「理想の君主」でマキャベリズムの権化・チェーザレ・ボルジア登場=惣領冬実「チェーザレ」1〜3(モーニングKC)

2023年6月4日日曜日

歴史コミック

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 どんな手段や非道徳的な行為であっても、結果として国家の利益を増進させるのであれな許されるという「マキャベリズム(権謀術数主義)」を唱えた、イタリア・ルネサンス期の政治思想家であるニッコロ・マキャベリから、「理想の君主」と讃えられながら、志半ばで戦乱に斃れたチェーザレ・ボルジアの半生を描いたシリーズ『惣領冬実「チェーザレ」(モーニングKC)』の第1巻から第3巻まで。


あらすじと注目ポイント


第1巻 アンジェロは、ジョヴァンニ・デ・メディチにイジメられ、チェーザレ・ボルジアに救われる


第1巻の構成は


Virtù1 ピサの嵐

Virtù2 荒馬

Virtù3 無頼

Virtù4 嵐の予兆

Virtù5 熟した実

Virtù6 対岸


となっていて、物語は1491年、イタリアのピサのサピエンツァ大学のピサ校へ、初登校するフィレンツェからロレンツィオ・デ・メディチの好意で入学できた本シリーズの語り手となる「アンジェロ・ダ・カノッサ」の姿から始まります。

このシリーズはリアル系の歴史ものなのですが、この主人公は架空の人物のようで、ちなみに、サピエンツァ大学はローマの神学校として実在していたのですが、ピサ校があったかどうかは当方の調査では不明です。このシリーズの設定では、メディチ家の出資で設立・運営されているようです。


このため、メディチ家の当主・ロレンツィオの次男・ジョヴァンニは、フィレンツェ出身の学生で組織される「フィオレンツィーナ団」という学生集団では「閣下」とほぼ君主の子息扱いされています。


ここで、ロレンツィオ・デ・メディチの計らいで大学に入れたアンジェロはジョヴァンニに最大級の敬意を払ってもいいのですが、ジョヴァンニの敬称を間違えたり、神学の授業で、ジョバンニの説明に異を唱えたり、と持ち前のKYさを発揮します。これが後半での、ジョバンニとその取り巻きによるイジメへと結びついていきます。


ただ、この常識ハズレの行動が、スペイン出身者を牛耳る、チェーザレ・ボルジアの興味を引くこととなり・・という展開です。


第2巻 チェーザレは、教皇位を狙うボルジア家の主要戦力


第2巻の構成は


Virtù7 対岸Ⅱ

Virtù8 支配者

Virtù9 ヴァティカンの魔物

Virtù10 神曲

Virtù11 神に選ばれし者

Virtù12 光と闇

Virtù13 プリマヴェッラ

Virtù14 巨匠(マエストロ)


となっていて、前巻の最終話で、ピサの市街の中でも、反体制的な「ドメニコ会」が管轄し、スラム街も多い「キンツィカ地区」への潜入記から始まります。ここで排水路に浮かぶ赤ん坊を見て動揺したアンジェロは、残飯に群がるスラムの人々に弾きだされた子供に、持っていたパンを与えたことが因で、彼らに襲われてしまいます。


このトラブルはチェーザレをひそかに護衛している、ピサ校のスペイン出身者で組織する「スペイン団」のメンバーに救われて脱出することができたのですが、これがきっかけで、アンジェロは、チェーザレの「教皇庁を変える」という野望を知ることとなります。


中盤では場面が変わって、ローマのヴァチカン内の教皇庁へと移ります。ここで繰り広げられている、教皇の座をめぐっての、チェーザレの父「ロドリーゴ・ボルジア」とローヴェレ枢機卿との権力闘争が描かれます。


この権力闘争の重要な「駒」の一つがチェーザレで、彼はわざわざピサ校に入学して、ピサの大司教・ラファエーレの取り込み工作や、フィレンツェのメディチ家とのつなぎ役を務めているのですが、その手練手管は「若者」とは思えない老練さをみせています。


ついでにいうと、この巻でアメリカ大陸を目指して出港する前のコロンブスや、売り出し始めのレオナルド・ダ・ヴィンチ、フィレンツェで扇動的な布教活動を開始したサヴォナローラが登場しています。


第3巻 チェーザレは、フランスのマッチョを闘牛で撃退する


第3巻の構成は


Virtù15 水面下

Virtù16 衝突

Virtù17 ミノタウロス

Virtù18 異文化

Virtù19 喝采

Virtù20 新天地

Virtù21 認められざる者

Virtù22 陰翳

Virtù23 交錯

Virtù24 背信


となっていて、アンジェロのKY発言がもとで、チェーザレと、フランス団のリーダー「アンリ」とのバトルが勃発します。

なにかと優雅な国民として描かれる「フランス」なのですが、このシリーズでは、強大な軍事力のモノをいわせて周囲に攻め込んだり、干渉してくる「乱暴な国」として扱われていて、フランス人たちも、血の気の多い、力自慢だけが取り柄の、頭のよくないマッチョとして描かれています。

このへんは「フランス出羽守」は気に入らないところかもしれません。


後半部分では、メディチ家がピサで建設する工場の現場責任者にアンジェロが抜擢されます。この裏には、ジョヴァンニを説得したチェーザレが暗躍しているわけですが、その目的は何なのか気になるところです。


レビュアーの一言


この物語の1490年代当時の西ヨーロッパは、強大国・フランス、長年にわたりイスラム勢力に国土の一部を支配されていて、ようやくそれから脱したスペイン、小国が乱立しているイタリアと、ルネサンス時代として想像する「文化の花開いた時代」というイメージとは裏腹に、各国がその覇権を争い、それに教会権力がからむという「権謀術数」に渦巻く時代であったようです。

中国では明の弘治帝の時代で前代で弛緩していた国勢が建て直された字でいですが、日本は、室町幕府の8代将軍・足利義政の甥・足利魏材が10代将軍であったのですが、実権を握っていた将軍の父・足利義視が死去し、幕府内の権力闘争が激しくなっていた時代です。

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