新米噺家「あかね」は自分なりの「花魁」をつかみ、「お茶汲み」で認められる=「あかね噺」5・6(ジャンプコミックス)

2023年11月8日水曜日

あかね噺

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 落語の一門・阿良川流の真打ち昇進を決める審査会で、審査委員長を勤める大御所から「破門」を言い渡され、それをきっかけに落語を辞めた父親の仇をうつため、その娘「桜咲朱音(おうさきあかね)」が、大看板の落語家となることを決心し、女性としては珍しい落語家の階段を登っていく噺家版サクセスストーリーとなる『末永裕樹・馬上鷹将「あかね噺」(ジャンプコミックス)』シリーズの第5弾と第6弾。


あらすじと注目ポイント


第5巻 嫌味な二ツ目への仕返しが「あかね」をピンチに陥れる

第5巻の収録は

第三十五席 開口一番
第三十六席 扇子一本分
第三十七席 落語クエスト
第三十八席 礼儀と作法
第三十九席 大看板
第四十席  傑物の背
第四十一席 師資不詳のしゃ楽
第四十二席 値踏み
第四十三席 麒麟児

の9話。

冒頭は、前巻の後半で、新人潰しが趣味で、可楽杯でチャンピオンとなった「あかね」を潰すため、出がらしのお茶を出したといちゃもんをつけ、さらには立て前座の「今昔亭朝がお」に土下座させた二ツ目「今昔亭りゑん」への仕返しです。

朝がいの好意で、寄席の開口一番にされた「あかね」は幇間と若旦那の言葉遊びが楽しい「山号寺号」という噺をかけて、りゑんへの仕返しを仕掛けます。この企ては見事に成功し、「あかね」に笑いをとられた「りゑん」は高座がはねた後、あかねに文句をつけてくるのですが、ここで助け船を出してくれたのが、柏家一門の「麒麟児」といわれる柏家祿郎です。彼は「りゑん」をやりこめて、「あかね」の味方をするのですが、一方で「あかね」のやり口が周囲の反感をかってしまうと忠告します。

その影響は、持ちネタを増やそうと、他の師匠連に稽古をお願いした時に早速現れます。持ちネタが5つほどしかない「あかね」は、持ちネタを増やすための、志ぐま師匠以外の噺家から噺を教わる許可をもらい、早速、「椿家八正」に「平林」という前座噺の稽古をお願いするのですが、にべもなく断わられます。それが他の師匠連にも伝染し、あかねは前座として高座にあがることもなくなり・・・という展開です。

中盤では、この危機を脱するため、「あかね」はりゑんと揉めたときに助け舟を出してくれた「柏家祿郎」の独演会の前座に使ってもらえないかと頼み込みます。その頼みはきいてもらえたのですが、その条件として出されたのが、「あかね」のネタおろしの「新ネタ」をかけること。新しい噺を覚えることが条件となったわけですが、稽古をつけてくれる師匠が見つからない「あかね」の前に現れたのが、今一番の売れっ子の女性落語家「蘭彩歌うらら」で・・という展開です。

「蘭彩歌うらら」は、現在の「あかね」の状況を聞き、やり方はまずかったものの「あかね」の鼻っ柱の強さを気に入って、前座話ではない大ネタの「お茶汲み」なら教えてあげる、と持ち掛けてきます。ここから、「女性に落語はできない」と言われた時代に、自らの力だけで扉をこじ開けてきた、「地獄太夫」とも称される女傑「蘭彩歌うらら」のテストが始まることとなります。

その一番目がテスト、彼女の独演会で開口一番を務める柏家祿郎の「高座」を見て、彼が「麒麟児」と呼ばれる理由をつかめ、というもので、という筋立てです。その「理由」がなんなのか、は原書のほうでお確かめを。


第6巻 「あかね」は自分なりの「花魁」をつかみ、「お茶汲み」で認められる

第6巻の収録は

第四十四席 初めての出稽古
第四十五席 二つの手順
第四十六席 デート
第四十七席 お茶汲み
第四十八席 お茶汲み②
第四十九席 お茶汲み③
第五十席  師匠の望み
第五十一席 金魚割り
第五十二席 体現者
第五十三席 おもしろいい報せ

の10話。

前半部分からは、「蘭彩歌うらら」から「お茶汲み」の噺の稽古をつけてもらうこととなった「あかね」は早速、出稽古にでかけます。「うらら」の「お茶汲み」を一回聞いて覚えた「あかね」は、彼女の前で演じるのですが、未成年の小娘で、全く色気のない「あかね」に吉原の手練手管に長けた花魁がうまく演れるわけがありません。うららから「噺に人が合ってない」と駄目だしされた「あかね」は、稽古をつけてもらえる、あと二回の機会に、噺をマスターすることができるのか・・といった展開です。

なんとか、「花魁」のイメージをつかむため、「花魁」のコスプレをしてみたり、同級生の尾崎相手に色っぽい女性を演じてみる「あかね」なのですが、まあ、無駄な努力っぽいですね。ここは、「うらら」師匠の「だけど、難しいかもね。あの子が、「お茶汲み」を演れると」思っている限り」という言葉の意味が気になるところです。

そして、尾崎とのデートで、彼の「(上手く演じられなくても)笑ってもらえるならよくね」という発言から。彼女がつかんだ「(あかねの)花魁」とはどんなものか、詳しくは原書のほうで。「うらら」師匠のような妖艶で、男を誑かす花魁が演じられるわけがない、「あかね」なりの花魁が、祿郎の独演会に来た客を沸かせるとともに、助演できていた「椿家八正」の心を溶かしていきます。

祿郎の独演会をきっかけに、師匠連から才能を認められた「あかね」だったのですが、ここで新たなライバルの出現と、「あかね」の前に大きく立ちはだかろうとする天才児「阿良川魁生」の姿が見えてきます。

後半部分では、その「魁生」が落語家となったエピソードがでてくるのでおさえておきましょうね。


レビュアーの一言

このタームで出てくる「噺」は「あかね」がりゑんへの仕返しに使う「山号寺号」、「あかね」が椿家八正に教えを請うて断られた「平林」、蘭彩歌うららと茜が語る「お茶汲み」、柏家祿郎の「大工調べ」で、前座噺からトリで演じられるような大ネタまで多種にわたるのですが、最も注目しておきたいのは、阿良川魁生の語る「真景累ケ淵」という怪談噺がでてくるあたりですね。

「真景累ケ淵」は明治時代に名人といわれた三遊亭圓朝によって創作された噺なのですが、大作であるため全部が語られることは少なく「魁生」が演じた「豊志賀の死」の段など細切れで高座にかけられることが多いようですね。今回の「魁生」の高座は、「あかね」という若い才能の台頭を警戒する「魁生」の心を象徴したものなんでしょうか。



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