新九郎は龍王丸を連れて帰駿するが、家督相続は前途多難=ゆうきまさみ「新九郎奔る!」15

2024年1月26日金曜日

新九郎奔る!

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 戦国時代の「下剋上」の典型として、堀越公方足利政知の息子・茶々丸を攻め滅ぼして「伊豆」を我が物にしたのを皮切りに、関東管領の上杉氏の家臣から小田原城を奪い取り、その後、相模国を領土とし、戦国大名の魁といわれる「北条早雲」の若き頃の姿を描く『ゆうきまさみ「新九郎奔る!」(小学館)』シリーズの第15弾。


前巻で将軍の申次衆となれたものの、将軍・義尚の気まぐれや酒色や側近・広沢尚正の横暴な振る舞いに振り回されていた新九郎だったのですが、ここで妻・ぬいを迎えたことが運が開ける転機となったのか、甥・龍王丸の駿河への復権の大きな壁となっていた太田道灌が扇谷上杉家の内紛で暗殺され、ここから新九郎も戦国大名の階段に一歩踏み出すこととなります。


あらすじと注目ポイント


第15巻の構成は


第九十四話 龍王丸帰駿 その1

第九十五話 龍王丸帰駿 その2

第九十六話 龍王丸帰駿 その3

第九十七話 龍王丸帰駿 その4

第九十八話 野心 その1

第九十九話 野心 その2

第百話   野心 その3


となっていて、冒頭では前巻の最後で謀反を疑われて主君である扇谷上杉家の当主・上杉定正に暗殺された太田道灌の訃報が関東中を駆け巡っています。この事件に対する全般的な評価としては、太田道灌を失ったことで山内上杉家の実力が削がれ、堀越公方+山内上杉vs古河公方+扇谷上杉の勢力争いは山内上杉側に有利に働いたというところですね。ただ、この両派の領地争いが後の北条早雲(伊勢新九郎)につけいる隙を与えてしまったのは間違いないようです。少し付け加えておくと、新九郎の相模支配に最後まで抵抗した鎌倉以来の名門・三浦一族の最後の当主「三浦道寸」の父親・道含が登場しています。


そして、太田道灌の死に一番ショックを受けているのは、現在、駿河国の当主代行をしている小鹿(今川)範満ですね。先代の今川義忠の戦死後、家督をめぐって範満派と龍王丸派が激しく争った際に、後ろ盾となり、範満が期限付きとはいえ守護代行の地位を獲得させてくれたのが扇谷上杉定正に派遣された太田道灌で、それ以後も範満を協力にバックアップする存在であったのですから無理もないですね。


先走った話になりますが、龍王丸が今川家の家督を継げたのもこのおかげといえるでしょう。


で、情勢のほうはここから大きく動き始めます。小鹿範満が当主代行を務める15年がそろそろ満了となるため、龍王丸を駿河へ帰らせ、今川家の当主の座を継がせるため、駿河入りを計画しながらに将軍・義尚の許可がでないため焦っている新九郎のもとへ、管領・細川政元がある提案をもちかけてきます。それは、近く堀川公方の息子「寿王」が京都の香厳院の院主となるため上洛してくるのですが、彼の近況を父親の堀越公方に伝える連絡係を務めてもらえば、将軍・義尚を説得する、というものです。さらに、連絡係となってくれれば、堀越公方は駿河での争いに干渉しないというおまけつきです。


もちろん、この提案の影には、策謀家であった細川政元や都での復権に未練のある堀越公方の思惑が潜んでいるのですが、詳細は原書のほうで。


ただ、駿河入りして龍王丸への家督移譲がすんなりといくわけではありません。障害となるのは、小鹿範満がいままで駿河国を混乱もなく治めてきた功績が無なることを残念がる範満の弟の子・孫五郎や龍王丸派が復権することで所領や代官の地位を奪われてしまう範満派の国人侍たちが主なのですが、幼少時に襲われた経験がトラウマとなっている上に、「うつけもの」としか見えない風貌の龍王丸も実は大きなお荷物で・・という展開です。


巻の後半部では、嫌がるのをなんとかなだめすかして駿河入りしたものの、範満派の力が強く、代官の交代は遅々として進まない上に、龍王丸の頼りなさを見た範満本人が家督を移譲するのに難色を示し始めます。


範満の父が龍王丸の父で六代目今川家当主の今川範忠より優秀といわれながら家督を継げなかった理由を知り、さらに範満には家を継がせる男子はいないものの、甥の孫五郎が龍王丸より武術も学問もはるかにできが良いため、今まで守ってきた駿河の国を彼に継がせたくなった、というところですね。


後半部分では今川家の家督をめぐって、新九郎の暗殺計画も露見し、いよいよ小鹿範満と伊勢新九郎との武力対決の下地がつくられていきます。


レビュアーの一言


今シリーズではボーッとしていて「うつけ」と評判の龍王丸なのですが、後に駿河国の守護となり「今川氏親」として両国統治に乗り出してからは、父が戦死したころから因縁の仲であった斯波氏を圧倒して、父の宿願であった「遠江守護職」を手に入れたほか、本家筋である吉良家から遠江の所領を奪い取り、さらには甲斐西部の大井氏を服属させて所領を大幅に拡大させています。


さらに国内的には「今川仮名目録」という」という東日本では最古とされる分国法を定めています。


一方、小鹿範満の甥の孫五郎のほうは、範満が新九郎によって責め滅ぼされたときに一緒に殺されているので、その才能のほどは定かではないのですが、後の事績をみると、ボーッとしているようで龍王丸(今川氏親)のほうもけしてボンクラではなかったといえそうです。

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