで肉をはぎとり、そこへ煮えた油や、溶けた鉛を流し込んだり、右手に溶けた硫黄を注ぎかけたりと残虐なことを行います。


ここまでで処刑人には相当なストレスがかかるわけですが、周囲の群衆の死刑を早く、残酷にやれ、という声がさらにおいうちをかけます。

しかし、1時間以上も引っ張り続ける馬がへたりはじめ、なかなか刑の執行が終わりません。ストレスが最高潮に達したとき、シャルルに代わって刑を執行していたニコラはそれに耐えきれず卒倒してしまいます。


ニコラと刑の執行を代わったシャルルなのですが、人間の体を千切ることの難しさに直面したままで、なかなか解決策を見出すことができません。周囲の群衆の興奮は高まるばかりで、暴動寸前になってきたところで、死刑台に上がってきて「あたしがたすけてあげる」とシャルルに救いの手を差し伸べたのは、幼い妹・マリーで・・という展開です。


後半では、シャルルの危機を救ったマリーが、でしゃばった行為をしたということで、祖母のアンヌ・マルトに拷問されるのですが、ここでマリーが反攻にでます。世代交代の狼煙が上がった瞬間ですね。


レビュアーの一言


今回の刑執行となる「八つ裂き刑」は150年前のアンリ4世を暗殺した「ラヴァイヤック」以来で、この事件は、当時、カトリックとプロテスタントが内戦を繰り広げていた「ユグノー戦争」を「ナント勅令」を発布して終結させた、人気の高い王様「アンリ4世」が、狂信的で、妄想にかられたカトリック教徒の「ラヴァイヤック」によって暗殺されたというものです。


この「ラヴァイヤック」事件のとき、国王は死亡しているのに対し、ダイソンの国王傷害事件では腕にかすり傷を負って血を出したレベルですので、同じ「八つ裂き刑」を適用すべきかどうかは意見の分かれるところでしょうね。アンリ4世はブルボン朝最初の王様なのですが、それから時代を経て、この当時の治安が悪くなり、国王・貴族への不満が溜まっていることを示しているのかもしれません。

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