元花魁「あお」は、奴女郎と売れっ子遊女の絆を結びなおす=安達智「あおのたつき」10・11(マンガボックス)

2023年7月10日月曜日

あおのたつき

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 江戸を代表する遊郭「新吉原」の羅生門河岸の角にある「九郎助稲荷」の奥の浮世と冥土の境にある「鎮守の社」を舞台に、売れっ子の時に死んだ花魁の霊「あお」と宮司の「楽丸」と社の主神・薄神の三人が、思いを遺して死んだ人々の霊を浄化させていく、少しコミカルなオカルト時代劇マンガ『安達智「あおのたつき」(マンガボックス)』シリーズの第10弾と第11弾です。


前巻で、山田浅右衛門家の跡取りとして盛岡藩士の家から養子に迎えられながら、人の命を軽く見た行状から破門された清五郎の生霊と、五代目・吉睦の弟子・鬼助との争いによって、鎮守の母屋が壊れたせいで、鎮守の薄神に異変が起きます。

このため、鎮守の母屋の修繕に大騒ぎとなっていくほか、あおの未練につけこむ怪しい香具師が現れたり、奴女郎と売れっ子遊女の仲をとりもつ「あお」の姿が見られます。


あらすじと注目ポイント


第10巻 祭礼に入り込む、傀儡師の甘言の「あお」が惑わされる


第10巻の構成は


其ノ肆拾参 宮繕い

其ノ肆拾肆 新御霊祭

其ノ肆拾伍 門外の香具師①

其ノ肆拾陸 門外の香具師②

番外編 融通の文


となっていて、最初の話は前巻で、一度は山田浅右衛門の家の跡継ぎとなりながら破門とされた清五郎と鬼助とのバトルで、お宮の母屋が壊れたせいで鎮守の体調が悪くなったため、宮の改修をすることとなります。大方の経費は山田朝右衛門が出すのですが、「あお」もなけなしの銭を拠出することを決心し、という筋立てで、彼女の銭を元手に、「はんぺん」づくりが始まるというなごやかなお話。


ところが好いことは続かないもので、母屋が完成したところで、他の宮司たちによって安全祈願がされるのですが、その隙をつくかのように、人形芝居の傀儡師で浮世と冥土を行き来する鳥の化身である「魂迎の文目」が入り込んできます。


彼は「あお」がこの世に未練を遺していることを見抜いて、その未練をはらしてやろうと取引をもちかけてきます。

「あお」の未練は、この世に残してきた妹・コウの身の上で、彼女が安楽に暮らすための金を届けてくれるならなんでもする、と取引に応じようとします。


傀儡子が「あお」の願いを叶えようとしたとき、谷彦三郎という大男が、馴染みの女郎に届けたいものがあると割り込みをしてきます。彼の望みは、初めて登楼がった郭の「三代待」という女郎に、年季が明けたら世帯をもとうと約束したときに「つげ櫛」を届けたいというものだったのですが、彼の望みを叶えた傀儡師が、その報酬として谷彦三郎からもらったものは・・という展開です。


「あお」の未練がどうなるか、は原書のほうでお確かめくださいね。


第11巻 元花魁「あお」は、奴女郎と売れっ子遊女の絆を結びなおす


第11巻の構成は


其ノ肆拾漆 耳塞ぎ①

其ノ肆拾捌 耳塞ぎ②

其ノ肆拾玖 耳塞ぎ③

番外編 春待ち醜男


となっていて、今回、薄神の社を訪ねてきた相談者は、影絵の「狐」の指の形の頭をもった「卯月」という元女郎です。彼女は、もとは新吉原で岡場所の遊女屋で客をとっていた遊女が、私娼の罰として、一定期間、新吉原の遊女屋に預けられて奉公させられる「奴女郎」です。


同じ遊女の身の上なのですが、人が二人以上集まると「上下関係」をつくりたがるのが人の性(さが)で、新吉原の見世にいる遊女たちは、こっちはお上の公認なんだから、ということと新吉原のしきたりを知らないと見下し、いじめを始めるのが常だったようです。


「卯月」の場合も例外ではなく、遊女の朋輩から煙管の置き方で嘘を教えられたり、タバコの灰をかけられたり、と陰湿なイジメが続きます。

そこへ、救世主のように現れたのが、卯月のいる「小河屋」の一番の売れっ子遊女の「乙女」です。彼女は酔って寝込んでいる客に添い寝しながら、影絵で一人遊びしている卯月を、なんの気まぐれか自分の部屋へ呼び寄せ、仕出し料理で作った鍋をごちそうし、その夜は一緒に過ごします。


それ以後、卯月がお気に入りで、朋輩の女郎の嫌がらせから卯月を守り、妹女郎のように面倒をみるのですが、卯月の年季が3年で明け、その後は自由の身になることを知って、突然、卯月のことが疎ましくなり、彼女を郭から追い払おうとするのですが、卯月の本当の気持ちは、これからも乙女のそばにいることです。


その遺志を伝えないまま、小河屋をでて、その後、瘡毒で死んでしまうのですが、それを伝えたくて、薄神の社にやってきた、という筋立てです。


卯月が小河屋に残ろうとして郭の女将に拒否られるといった場面や、魂となっても、なかなか「乙女」の側に近づけない卯月の様子を原書で御覧くださいね。


レビュアーの一言


第10巻では、自惚れの強い客からの「文」を何通ももらい、苦労している、現世にいたころの「濃紫」こと「あお」の姿が描かれてます。小さな見世とはいて、「あお」も遊女の最高位といえる「太夫」「花魁」の位まで出生しているので、客あしらいは手慣れたものと思われるのですが、亭主面をする、無粋な客のあしらいには苦労しているようです。


ちなみに、当時の「太夫」「花魁」は美しい容姿は当然として、華道・茶道・書道といった芸事はもちろん、歌道、俳諧、貝合せなどの公家の遊びや、囲碁に至るまで、幅広い教養に精通することが求められていたので、本巻のような郭の若い衆である「妓夫太郎」に代筆させることはなかったのじゃ、とも思われます。

まあ、そんな代筆で対応したいほど「嫌な客」だったということでしょうか。

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