少年プロ棋士を癒やす「ひなた」に「いじめ」が襲いかかる=羽海野チカ「3月のライオン」5〜7(ジェッツコミックス)

2023年10月16日月曜日

3月のライオン

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 両親と妹を交通事故で失い、プロ棋士に家に引き取られ、孤独を抱えながら成長し、中学生でプロ棋士となった少年「桐山零」を主人公に、彼が下町でもんじゃ焼き屋を経営する祖父とともに暮らす「あかり」「ひなた」「モモ」の三姉妹と出会い、さらに彼を取り巻く高校の元担任教師・林田や、同期のライバル・二海堂などの棋士仲間と接しながら成長していく、ハートフル将棋マンガのシリーズ『羽海野チカ「3月のライオン」(ジェッツコミックス)』の第5弾~第7弾。

今まで、深い孤独の中にいた「零」が、川本三姉妹と彼女たちの祖父、将棋のライバル・二海堂と彼の兄貴分の島田八段、転入した高校の元担任・林田などに囲まれ、ゆっくりと心の氷を溶かし始めたのですが、ここで、いつも明るい「ひなた」を苦しめるある出来事が持ち上がります。


あらすじと注目ポイント

第5巻 「ひなた」を苦しめる「いじめ」問題勃発

第5巻の構成は

Chapter.43 桜の花の咲く頃
Chapter.44 小さなつぶやき
Chapter.46 新学期
Chapter.47 西陽
Chapter.47 ラムネ
Chapter.48 混沌
Chapter.49 隈倉
Chapter.50 六月
Chapter.51 てんとう虫の木①
Chapter.52 てんとう虫の木②
Chapter.53 てんとう虫の木③

となっていて、冒頭話は、獅子王戦のタイトル戦で四タテをくらってしまった、島田八段の故郷・山形入りです。彼は将棋の駒作りで有名な天童よりもっと山奥の村の出身で、子供の頃から将棋が強くて、いずれを名人位へと故郷の期待を背負って上京して、今回、無念の大敗北だったのですが、彼を支える故郷の人々は変わりないようです。

中盤では、進級して担任から外れた林田が、あいかわらずボッチ飯を続けている「零」のために「将棋部」を立ち上げようと奮戦します。
この話が連載された当時は、まだ将棋人気も起きていないらしく、将棋は暗いと入部希望者は皆無だったのですが、林田はこれに同じように「暗い」ある部とコラボさせようというアイデアを思いつき・・という展開です。ここで知り合う零より一級上の「野口先輩」は、後巻でしっかりとたサブキャラに成長していきます。

さらに、ここらで、無敵を誇る宗谷名人を唯一人脅かす存在である「隈倉九段」のエピソードが語られます。冷静沈着に見えて、実は激しい闘志を隠している棋士の姿が見られます、そして姉・香子を振り回す存在である「後藤七段」の意外なエピソードも。

そして、後半部分では、いつも明るい「ひなた」がある日、とてつもなく暗い顔をして帰宅してきます。彼女はいじめを受けていた同級生をかばっていたのですが、彼女が心の病気になって転校した後、いじめの対象となり・・という展開です。
以後、このタームでは、これがテーマとなってきます。


第6巻 二海堂の途中脱落の仇討ちを「零」は決意する

第6巻の構成は

Chapter.54 想い
Chapter.55 告白
Chapter.56 小さな世界
Chapter.57 手紙
Chapter.58 梅雨のはじまり
Chapter.59 蜂谷
Chapter.60 真昼の月
Chapter.61 冒険者たち
Chapter.62 王国①
Chapter.63 王国②

となっていて、いじめにあって苦しむ「ひなた」の力になりたいと、元担任の林田に相談する「零」だったのですが、学校も違う彼にできることは少なく、どうやら彼女がカウンセリングや法的手段に訴えたときの経済的援助をまず準備しようと、順位戦やタイトル戦での勝率アップに励みます。

勝つことによって対局料を上げていこうという作戦のようで、ひなたの支援という面ではすごく回りくどい感じするのですが、いままで闘志が表にでてこなかった彼が「新人王」のタイトルを目指すことを公言するなど、将棋にはいい効果が出ているようです。
ところが、そんな矢先、将棋界でたった一人の友人ともいえる二海堂が大阪での対局で倒れたという知らせが入ります。ここで、零は今まで知らなかった難病と戦うために将棋にうちこむ二海堂の一面を知ることとなります。

そして、終盤では二海堂を苦しまた山崎順慶と新人王をかけて戦うことになるのですが、山崎はいままで「永世新人王」をかけている強者で・・という展開です。体調が悪くなっている二海堂に対し持久戦をしかけた山崎に敵意を燃やす「零」なのですが、山崎には山崎なりの事情があるようで、単純に正邪で仕分けできないようですね。


第7巻 「ひなた」を苦しめた「いじめ」に光が見えた 

第7巻の構成は

Chapter.64 銀の羽根
Chapter.65 川景色
Chapter.66 陽のあたっる場所
Chapter.67 小さな世界
Chapter.68 黒い霧
Chapter.69 光
Chapter.70 小さな手のひら
Chapter.71 日向
Chapter.72 流れていくもの
Chapter.73 白い嵐

となっていて、冒頭では「新人王」となった「零」は、同じ時期に修学旅行で京都にきていた「ひなた」を励ますため、鴨川のほとりで彼女をつかまえることができます。そこはかつて、一人ぼっちであった「零」自らが修学旅行の自由時間を一人で過ごしたところでもあったわけですね。

そして、修学旅行から戻ってから、「ひなた」のクラスでは大きく風向きが変わり始めます。「ひなた」だけでなく、担任教師へのいやがらせが始まり、それがエスカレートしたため、担任は体調を崩し、教室内で倒れてそのまま休職してしまいます。
こうなると、「クラスの問題」と放置しておいた学校側もそのままにしておけず、学年主任の「国分」を中心に介入を始めます。
ここで注目は、いじめの首謀者であった「高城」と「ひなた」の三者面談です。偶然にモンスターペアレントっぽい「高城」の母親に遭遇し、姉の「あかり」が痛めつけられるとともに、娘のいじめに証拠がないと言い張るのですが、「国分」主任の切り返しが「見事」です。
そして、高城とともにイジメをやっていた五人の生徒も学校側の個別聴き取りの対象となり、「イジメ」グループは崩壊します。それぞれ別の教室に連れて行かれる五人の生徒が不安そうに顔を見合わせたり、肩を落としている姿がこれからの彼女たちへの学校やクラスメンバーの対応を想像させます。

ただ、首謀者の「高城」は自分のやったことを反省する気配がなく、この問題の根の深さを感じさせるのですが、最初の被害者で転校していった「ちほちゃん」に復調の兆しがあるのが救いです。


レビュアーの一言

将棋の対戦関係のシーンが少ないので、賛否両論あるこのタームなのですが、このシリーズのテーマの一つが深い孤独に中にいた少年棋士が、周囲の人とのふれあいでゆっくりと閉ざしていた心を開いていく、ということで、いわゆる将棋の勝負ものや成り上がりものではないので、ここはシリーズ展開の上で重要だったと思えます。


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