「恐怖の子爵」を撃退したイサックは、百挺の新式銃のあるサン・マロへ向かう=真刈信二・DOUBLE-S「イサック」15(アフタヌーンKC)

2023年6月12日月曜日

イサック

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 17世紀初頭から半ばにかけてドイツやオーストリアなどの中央ヨーロッパでカトリックとプロテスタントの間で戦われた宗教戦争「三十年戦争」を舞台に、大阪夏の陣の後、戦乱が収まった日本から、兄弟弟子が師匠のもとから盗み出した銃を取り返すため、傭兵としてやってきた火縄銃の名手「イサック」の活躍を描く戦場物語『真刈信二・DOUBLE-S「イサック」(アフタヌーンKC)』シリーズの第15弾。


前巻までで、ユーリヒ要塞を包囲するスペイン軍の「恐怖の子爵」ことビスコンデの攻撃を何度となく撃退してきたプリンツ・ハインリッヒとイサックが加わったオランダ軍守備兵たちだったのですが、スペイン軍が持ち出してきた大砲が要塞の周囲に設置され、最後の決戦が展開されます。


あらすじと注目ポイント


構成は


第71話 要塞から脱出せよ

第72話 痴れ者

第73話 誓い

第74話 港町サン・マロ

第75話 密輸船


となっていて、イサックと彼の持つ「銃」の危険性を重大視したビィスコンデは、要塞内の貯蔵されてある大量の火薬に引火させて、要塞もろともイサックや守備のオランダ兵を吹っ飛ばしてしまう計画を企てます。彼の狙撃によって味方兵が次々と撃たれ、軍全体の士気が下がってしまうのを恐れたのでしょうね。


一方、オランダ軍側は、この要塞はプレダへの補給路を確保しておく上で重要な防衛拠点であるため、両者との譲るわけにはいかない、というところです。


ビィスコンデたちは要塞の出入り口に開いた穴が狙える位置に大砲を設置して砲撃しようとするのですが、一門だけでは標準を定めているうちにイサックに狙撃されてしまい、なかなかうまくいきません。このため、夜半に乗じて大砲を四門追加し、合計五門で要塞の砲撃を計画するのですが、ここのイサックたちがつけこみます。


大砲の近くに火薬を詰めた樽を投げ上げ、大砲の発射と同時にイサックがそれを銃撃し、大量の煙を発生させ、それに紛れて要塞からの脱出を図ります。


避難用の水路から逃れるイサックやプリンツ・ハインリヒたちに、ヴィスコンデの軍隊が襲い係、船上での大バトルが展開されるのですが、詳細は原書のほうでどうぞ。


このバトルが終わったところで、対岸に逃れたイサックは


戦争が変わる。これからの戦争では無数の銃と大砲とが打ち合うだろう。・・兵士の勇気が勝敗を決めた時代は終わった。・・・これからは国の富が戦いを決する。


とハインリヒに言っているのですが、ここらは織田信長が大量の鉄砲で武田の騎馬隊を破った「設楽原の戦」と共通しているのかもしれません。

そして、精神論が先走る右系の人はここらを考えておくべきでしょう。


そして、ユトレヒト要塞を脱出したイサックはゼッタと再会し、ロレンツォを探す旅にでようとすすのですが、ここでハインリヒの連れてきた先代のオランダ総督の従者・アンリと盗品故買屋のヨナスから気になる情報を聞き出します。


ヨナスは一カ月半前、サン・マロという海賊で有名な町に商売で滞在していたのですが、男たちが海賊行為のために、出払っている隙を狙ってイギリス・オランダ・デンマークの軍隊が海賊の拠点の村を潰すために来襲してきます。町にいるのは、女子供・老人ばかりで、陥落も時間の問題化と思われたのですが、そこに立ちはだかったのが、百挺ほどの新式銃で武装した漁師の女房や娘たちです。


当時の一般的な銃の射程外にいる兵士たちに対し、女たちの撃つ弾は面白いように的中し、軍隊は大慌てで退却していったのですが、後ろのほうにある塔の上に、片脚義足の黒マントを羽織った長髪の不気味な男がそれを見ていて・・という筋立てです。


この男がロレンツォ(錬蔵)だと確信したイサックはゼッタやアンリ、ヨナスとともに、サン・マロめざして新たな旅を開始することとなります。


レビュアーの一言


イサックたちは、デルフトの港から、オランダの捕鯨船から鯨油を強奪してオランダに逆輸入しているイギリスの密輸船に乗せてもらって、サン・マロを目指す設定になっています。この密輸船はイギリス国家公認という設定になっているのですが、もともとは、こざき亜衣の「セシルの女王」やハロルド作石の「七人のシェイクスピア」でおなじみのエリザベス一世が財政難をなんとかするために、略奪品の5分の1を「海賊税」として国庫に納めれば海賊行為を黙認するとした「私掠船」がモデルになっていると思われます。


ただ、エリザバス一世が亡くなり、イギリス国王はジェームズ一世に代替わりしている、このシリーズの時代には、スペインとの関係から私掠船は禁止されているはずなのですが、財政難から海軍の予算を削減したため海軍力が大幅に低下していたので、こうした自称「公認」の「密輸船」も我が物顔で航海していた、ということかもしれません。

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